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ヨルニトケルツアーで夜を越えたBeyond the Night

この曲が初めて披露されたプレツアーイベントのMCで、新曲について折原伊桜はこう語っていました。


新曲は作詞作曲を手掛けるのが名だたる方々でひっくり返るけど、皆に喜んでもらえるようにちゃんとNightOwlの曲にしていきたい。
約束します。



この決意表明から3ヶ月。
私がこの曲が本当にNightOwlの曲になった、ツアーファイナルが彼女たちにとってターニングポイントになった!と実感したのは、全国5カ所のツアーと、自身最大規模だったファイナルを迎えた正にその日....


...ではなく、実は、そのから2週間後の単独でもない対バンライブの日でした。
それは、節目や目標を乗り越えても、それを到達点としない、成長を止めない彼女たちの勢いの証だと思います。ワンマン中心といいつつ、その他も含めてツアーを振り返りたいと思います。


リリース

コンポーザーの発表を受けてから驚きとその後から湧き出た期待は止まず、リリース0時ぴったりのタイミングでわくわくしながら配信サイトでNightOwlのページを開いた。初めてイヤフォンから流れてくる音を追ったとき、疾走感のあるメロディアスな展開、そしてキリングパートになりうるロングトーンが印象的な折原伊桜の落ちサビ。

まだ私の聴いたことない、ありそうでなかった新しいNightOwlだった。これがライブならどんなふうに見えるんだろう?


歌詞がまだ表示されないのがもどかしかったけど、数度リピートして自分の耳を信じて辿る言葉の数々

輝かなくたって君に届くように 
ここで歌うよ 
本当の僕になれるように

暗闇の中で 君を見つけだすから

NightOwl『Beyond the Night』


彼女たちの信念をそのまま歌に乗せたようで、さらに心が震えた。
初めて彼女たちの曲を手がけてくれた藤永さんとは思えないくらい、これまでの彼女たちを理解し尽くしたような歌詞だった。

7/25〜29 ヨルニトケルマエニ 越えなきゃいけない壁

初披露の東京、7/25。
開幕一曲目がこの曲だった。そんな特別なシチュエーションで披露されてしまったので、正直に告白すると緊張と衝撃で記憶は曖昧だ。

冒頭の通り、新曲3曲に対して「制作陣の名前に甘んじず、NightOwlの曲にすると約束する」と決意表明がなされた。
言葉にしたことは必ず実現させてくれる、そんな強い意志を持った4人だからこそ、とても頼もしかった。

そして同じくプレツアー大阪7/29。
この日は、意外な展開があった。神妙な面持ちで始まった折原伊桜のラストのMCである。



今までワンマンの目標は、来てくれた人を楽しませることだった。
だから、手前となる完売を目標にするとそれが薄れる気がして掲げることはなかった。
だけど、数千人の人を目の前に歌えるグループになる為には乗り越えないといけない壁がある。
今回のツアーファイナル、私たちにとって最大規模の代官山UNIT公演を完売させることを目標にします。



強気な宣言の裏腹、マイクを握る手はひどく震えていた。私が観た中で、MCでここまで彼女の緊張が全身から伝わってきたのは、当日朝に急遽3人でステージに立たねばならないことが発表された2月以来だったと思う。


今までそれまで幾つか通ってきたアイドルグループと比べて、ワンマンについて数字のことを一切言わない•対バンでもSNSでも過度な告知をしない彼女たちのスタイルに、じつはすこしの不思議を感じていた。


その疑問が解けると同時に、今まで見てきたどのケースよりも重い完売目標ができた瞬間だった。過去にもそれなりにアイドルオタクをやってきているから、挑戦的で身の丈に合わないようなキャパでのワンマン発表も見てきたけど、この時ほど冷え冷えした焦りが背筋を通り過ぎたことはない。

