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「片親疎外」に関するレポート(2)

 面会交流の手続きのなかで、子どもの意見の聴取は、通常、家庭裁判所の調査官による調査という方法で行われる。調査官調査において、「子の拒絶」についての取り扱いは、子の年齢によって違いがあり、年齢の高い子どもについては、「子の拒絶」が尊重される運用がされてきたが、精神的に成熟していないとみなされる「子の拒絶」は、軽視されてきた
 子どもが、別居親との面会交流に拒否的な意見を言えば「どうして?」、「楽しいときもあったんじゃないかな?」、「お父さん(お母さん)、会いたがっていたよ」、「短い時間ならどうかな」、「どういうふうだった会えるかな?」などと、面会交流に応じざるを得なくなるような誘導的な質問がなされる。
 「100年後なら会ってもいい」と答えた子どもの調査報告書に、「拒否感はあるものの、許容する余地もある」と書かれた事案もあった。
 家庭裁判所には、「別居親との面会交流は子どものためになるという価値観」があり、真面目で優秀な調査官ほど実直に従っている。こうした誘導的な意見聴取は、面会交流を拒否した子どもについてのみに行われており、面会交流に肯定的な意見を述べた子どもが、会いたい理由を尋ねられるということはない。
 面会交流について、子どもが拒否の姿勢を貫くと、同居親の影響がある場合には、その子どもの意思は尊重すべきでないという評価を受ける。それは、同居親が積極的に別居親の悪口を吹き込んだというような場合のみでなく、同居親の怯えや嫌悪について、子どもが同情したり共感したりした場合にも同様に扱われる。
 調停委員や調査官が、子どもが面会を拒否する原因を、同居親の説得が足りないことに求めて、同居親に対して面会交流に応じるように強く促すということも多々ある。子どもが別居親に対して拒否的な意思を示すことについて、別居親から、「片親引き離し症候群(PAS)」ないし、「片親引き離し(PA)」という主張がされるが、家庭裁判所では、後者を認めるに等しい運用がされてきた。
 法的手続において、面会交流に対して拒否的な意見を言ったのに、それに反して面会交流を強いられた子ども達は、当然のことながら、大人に対する不信感を持つ。自分の意見はとおらないというあきらめを学習し、面会交流を拒むために上手く立ち回れなかった自分を嫌悪することもある。
 そして、同居親は、子どもを守ってあげられなかったと感じ、自分の無力さを再認識するとともに、自己嫌悪する。子どもが嫌がっているという事実が無視された結果、同居親は、子どもに懇願し、時にはごほうびを与え、また時には叱りつける方法で、面会交流を実施しているという実態がある。
(kana)
                                
 

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