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決勝No1. VOLVO240


ワタシの人生に今でもそれはのしかかり
まるで囚人のように
時に足枷となり
時に後悔の念にかられ
砂つぶが口に入ったままのようなザラついた気持ちにさせていたのです

そう。
5年前左ハンドルの車で迎えに行くまでは

確か
どこにでもあるような人数合わせに
呼ばれたどこにでもある3対3の合コンな筈だった

今世で会わなくてはいけない人と
出会っていけないタイミングで
出会ってしまったなーと目眩のするような
感覚を酒で飲み込んだ事を覚えている

名前はまる子と呼ばれていた
まる子みたいなギザギザ前髪パッツンで
おかっぱのショートカットにギャルソン
の洋服を着ていて。

なぜかキョロキョロオドオドしていて
何も話さずニコニコしてそこにいた

どこか欠落してしまって
そして。
欠品してしまった感じの魅力があり強烈に
引き込まれてしまった

結婚式を半年後に控えていたワタシからすれば随分なタイミングじゃないかと
神様に言うしかなかった

自己紹介から始まり
どこにでもあるような普通の会話で
合コンは進み…

酒も進んだ頃悪友が、ごめん こいつ良い奴なんだけど半年後結婚するんだよねと
暴露した
人数合わせで今日来てもらったんだ。
女性陣は怪訝な顔をしたが
まる子だけはニコニコしていた
まる子がトイレに立つと女性の一人が
大丈夫?気をつけてねと言った

ん?
なんでそんなに酔っ払ってもないでしょうと聞くといろいろあんのってはぐらかされた

その後連絡先交換になって全員交換しようとなって
それぞれ交換していた所
君は結婚するんだからダメっと
女性陣のリーダーから諭され
そうだよなって思い
みんな宜しくやりなよなんて
おどけて店を後にした

人が人に対峙した時に感じる
違和感とあーこの人だったのかなへの
ストレートな感情は私を数日悩ませるのには十分な出会いだったが
あー男にもマリッジブルーって
あるんだなって事にして
無理矢理気持ちを沈める事にしていた。

それから数日後
突然に悪友から電話が鳴り
リーダーの女性と今日飲むんだけど
まる子も来るみたい今日どう?
と連絡があった
奥さんになる人とご飯の約束をしていたが
行くと返事をしてしまった 

お店に遅れて行くと
3人は到着しており皆少し酔っ払っていた
席替えをしようとリーダーの女性が言い始め
ワタシがまる子の左側に座ると
ダメっ、まる子は君の右側と指示をすると
まる子は言われた通りに右に座り直した

まる子はワタシにドライブに行きたいと
すごく小さな声で言った。

ワタシは奥さんになる人に罪悪感を
感じながらもドライブデートに二人で行く
約束をした。

そうワタシは弱く愚かな人間なのである

その週末の日に三軒茶屋に住んでいた
まる子のアパートまで車で迎えに行った

曲が大きいから少し大きな声で話してねと
まる子は言った
不思議に思っていたら
なぜか会話にならず
会話にならないのにニコニコしている
まる子にいらついて一方的にワタシが
機嫌を悪くしてしまった
車内は静まり返り無言のまま送り届け
まる子はずっと下を向いていた

ドライブから少し時間が経った頃
悪友から電話があり
女性リーダーがお前の連絡先知りたがってる
けど教えていい?ときた。
まる子の事だとわかっていたワタシは
OKして連絡を待っているとすぐに
かかってきて諭すような口調でこう言った

ねぇ二人の関係に口出すつもりは一切ないけどどうしても話しておきたい事があるの
ドライブで喧嘩したでしょ

うん。なに?続けて。

まる子右耳が生まれつき聞こえないの
気づいてた?
これ以上は言わないから。と言って
電話が切れた。

そうか
聞こえないのか右ハンドルじゃ

泣けた。

自分の身勝手さに泣いた 
不思議に思った感覚はこの事だったのかと
なぜ注意深く見てあげられなかったのかと
自分の愚かさに心底失望した。

私はすぐに車屋の友達に電話して
左ハンドルの車をすぐに買いたい
できれば整備せず明日から乗れるような。
なんかある?

