Ayaseさんの音楽

HERO

2023年のマジカルミライテーマソングが発表された。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm42419098

今年のテーマソングは個人的にとても注目していた。というのも、久々の「新興」ボカロPによる提供であったからである。
近年はsasakure.UKさん、cosMo@暴走Pさん、ピノキオピーさん、和田たけあきさんと往年の名ボカロPが名を連ねており、ここまで最近デビューしたボカロPの起用は本当に久しぶりのことである。
そしてかの『砂の惑星』以来、すくすくと育ってきたボカロ界を、現代的なボカロPがどのように描くのか、とても楽しみにしていた。

さらに提供はあの「YOASOBI」で知られる超有名コンポーザーときたら、期待にも拍車がかかるというもので。

そして、その期待を見事にぶっちぎる楽曲だった。
まずは一度聴いてください。

イントロダクション

Ayaseさんのことはおそらく多くの人がご存知のことと思う。YOASOBIでスマッシュヒットを連発していることを認識されがちだが、ボカロ曲としても『ラストリゾート』や『シネマ』がYouTubeで1000万回再生を超える有名曲である。

アルバム「幽霊東京」のリリース、そしてYOASOBIのデビュー曲である『夜に駆ける』の大ヒットを経て、しばらくボカロ曲からは離れていたが、プロセカへの『シネマ』投稿により復活(と言っても1年ほどしか期間は空いていないが)、そして今回のマジカルミライテーマソング抜擢と相成った。

先述したようにまだデビューして日が浅く、曲数もそこまで多くない中、リスナーに鮮烈な印象を残しているのは、まさにAyaseさんの手腕によるものであろう。

ちなみにYOASOBI名義では1億回再生を超える曲を(3年で)4つ持つという、とんでもないクリエイターである。(『怪物』の方が『夜に駆ける』よりも再生数が多いのはびっくり。アニメタイアップってすごいですね。)

サウンドの特徴としては、徹底的なDTMが挙げられるだろうか。ギターなどは生音源が用いられているのだろうが、エレクトロサウンドが基調であり、かつ耳に残る。YOASOBI名義の曲は生っぽい音が増えているので、意図的に使い分けているという可能性も十分にある。

初音ミクの使い方も非常にエレクトリカルである。『HERO』を聴いていると「初音ミクの声がメロディーとして入ってくる感覚」があったが、初音ミクを意識的に「ヴォーカルシンセサイザー」として運用しているのだろうか。実際それが同氏の特徴的なテイストとして機能しているわけであるから、素晴らしい策略である。

音について

大方上に書いてしまったが、エレクトロサウンド、そしてそれに立脚するヴォーカルシンセサイザーとしての「初音ミク」がAyaseさんのサウンドの特徴と言えるだろう。そうそう、Ayaseさんは一貫して初音ミクを使っているんだった。

サウンドとしてはそうなのだが、音の使い方について、Ayaseさんの曲にはある特徴がある。これは非常に明文化しづらいものであり、あるいはコード進行あたりで説明がつくものなのかもしれない。大変申し訳ないことに、自分はコード進行に関する知識が全くないためそれを説明することはできない。

例を挙げることにしよう、これは私の実体験でもあるが、Ayaseさんの「復活曲」『シネマ』である。投稿当初、このサビの部分になんとも言えない「Ayaseさん感」を覚えて感動した。これは『ラストリゾート』にあるニュアンスであり、そして『夜に駆ける』にあるニュアンスでもあって、非常に興味深いものである。
先ほども書いたように、YOASOBI名義の曲はそこまでエレクトロサウンドを押し出していない。すなわち、『夜に駆ける』で感じたニュアンスと『シネマ』で感じたニュアンスの一致は、その「エレクトロ」や「ボカロ」といった文脈を超越した「サウンド」の要素にあると考えられる。

雰囲気について語るのは簡単で、レトロフューチャーっぽいとか、どことなく暗いけど明るいとかいうことができる。また、1サビを不安定なまま留置して間奏に行くとか、ラスサビを引き伸ばしてさらに展開するとか、よく使われている「型」もある。しかし、それだけではないサウンドの特徴は、Ayaseさんが持つ「隠し味」のようなアイテムなのかもしれない。

当然このような隠し味を有するボカロPさんはAyaseさんだけではない。また紹介するときに取り上げることとする。

言葉について

Ayaseさんの曲には「会話体」が多い。モノローグであったり対話であったりするが、その歌詞の多くが「発言」であるように聞こえる。

おそらくこれは上に挙げた初音ミクのヴォーカルシンセサイザー性とも関連している。発言は語尾の同期が取りやすく、発声のリズムをとるのに最適なのである。

またもちろん、この言葉の特徴は我々の感情移入にも寄与している。会話があることで情景が思い浮かべやすい。これは小説にも似たような要素があると言えるだろう。

小説……どこかで聞いたことがあるような。

曲紹介

ラストリゾート

Ayaseさんの曲の中で私が初めて聴いたもの。イントロで一気に耳が持っていかれたのを今でもよく覚えている。『HERO』もそうだったね。
いわゆる「ボカロっぽい」曲である一方で、Ayaseさんの要素がふんだんに編み込まれた一曲。ヒットするのも納得である。

フィクションブルー

爽やかないい曲。サビのメロディーが大好きです。
他の曲とは少しテイストが異なるが、それでも「Ayaseさん感」を味わえる曲。マジカルである。
ちょっとミニマムな感じがするよね。シンプルで。

夜撫でるメノウ

サビ前の下降音型が素敵。でもこれはAyaseさんにしては珍しいな、という感じ。アルバム「幽霊東京」に収録されているAyaseさん歌唱バージョンもすごくいいな、と思っていたらYouTubeにも上がっています。要check。

以上、Ayaseさんの紹介でした。ちょっと書ききれないことがあったからまた書きます。

またね。

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