自分達のスタイルを覆してまで目標を掲げること、
それを超えられなかった時の虚しさとは...?
やりきれなかった時の気持ちは...?
何事も有言実行な彼女たちだからこそ、
その恐ろしさにぞわぞわした。


彼女たちの今の立ち位置から見て、決して無鉄砲な挑戦ではないキャパ″代官山UNIT″というのも生々しくて、切実だった。


そんな重い空気を割って開くように始まったラストの曲はBeyond the Nightだった。東京で聴いた時以上に、イントロの音が重なりあっていく様に鼓舞されたし、ずっとずっと深い気持ちでこの曲を受け止めていた。


普段は特典会の列に並ぶと一通り振り返って素敵だったシーンを回想して最も印象的だったことを1周目で伝えるのだが、この日私が真っ先に伝えたのは、ラストのMCについてだった。

いおちゃんは困った表情で、
「アレ、ものすっっっっごく、緊張したっ!!」
と勢いよく吐き出した後に、トーンを落としてこう続けた。

「大切にしたいことはあるけど、やっぱり3年間やってきたから。今ここで、これからも、頑張り続けたいから。」

8/20 新宿ブレイズ 起爆剤

これはツアーでなく対バンだけど残しておきたいアイドル甲子園のトリを務めた日。
この日は、今までのNightOwlとはすこしだけ空気の違う盛り上がりを感じた。


多種多様で盛り上げ上手なグループが揃った中でのトリ。
フロアにはNightOwlのお目当てではないお客さんも、多く残っていたように思う。
そんな中、始まったBeyond the Nightで沢山のオタクが、高く飛び上がっていた。


これは、対バンやフェスで、ライトなお客さんを巻き込んでの点火のキッカケになる曲なのかもしれない。そう思えるくらいの興奮だった。
Be the oneのもつ陽の気とコミカルな愛らしさとはもっと違う、ライブらしい起爆剤。


2柵目でみていたせいか、フロアの湧き方、自由奔放に音に乗せて遊んでる具合がよくわかる。
頭を空っぽにしてライブを楽しむには、ややテーマの重さや品のあるNightOwlでこんな猛々しいフロアになる事もあるんだなと新鮮な光景だった。


いおちゃんは、その日
このまえ、上のひとがたまたまライブを見てくれた時にね、フロアでお客さんが湧いてるのみNightOwlは踊らせるグループだって言ってもらえた!」と嬉々として語ってくれた。
まさにこの日の対バンも、、その通りの出来栄えだったと思う。

そしてこの勢いのまま、次に控えるのがいよいよツアー初日、周年ライブ。



8/23 大阪 見つけだすから

この日のことはあまり言語化できそうにないので、ごめんなさい。

ただ、MCで話していた4年目に至るまでの楽しいことだけではなかった日々は、ほんの欠片程度で、きっと3年間の活動の中でもっと色んな事に打ちのめされれてきたのだろう。
そんなお話の後に始まったのも、Beyond the Nightだった。


その日は時間の都合で折原伊桜1周だけ特典会に参加したが、私が伝えたかった内容はただ、ただ、感謝しかなかった。


「見つけるまで、推せるまで、アイドル続けてくれて本当にありがとう。なにより、アイドルっていう道を選んでくれて、ありがとう。」

そう伝えたら彼女は咄嗟に天をみて、少し落ち着いてから、いつもの様に目を合わせてくれた。
あの時の表情は、きっとずっと忘れない。


私だって、きっと見つけ出したんだと思う。


9/3 仙台 ルールのこと

各地でも色んなハプニングもドラマもあった。
仙台はパフォーマンス以外の部分と規制のお話を残したい。


仙台公演で再三の注意を無視して声出しする観客に、折原伊桜は怒気を孕んだ厳しい言葉を投げかけた。
本人は空気を壊してしまった事に悩んだだろうし、セトリのストーリーテーリングに拘りのある人だからこそ、自分の発言で組んだ流れをぶった切ってしまう決断は悔しさは大きかったと思う。それでも、ここで濁さずに論拠をつけて怒れるアイドルは、なかなか出会えないと思った。

