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安倍元首相銃撃事件

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共同通信の記者がこれまでに書いた安倍元首相銃撃事件に関するnoteをまとめています。
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2022年10月の記事一覧

『よく分からない』 宗教への遠慮で踏み込めなかった私たち

安倍晋三元首相が銃撃された事件から、1週間もたたない頃でしょうか。 ツイッターで「フランスではカルトの定義として10の基準を定め、カルトを取り締まっている」という趣旨のツイートを目にしました。 ちょうど事件の重要な背景事情として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の存在がクローズアップされ、宗教の問題をめぐる議論の渦が大きくなり始めていた時期です。 私はこのツイートを見て、ふと2018年にオウム真理教の幹部らの死刑が執行された時に感じた疑問を思い出しました。 オウム真

歴史にみる国葬の危うさ、国民の分断を招きながら突き進む政府への違和感

みなさんは9月27日の午後2時過ぎ、何をしていましたか? 私は大阪で安倍晋三元首相の国葬のテレビ中継を見ていました。 直前の報道各社の世論調査では賛否が分かれ、当日も会場となった日本武道館の外では数千人が献花に並ぶ一方、国葬に反対する人たちはデモをしていました。 そんな中でも葬儀自体は厳かに進み、菅義偉元首相が友人代表として感動的な弔辞を読み上げ、メディアはこぞってその内容を取り上げました。 岸田文雄首相が後に語ったように「やって良かった」と思う人も大勢いると思います

あの日から、私たちが書いてきたこと

7月8日に奈良市で起きた、安倍晋三元首相銃撃事件。発生からまもなく3ヶ月となります。 山上徹也容疑者は手製の銃で2回発砲し、最も権力のある政治家の一人がこの世を去りました。事件の動機として「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」への恨みがあったことが分かり、宗教が原因で家族が離散したという容疑者の生い立ちにも注目が集まりました。 一人の命が奪われたという事実の重み、「政治と宗教」の問題、新興宗教を信仰する親を持つ「宗教2世」の苦しみ、世論を二分したまま営まれた「国葬」―。