ボツ企画『23プライマル(仮)』
テレビシリーズの企画を考えてくれと言われて書いたもの。確か2013年ごろだけど、元になったのは更に遡って2000年頃に携わったオリジナルアニメの企画の構造で、それからインスパイアされている。上手くいくかなと思ったけれど、夢ばかり語られて実作業はどうするのかと問い合わせたら連絡が来なくなった。
『23プライマル(仮)』
企画原案
文・京田知己
(名称および設定は全て仮のものです)
■物語概要
時の止まった世界で、愛する者を失い、心を彷徨わせている男がいた。
享楽に溺れる都市で、男は喪った愛する者に似た少女と偶然に出会う。
逃げていたはずの運命と向き合うはめになった、深い傷を負う男。
運命づけられているにも関わらず、不幸に立ち向かう可憐な少女。
彼女を生かすため、そして再び喪わないために、男は戦うことを決意する。
2人の逃亡劇は、果たしてどこにたどり着くのであろうか?
■舞台設定
<SFテイストファンタジー+バンパイア>
そこは常に極夜のように星が瞬く巨大な天涯に覆われている球状世界である。その天空を薄橙の光の帯が走っていた。まるでまもなく朝を迎えるような光景であったが、いつまで経っても朝日は登ることは無かった。時が止まっていたからだ。いや、正確には「夜が繰り返されて」いるのだ。天涯の外には何があるのか。それは誰にもわからなかった。
天涯の下に、クロックタワーと人々が呼称する巨大な塔(軸)を中心にして3次元的に、しかし機械的に構成されている都市群があった。「シティ(区)」と呼ばれるそれぞれに、明けない夜を謳歌する者たちがいた、それぞれに独立した時間が流れていた、それぞれに独立した文化が育まれていた、それぞれが干渉しあうことがないことで、この世界を維持していた。クロックタワーで貫かれ、分裂した都市群が固有の時間を保持していることで、この世界は成立していた。世界を謳歌している者たちは、この世界をこう呼んだ。シン・トキオと。
この世界を謳歌している者たち、この世界を支配している者たちは、この世界が存続する限り老いることなく、死ぬことも無かった。彼らはそれぞれの住むシティにいる限り、不老不死だった。それぞれの住むシティにいる限り、血を吸わずに生きて行けるバンパイアだった。彼らにとって、シティにいる限り、血を吸うという行為は野蛮な(そして卑猥な)行為でもあった。
力(それは権力だけでなく物理的にも)を持つ彼らは、その支配体制の下支えとして人間を奴隷として使っていた。人間はこの世界において厄介ものであった。世界の時が止まってい流というのに、彼らは成長し、そして死んで行った。既得権益を守るために体制側は人間をバンパイアにさせることは無かった。人間は団結したが、しかしこの世界の実権(と秘密)をバンパイアが握っている以上、非合法のものにしかならなかった。もっとも、人間もこの世界でしか生きていけないことは理解していたので、この社会構造を本気で破壊する勇気は無かった。なぜ外で行きていけないか? それは伝承で外には何もないことを聞かされていたからだろう。
本来シティはクロックタワーと同一のものであったのだが、分裂してしまったことでタワーそのものの動きを止めてしまっていた。1つしか無かったはずのクロックタワーのコアが、シティそれぞれに分裂して存在してしまっているからだ。分裂したコアは、各シティの依り代(主に少女)の体内に埋め込まれていた。シティの存続は依り代の命と同義であった。
しかしこの世界は安泰ではなかった。以前、劫火と呼ばれる事件があり、1つのシティが消失(この場合は別のシティと合体すること)し、無数の存在が死んだのだ。その数年後、物語は始まる。活動再開の兆候を見せ始めたクロックタワーの胎動に合わせるように。
■舞台設定におけるビジュアルの見せ場
・明ける直前の極夜の空を模した巨大球体空間の中に存在する、スペースコロニーサイズの巨大なシティが、重力を無視したかのように階層を形成している。シティ間はハイウェイで繋がっており、その全景は、まるで機械式時計の分解構造図を見ているようでもあり、その輝きは銀河を彷彿とさせる。
・シティを維持するコアを喪ってしまうと、まるでエンジンのギアが噛み合されたかのように隣のシティと合体してしまう。その物理的なエネルギーと舞台設定上で発生するエネルギーによってシティ内で大災害が起こり、コアを喪ったシティは壊滅してしまう。
※ただしシティ内の風景は現実の東京(もしくは別の都市)を元にしたものである。
■(ストーリー上の)対立勢力構造
<階層構造と、それを破壊しようとする三竦み>
《バンパイア》
体制側であり、権力者。現状の世界構造を維持したいと思っている。
バンパイア故に基本的に不老不死。ただしシティ間を行き来することは出来ない。
天涯の外で生きられないことを理解しているので、この世界を維持するために強権を発動する。
力の発揮の仕方としては、公権力・公安のようなもの。あるいは軍。
《人間》
被差別・被抑圧側であり、世界の改変を望みながら、現状の世界構造を維持しなければならないことを理解している。バンパイアと人間の間には共犯のような関係性がある。
天涯の外に何があるのかわからないので、この世界で生き延びるための武器を保持しようとする。
力の発揮の仕方としては、ヤクザ・暴力団のような形を取る。
分裂したシティ間を行き来出来る、唯一の存在。
主人公の階層は(一応)ココにある。
《天使》
バンパイアと人間の間に生まれた存在で、現状の世界構造を破壊することを望んでいる。アナーキスト。絶対数は少ないが、無慈悲で凶悪。人間と同じく死ぬが、死を畏れない。