咄嗟に彼女を気遣って
こういってるけど、このひと、1番気にするから
と少し茶化しながら場の空気を和らげ、再度やわらかく注意を促す凛音ちゃんのフォローは上手かった。
転倒した時にすっと手を出す自然な速さや、以前音響トラブルがあった日にも「経験歴は私が1番あるから、トラブルには私がしっかりしないと」と話してくれていた。
彼女は表立ってそういうキャラクターを出さないけど、しっかり縁の下の力持ちだと思ってる。


今思えば、この事件があったから余計にツアー後に開催されたギュウ農フェスで、NightOwlにとって2年ぶりの声出し解禁は、私の中でより熱く想いの強いものになった。

フェスのBeyond the Nightで叶った、野外の、しかも夜のシンガロンは、あまりに夜の梟たる彼女たちに相応しくて、永遠に忘れられない光景だった。
あと、さらに視界を狭めて話すと、観客の声を聞いた時のメンバーの満面の笑みも素晴らしかった。


9/10 福岡 エールのこと

当たり前なんだけど、ワンマンならではのことを再確認できたので、それを。


自分らしくを謳うLiving my dayのラスサビで「私のため」というフレーズで握った拳を胸にとんとんと当てるフリ。
いつもより力強く感じて、ありのままの自分を認めるエールとして受けとった。そこからのAnswer。
この2曲はNightOwlにしては夜の要素が薄く、底抜けな明るさがあるせいか普段はなかなか目にかかれない構成だった。


特典会でもその話をした時、本人からも解説が入った。
「暗闇は自分の力で切り抜けなきゃならない。
切り抜けた後を表すのが言ってくれた通りでリビマイとAnswerのブロック。
あの2曲を対バンでも続けることって、滅多にない。
暗闇を抜けた後の前向きな気持ち
(対比的に手前のブロックが暗闇)をブロックまるごと大胆に使って、全体でドラマチックになるようしたかった。」

長尺のワンマンだからこそできる物語の練り方はとても贅沢で、対バンでは味わえない層の厚さを堪能することができた。

限られた時間で見せ尽くす対バンのセトリもいいけど、やっぱりワンマンツアーっていいな....

そろそろツアーも折り返しに入るのが少し寂しく感じるようになっていた。


9/24 名古屋 これまでを詰め込んで

この日はツアー始まって、初めて完売が出た公演になった。

終盤のMCで静かに話し始めた内容はこうだった。

名古屋は、デビューして少し経った後、
新人を物珍しさで観に来てくれるお客さんが
抜けて行った時期に「今日は大丈夫かな?」
と不安を抱きながら向かったことが思いだされる。
そんな土地で、本ツアー初めての完売をだすことができた。


後半は嗚咽混じりになりながらも感謝を伝えて始まったBeyond the Nightは、ツアー最初に感じていた既に「こうありたいという強い意志」やこれからの未来に向けたものだけじゃなく、
彼女たちの悔しさも不安も弱さも、ネガティブな一面も含んだ″これまで″を全て詰め込んだ上で、成り立つ曲になっていた。


涙を堪えて歌い上げる折原伊桜の姿は普段の凛々しさは消えて、直向きさと切実さの濁流がそのまま形を辛うじて保ってるような、もうどろどろの状態だった。


続くDear,Nightで食い止められることが出来そうにない涙に抗うことはやめて、それでもひたすらフロアに手を差し伸べて、眼差しを向けて、必死に想いをフロアへ届ける姿に見ているこちらも涙が止まらなかった。


この日、私の隣には未だNightOwlだけでなく女性アイドル自体のライブを数回しか見たことない友達を連れてきた。
終わってすぐに「いおちゃんって今まで堂々した女王様だと思ってたけど、ちゃんと女の子なんだね。なんか愛しいね」と声をかけてくれた。


周年の大阪と同じくらいにツアーの特異点になるような日だったと思う。


(まさかこんな感動的な後に、いおちゃんが会場に衣装のスカートを忘れて、翌日謎のスカートでライブする事になるなんて....)


