はるまきごはんさんの音楽
ボーカロイドは宇宙の夢を見るか?
今回は、はるまきごはんさんについて扱う。はるまきごはんさんは、「宇宙」をテーマにした楽曲を多く投稿されているボカロPさんである。
宇宙をテーマとした楽曲、というのは、ボカロにおいて結構よく見られるテーマである。有名な例がナユタン星人さんやAqu3raさんなどであろうか。どうも、ボーカロイドは「宇宙」や「夜」と親和性が高いようである。
これは、ボーカロイドが「電子的」であることに起因する事象だろう。なぜか我々は、「宇宙」「夜」を電子的なものとして捉えることがある。特に仮想的な宇宙、すなわち「SF」の宇宙をそう考えることが多いだろうか。宇宙や夜は、確かに存在しているものであるにもかかわらず、このように「イメージ」の中で仮想的にそのものごとをとらえている、というのはとても面白いことではないだろうか。
そして初音ミクのイメージカラーが「青」「水色」なのも、嬉しい偶然である。
イントロダクション
はるまきごはんさんは、『メルティランドナイトメア』『ドリームレス・ドリームス』などで知られるボカロPさんである。
共通するテーマとして「宇宙」そして「夢」が挙げられ、非常に独特な、浮遊感のある世界が展開される。近年は「ふたりの」「幻想」など、いわゆる続きもの的な楽曲を作成し、注目を集めた。
生声での活動も精力的に行われているが、CDには必ずボカロ版と生声版がどちらも収録されている。ちなみに、この声がご本人の世界観そのもので、これもまた驚くべきことである。
ちなみにご出身は北海道札幌市。初音ミクと同じである。ほぼ全ての楽曲で、初音ミクを使用されている。
音について
はるまきごはんさんの曲を一言で表すのは非常に難しい。エレクトロポップもあれば、アコースティックのしっとりした曲もあるし、ロック調の曲もある。縦横無尽である。
しかし、初音ミクの「声」の使い方は一貫している。独特の、少し霞んだような声が、はるまきごはんさんの世界観を確立する一助になっていると考えられる。
電子的なその曲のイメージとは裏腹に、使っている楽器は生楽器(っぽい響きのもの)を基調としている。もちろん電子的な音もよく使っているし、電子音基調の曲も存在するわけだが(「幻影EP-Envy Phantom」収録『メサイア』とか)、その多くは「効果音」的な使用に留まっている。
しかし、電子的なイメージの中に、楽器が主体として存在していることは、楽曲に体温に似た「温かさ」を与える要素になっていると思える。
これらの要素が、はるまきごはんさんの楽曲の特徴である、「寂しさと優しさを足して2で割ったような感じ」を形作っている。僕はこんなに「優しい」曲を作れる人を、はるまきごはんさんより外に知らない。
言葉について
はるまきごはんさんの曲が物語的であるのは、先ほど述べた通りである。
そのどれもが「空想」とか「夢」とか、そういう世界観に基づくストーリーになっているが、如何せん「夢」の話なもので、それを言葉にするのが難しい。今すぐ布団に入って、眠ってもらった方が早いかもしれない。それかはるまきごはんさんの曲を聞くしかない。
発言調になっている、というのはAyaseさんと似ているかもしれない。はるまきごはんさんの真の特徴はその奥、「二人なのに一人」というところにあるように感じる。
アルバム「ふたりの」然り、はるまきごはんさんの楽曲にはたいてい二人以上の登場人物が存在するわけだが、その楽曲はどれもモノローグ的であり、「二人目の登場人物を予感させるが、干渉を起こさない」というシステムになっている。
そういう意味で、非常に内省的な構造になっていると言えるのかもしれない。
その「内向き」な構造が、「夢」とか「空想」、すなわち「一人でする営み」というストーリーに重みを持たせている。
しかし「内向き」でありながら、決して「矮小」ではない。空想の世界観は広いということを再確認させられるような、広がりを持った楽曲でもあると思う。
曲紹介
相当迷った。
初めて聴いた曲、だったと思う。原曲もすごいが、このアレンジもすごい。
曲調が優しいが、あるいは優しいからか、重みのある言葉が「沁みる」。優しいからと言って、軽くはない、というのがはるまきごはんさんの魅力の一つである。
夜魔(アルバム「ふたりの」収録)
アルバム曲。はるまきごはんさんのアルバムは買って絶対損はないので、是非アルバムごと聴いてほしい。同氏の「やさしさ」が凝縮された大好きな一曲。シンプルで美味しい感じがする。バタークッキーみたい。
はるまきロック。『八月のレイニー』とか『リリ』(「ふたりの」収録)とか『仮定した夏』(「幻影EP-Envy Phantom」収録)とかも大好きです。ミクの高音の使い方が、叫んでいるようで良い。
もう1トピックやります。
またね。
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