天涯を突破し、外の世界へ行きたいと思っている。
力の発揮の仕方としては、半グレ・ギャング・猟奇殺人者・テロリズムのような形を取る。
※もしかしたら《天使》はいらないかもしれない。
<その3すくみが奪い合う力として>
《リューズ》
この世界の構造の中心であるクロックタワーに関する、何らかの能力を持った存在。シティそれぞれに存在しており、いわばシティを統括する巫女のようなものであり、その体内にクロックタワーの存在と基を同じくするエネルギーが秘められているとされる。
基本的に人間の女性を模した形で出現しており、人格も備わっている。
このリューズが流す赤い涙を飲んだ者は、契りを交わしたものとされ、リューズをコントロールする存在(つまり強大な力を得る)になるとされる。その者を通称「プライマル」と呼ぶ。
《プライマル》
リューズと関係を持った存在はプライマルと呼ばれ、リューズの側にいると強大な力を発揮する。
本作においては不死であるはずのバンパイアを殺すことの出来るブラスター(仮)と呼ばれる銃器を撃つことが出来るようになる。
プライマルになった者は、体のどこかに必ずリューズと対になる刻印・文様が刻まれている。
■アニメーションとしての見せ場
1・シティ間を行き来する際に生じるカーアクション
2・バンパイア物を基としたミステリー&ガンアクション
3・SFテイストのファンタジー世界観
■メインキャラクターのストーリー(恋愛線を含む)
《主人公》
合法非合法に関わらず、どんなものでも必ず送り届ける運び屋を営む29歳。
人間でありながら、まるでバンパイアのように死を畏れない不思議な男。
元々はシティ間で引き起こされる凶悪犯罪を取り締まる広域警察組織に所属するエージェントであったが、とある大掛かりな作戦で失敗し、追われるように組織から離脱した。
身体能力も高く、銃と車の運転の腕前はピカイチであるが、道具に固執するタイプではない。
組織からは形式上、追われる身であるのだが、他のシティに逃げ込むことが出来るのに、何故か彼は今のシティで潜む生活を選んでいる。(理由は後述)
実はプライマルである。
《ヒロイン》
主人公が引き受けた仕事で、結果的に匿うこととなったリューズ。人間の年齢で言えば12歳くらいの容姿。他のリューズと同じく、まるで人形のような冷たい印象の美少女。主人公と生活を共にする間に、次第に人間らしくなっていくのだが……。
自分がシティを破壊するために(すなわち殺されるために)誘拐されたことを知っており、人間性を獲得していくに従って、生への強い渇望を持つようになる。
ちなみに恐ろしいほど身体能力は低い。やがて主人公に恋心を抱く。
《トリックスター》
以前から主人公の前に現れて、仕事を邪魔する謎の美女。神出鬼没で様々な役職に変装したりするが、その存在は全て謎である。その容姿はどこかヒロインが大人になった姿を彷彿とさせる。
実は幽霊であり、主人公が以前失敗した作戦に参加していた別シティのリューズである。彼女は主人公と恋仲に陥ってしまったが故に、彼女は死亡し、作戦は失敗。大災害をもたらしてしまったのだった。彼女の元になっている体はまだ保存されており、今も主人公が住むシティに安置されている。
主人公は、彼女を忘れられずにいてシティに居残っていたのだったが、ヒロインと出会うことで何かが変わって行く。そのきっかけの1つとして、ヒロインが彼女とそっくりであったから…というのもある。
※基本的にはこの3者の三角関係が恋愛線の軸となる。
※ストーリーは、主人公とヒロインの疑似恋愛的な関係を軸に、主人公の過去の清算(それはトリックスターの彼女との関係の清算も含まれる)と、新たなる旅立ち…主人公とヒロインが「世界の外」に旅立つというものとする。
※ちなみに今回は主人公とヒロインの旅立ちまでを描き、世界の謎の解決等々は描かないこととする。描く場合は続編などで。
■メインキャラクター周囲を含めたストーリー
<仲違いしバラバラになったチームが再結成し、以前の失敗に再チャレンジする>
主人公(とトリックスターの女)の失敗によって解散させられたチームが、主人公の新たな活動に、最初は反発しながらも、ヒロインの一途な思いに感化され、再びチームを結成。以前失敗した作戦と似たことを行うが、予想とは異なる主人公たちの目的……世界の外に出て行くという決意を知り、それを送り出してやる。
※基本的にはプロフェッショナル(職人)集団の熱い話しであり、それを阻害しようとする黒い状況・エピソードはメインキャラクターたち以外のところに求めるとする。
※主人公とヒロインは、早い段階から世界を敵に回すことになるので、結果としてこの仲間たちも世界と対峙することとなる。
※ちなみにこのメンバーは全員人間でなくても問題はない。
■補足
1・テイストとしての参考資料作品
北野武「ソナチネ」
ベルナルド・ベルトルッチ「ラストタンゴ・イン・パリ」
リュック・ベッソン「レオン」
「ワイルドスピード(シリーズ)」
2・使用車種について
具体的なイメージはないものの、何となくではあるが現存する日本車をイメージ。
一瞬「SUBARUインプレッサWRX STI」という名称を入れかけたが、今回の文章上では回避しました。
3・舞台について
一応東京のイメージではありますが、もしかするとパリという選択肢もあるかもしれないと思いました。
以上
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