あるよ
クリーム色のVOLVO240
お金後で良いから準備する?
うん頼むよ。

まる子に連絡をして
もう一度会いたいと伝えると
まる子はドライブはやだ
ワタシ上手にドライブデートできないから
と。わかったよとだけ伝え日時を決めて
会う約束をした

1週間して納車されたVOLVOに乗って
まる子を迎えに行ったら
アパートの階段を降りてくる
まる子は車を見るなり泣き出した

泣きじゃくりながら
どうしたのこれ?
ねぇどうしたの?
買ったの?と。

聞こえない事伝えればよかったね
言ったら嫌われるんじゃないかって
伝えられなかったの
ワタシ片耳聞こえないから
あんまり聞こえない時ニコニコする
しかできないの。

ワタシこうやって生きてきたの
ごめんね伝えられずに。

泣き止んだまる子は
続けて言った。
でもワタシ何も悲観してないわ
ワタシの笑顔かわいいでしょ
片耳が聞こえない代わりに
とっておきのギフトを
神様と両親がくれたの。
今日やっと好きな人とたくさんおしゃべり
しながらドライブできる。
海に行きたい
夢だったのありがとう

カーステレオから流れた曲は大好きな
この曲だった。

https://youtu.be/Rb64tNQiFDU

そのドライブを終えた数日後
ワタシの結婚という形で
私たちの関係は終わりを迎えた

その後
ワタシは海外でそれはそれは豪華な挙式を
あげ、たくさんの人に祝福され結婚した
フェイスブックにたくさんタグづけされた
写真に祝福の言葉にまぎれて
まる子だけが 
おめでとうでは無く
ありがとうと書いてあった

まる子の事は思い出さないように
記憶の隅に追いやり
目の前にいる人を幸せにする事に全てを
注いだが仕事ばかりしていたワタシに
嫁が愛想をつかした期間は2年と短く
子供もいなかった私達は離婚を選択して
当時のマンション、貯金全てを元嫁に
渡した。
周りは渡し過ぎと言ってきたが
幸せにすると言って幸せにしてやれなかった後悔と懺悔の念から全て渡した

わたしは弱く愚かな人間で
まる子の事をある意味ひきづっていたし。
仕事に打ち込む事で
元嫁との距離をとっていたのかもしれない。

離婚して何年かしても相変わらず仕事に
おわれる毎日で
仕事で何か大事な物を埋めるような日々。

そんな時
悪友から電話が鳴った
ちょいと飲まない?

久しぶりの誘いに
2つ返事で指定された場所に向かうと
よっ大社長こんな安い居酒屋で悪いねーっと
からかわれた後
もうすぐ人が到着するから話を聞いてほしいと
?うんいいよ
遅れてきた女性はなんと当時の女性リーダーだった
話を聞けば1年前偶然駅で出会って
懐かしさから意気投合し付き合って
結婚するというのである

本当に人生とは不思議でめんどくさくて
である

おめでとうと伝えその店にある一番
高いシャンパンを
注文して乾杯していると

ねぇまる子覚えている?と聞いてきた
もちろんだよ
何かタイミングが違っていたらまる子と一緒だっただろうね
すごいずるい言葉を口にした。

まる子あの後東京嫌になって実家の高崎に
帰っちゃって地元のライングループに
いるけど個人的には連絡とってないんだよね。結婚したかどうかも知らない

そっかー
まる子とクリーム色のVOLVOの事が
浮かんだ。

知りたい連絡先?
と意地悪そうな顔でリーダーが言うので
今更だよねとシャンパンを飲み干すと

リーダーは任せるけど渡すねと
ラインのIDを書いてワタシに渡した

2022年6月29日現在 
ベットでワタシの右側で必ず眠る恋人の名前は夏子

あとがき。

今思い返せば
出会っていけないタイミングなんて人生に
あるわけも無く言い訳にしかならないし
ワタシは弱く愚かな人間だったのでしょう
恋愛に順番などは存在しないのです
自分の直感を信じこの人だなと思ったら
突き進むべきなんです。
ワタシはその判断を誤り
2人の女性の時間を奪ってしまったのです
なんて愚かなのでしょう。
しかしどうしようもなかったのです。
ただワタシは間に合ったのです
運が良い事に。

これを読んでくれた方へ
ありがとう
そして今悩みの渦中にいるのならば
諦めず自分の直感を信じてください
意外とあってるよそれ!
てへへー。

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