10/10 東京ファイナル

販売サイトでの代官山UNITのチケット残数は×にならないままカレンダーは進み、ファイナル前日を迎えていた。


開催日が近づいてきてもチケットの売り方や宣伝の仕方も変に色をつけたことをせず、あくまで公平に販売していくスタンスはこの界隈の中では観たことない潔さだった。

そんな環境下での『前夜の残り30分での完売』は嘘みたいにドラマチックな展開で、完売に対してこんなに達成感を感じた事はかつてなかったと思う。


この日の本編ラストMCは、お客さんへの完売のお礼から始まった。

私たちはここで満足したらいけない。
何回失敗しても全部叶えたい。
人生かけて死ぬ気で歌って踊って、
人生かけて死ぬ気でNightOwlをやる。


後から本人に聞いたが予定していたMCを全て白紙にして、この場で彼女が思ったことを吐き出したMCだったらしい。

「死ぬ気で」「人生をかけて」うろ覚えだけどこれに近しいフレーズは、周年ライブでも聞いた。このワードが咄嗟に出てくるあたり、きっと彼女たちの活動に賭ける気持ちは微塵もブレることなく、いつもこのヘビーな重量なのだろう。

突き付けるような重さのあと始まったのが、Beyond thn Nightだった。

ひとつの目標であるワンマンが完売したから終わりじゃなく、今日を乗り越えて続けていく。
コロナ禍の悔しい環境、辛い別れ、あと一歩の悔しい思い....今まで進んだ道のりは順風満帆ではなかったと思う。

そんな暗闇の中でも君を見つける、そんな中からも届けることを諦めない。
いおちゃんが大舞台のライブのたびによく言ってくれる「私はどこにいたって、必ず見つけるよ」が、何度も駆け巡った。


本当に「今日のこの瞬間のために、創られた曲なんじゃないか」なんて、とんでもないことを錯覚してしまうくらいに、今の彼女たちをそのまんまを表した曲だった。


折原伊桜のラスサビのロングトーンが過去1番くらいに力強く響いた。
MVでこのパートが終わったあと、暗闇から快晴の空の下に揃う4人に一瞬でシーンが切り替わる。
あの絵が、今のライブの光景に重なって見えた。


もう、夜は越えていた。


夜を越えて始まったFeel Aliveで折原伊桜は、こう宣言した。

「私は私の歌を歌う」


ツアー後10/22 梟の曲になった日

感動的なワンマンから2週間後の大型対バンの日。

この日のイベント、ラストを飾ったのはBeyond the Nightだった。

ツアー前は、対バンではフロアの温度を上げる役割の曲になると思ってた。


辛口に言うと、最初はまだ自分達のモノになってなかったのかもしれない。
だから、パフォーマンスから伝わる歌詞や空気といった本人たちが生み出すものより、テンポや旋律といった楽曲の表面的な要素に耳が持って行かれていたのだと思う。

でも、ツアーで色んな率直な彼女らの核を語るMCの直後に幾度もこの曲を突き出されて、そして彼女たちもそう簡単に体験できない心情でこの曲を演ってきたからこそ、説得力と曲に負けない風格が生まれたのだと思う。


それこそ、プレツアーで語っていた「NightOwlの曲になった」のだと実感していた。

ツアー前は対バンの締めにやる曲だなんて思ってなかった。All Night Longから続く曲になるなんて想像していなかった。

でも、この日、本当に美しく、しっくりあるべきように、最後に鎮座する曲になってた。
アイドルが授かった武器を磨いていく、よく私が使う表現だけどそれよりももっと生々しいものに感じた。

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