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感情オナニーで子供を噓つきの天才に


私は噓つきだ。しかし私はそのことに社会人になるまで気付かなかった。

複数の上司に「言い訳ばかりしやがって。」と同じことを言われて初めて気づいたのだ。言い訳というのはその場その場で巧みに嘘をつく能力のことである。

さて、では私はいつから噓つきになったのか。生まれながら?違う。
母親が私に噓つきの英才教育をしてくれたのだ。

今回はその教育内容についてお話していこう。子供を噓つきに育てたい方は必見である。ぜひ参考にしてほしい。

まず母の話をする前に噓をつく能力とは何か。
それはその場その場で巧みにストーリーを創作する能力である。噓をつくとは創作することだ。
漫画家、作詞家、俳優、作家。みな巧みに噓をつく噓つきである。それが社会の役に立ち、人々を楽しませる娯楽と化しているので問題にはならないが彼らの能力は噓つきの能力であることに変わりはない。

噓つきを育てるための条件は大きく分けて2つある。

1.気分次第で子供への対応を変える。
2.正論で子供を裁く。

たったこれだけだ。これだけであなたの子供は見事に噓つきに育つ。
細かく見て行こう。

1つめの気分次第で子供への対応を変える、というのは具体的に言うなら今日と昨日で同じ事柄への対応を変えるのだ。
昨日はそれをしても怒られなかった行為が今日は叱責される。
父親には褒められた行為が母親には責められる。

こういう状況に陥った場合、子供は混乱し、最初は驚くだけだ。しかしこういう状況が何度も続けばその場を打開するためにその場その場で相手を怒らせないように咄嗟にストーリーを創作する能力を育てるようになる。
その場で咄嗟に「なぜ」相手が(親が)怒っているのかを瞬時に察し、「どう」答えれば怒られないか、機嫌を取れるかを判断し、嘘をつく。
これを幼い頃から何年も何年も続ければ立派な嘘つきのネイティブになる。

子供を気分次第で怒鳴り、自分の機嫌を取らせることは親本人にとっては快感だが子供に噓つきの英才教育を施しているにほかならない。

2つめの正論で子供を裁く、これは子供にとって残酷なことだ。子供はまだ世の中の常識といったルールを知らない。知らずにダメなことをやってしまったときに怒られるのはある程度仕方がないが、子供本人からすれば全く知らないルールをいきなり言われて一方的に怒鳴られるのだ。本人にとっては不条理だ。
しかもただやってしまった行為を怒られるだけにとどまらず、人格攻撃といった裁きが始まる。ダメだった行為そのものから説教は飛躍し、「だいたいお前はいつも~」「そんなんだから~なんだ。」「次だってどうせ~」……

そしてこういう説教にしばしば出てくる「なんで○○したのか?」という問い。これが子供に噓をつかせるのである。
なぜならこの「なんで」は理由を聞いていないからだ。𠮟責に慣れた子供はこの「なんで」系の質問が来たときにこう解釈する。つまり

相手(親)がどう思っているかを察し、それに見合うストーリーを創作しなければ余計怒られる。

子供にとってこのシチュエーションで大切なのはどう答えればこれ以上怒られないかであり真実を話すことなど愚の骨頂である。もしその真実が親の機嫌を損ねたら命はないのだ。
命をかけてお話を創作する。失敗すれば生存はない。
これこそが究極の創作者を育てる方法なのである。

上の2つをわかりやすくまとめると、親が自分の機嫌をとるために子供を利用することで子供は嘘つきに育つのだ。
子供を使って感情オナニーをすることは子供をネイティブ嘘つきに育てることなのだ。

では嘘つきの英才教育を受けて育った場合、何がまずいのか。
見ようによっては嘘つきは一種の才能である。先に述べた作家や俳優はみな嘘つきであり巧みに嘘をつければつけるほど有利なので創作者としては成功するかもしれない。
かくいう私も創作の世界ではプロに独創的と評価され、そこそこ成功している。

就活の面接では失敗したことはなく、その場にいる一番立場が上の人(社長含む)に「この人は素晴らしい。ぜひ雇いたい。」と2度も言わせたことがある。「驚くほど落ち着いてますね。」「緊張しないんですか。」「あなたはどこででもやっていけそうですね。」とも。

英語のスピーキングテストでは「その場で咄嗟にストーリーを創作する能力」が幸いし、いつも満点近く楽に取れた。

また、10歳そこそこで自分がやった失敗をクラスメイトになすりつけ、両親と担任、校長を騙し切ったこともある。

学用品を失くしたのだが、それが家庭とクラス内で大騒ぎになった後自分の部屋にあったことがわかり、それを告げたら怒鳴られるのは百も承知だったため名前の部分をマジックペンで塗り潰した後教室のロッカーの上に放置した。

それをさも驚いたように見つけ、教師にこんなところにありました告げたのだ。誰一人私の自作自演には気づかなかった。それどころは後に母から「先生たちはクラスメイトの○○さん(浮いてた子)がやったんじゃないかって言ってたよ。」とさえ言われた。自分は天才かと思った。何も悪いとすら思わなかったし正直今も悪いことをしたとは思っていない。


しかし人間関係の面では大いに問題があると思う。
親の機嫌を取るために巧みなストーリーテラーとなったが、これはいわば相手の機嫌によって言うことがころころ変わるということだ。

まさに親のようにはたから見たら昨日と今日で同じ事柄への対応が違うのである。これでは社会的信頼がないし、相手は混乱して離れていく。
結果何度も何度も人間関係をリセットする羽目になる。

事実、私は高校を出た後高校時代の友人関係はリセットされたし、大学時代の友人関係は大学を出た後リセットされた。
もう当時の友人たちとは1人もつながっていない。職場も1ところに落ち着くことはなく転職を繰り返している。
そもそも他人に興味がなく、恋愛経験もゼロだ。それを別に恥だとも思わないし焦りもない。
他人の機嫌を取らなくていいので楽だ。一生このままでもいいと思う。

私は生まれ持った性格も相まってこの人生にはそこそこ満足しているが子供を孤独で独善的な噓つきにしたくないなら子供でオナニーするのはやめることだ。

私に言えるのはこれくらいしかない。


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