評④『モダンボーイズ』+α

 『モダンボーイズ』、新国立劇場中劇場にて。S席13000円、A席9000円等。横内謙介作、一色隆司演出。
 日中戦争間近の浅草のレビュー小屋で座付き作家の菊谷栄を巡る人々の話。今回は矢萩奏という若者像を掘り下げ、主役とした。

 ※以下ネタバレ含む

27年前にキムタクが演じた役を加藤シゲアキが

 27年前、その横内謙介作で『洒落男たち〜モダンボーイズ〜』(1994年2月4日 - 2月13日)が東京芸術劇場で上演され、木村拓哉(当時21歳くらい?)が、若者を演じた。観てない。その際、菊谷栄を演じたのは平田満。
 今回、ジャニーズ・NEWSの加藤シゲアキが木村拓哉の演じた役にあたる役を主演(今回書き直しあり、名前も異なるので全くイコールではない)。

 って、自分は観て帰ってきてから、あの役(にほぼイコールの役)、前はキムタクがやってたんだ~、へ~と知ったわけで、そんな事前情報知らずに観たのん気な人間だ。検索するとネットニュースで出とるわ。
 ジャニーズファンではなく、観劇歴も浅いので失礼しました。その分、演劇として観てみたつもり、の私見だ。

 キムタクはwikiだと舞台は5本、その5本目、現時点で最後の舞台作品。
 加藤シゲアキはwikiだと、舞台6本目。過去の5本はすべて東京グローブ座(うち4本が主演)、つまりジャニーズ事務所傘下の“ホーム”だったが、今回が初めての“アウェー”とまでいかずとも「外」での試合。で、新国立。

95%は女性客か?

 新国立劇場中劇場はその日、見た感じで95%くらい女性で占められ、その大半がワンピースやスカート、髪にリボンなどがある“乙女”チックな人たちで、かつ2人以上の女性グループが目立ち、隣の小劇場に来るような観劇オタクの匂いがする人とは違う雰囲気。あ、加藤くんを見に来たんだね、という感じ。20代、30代がメーンかな。

 カーテンコールで加藤くんに手を振る人何人か。最後に立ち上がる人多数。そのせいで前が見えなくなりました(自分は席立たず)。
 前々から思っているが、スタンディングオベーションって、前の席の人が立ってしまうと舞台が見えなくなるし、周囲に合わせて立ってる人も多いのではないかな。。

6、7回繰り返された「劇場のドアを開けている」

 作品の話。横内謙介氏は現在59歳。アングラ演劇と距離を置き、つかこうへいに影響を受けて、楽しく明るい舞台を作ってきた。劇団名を扉座としたのは「オープン・ザ・ドア」だかららしい(その先はその先)。
 今回のコロナ禍で、演劇の未来についていろいろ思うところをSNSで発信している。そして、今だからこそ、劇場の大切さを訴えたいということで、書き直し再演をしたとのこと。そのため、劇中に「劇場のドアを開けている」「劇場のドアを閉ざさない」という台詞が6、7回だったと思うが、しつこいばかりに繰り返された。

 とにかく舞台を開ける。コロナ禍で演劇人が問われたもの。
 不要不急と言われるけれど。「ここに来れば、誰でもつかの間の自由を得られる」。でも、「誰でも」なのか?と、天邪鬼の自分はまだ何か突っ込みたいが、夢は夢、希望は希望。

「昭和の美男子」を思い出す

 今回は、加藤シゲアキ主役が最初に決まってそれに合わせ、以前の台本を書きなおしたらしいので、あてがき。その演技については、その台本に任せることとする。まだ公演は続く。

 ただ、印象は書いておこう。話し出した瞬間、東出昌大を思い出した。
 ふたりとも「昭和の美男子」枠。髪が黒く多めで、眉が太く、目がぱっちりした二重。さらに、低めでややハスキーっぽい声、も似ていた気がする。

 ちなみに、東出昌大を舞台で見たのは、2018年11月、三島由紀夫『豊穣の海』@紀伊国屋サザンシアター、全席指定9000円。ああ、先日、座・高円寺で観た『方丈の海』って、このタイトルのあれかな、と今頃気づく。舞台の中央で光を浴びて立つ姿は、さすがモデル出身と思った。

あれこれ 

 新国立中劇場でジャニーズの役者を観たのは、ほかに一回あり、2019年2月、音楽劇『マニアック』。S席12000円。なぜか(!)チケットが手に入ったが、誰が出るのかよく知らず(すみません)、行く。
 行ってわかった、関ジャニの安田章大が古田新太と組んだお芝居だ。てか、安田くんもよく知らなかったが、そんなに大きくないのに、得意の音楽を生かして、演技でも舞台をきっちり引っ張っていた。最後に銀テープが客席にひらひら降ってきてみんな集めてた、改めてジャニーズの舞台なんだなと。今年夏にも舞台あるんだ、安田くん。観たい気もするけど、チケット手に入らないだろうな~。

 新国立中劇場では、このほか、菅田将暉『カリギュラ』、藤原竜也『プラートノフ』などを観た記憶。機会あれば書く。

 草彅剛の舞台も観たことを思い出したが、こちらは映像との比較で別に書いてみたい。

 なにを有名人見てるんだと言いたいのか、かもしれんが、「テレビで見るあの人は、生の舞台で観るとどうなのか」であれこれ観ていた時期がある。
 舞台向き、映像向き、はあると思う。

 という、片隅のつぶやきです。

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