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「自動」のルーツを巡る旅、そのプロローグ

(1200文字程度)
いつものように雀魂(Yostarによるオンライン麻雀)を打っていてふと思った。

雀魂の画面の一部。「オートホーラ」もしくは「じどうあがり」もしくは「じどうわりょう」これを組み合わせた6つのいずれかで呼ばれる(和了=ホーラは中国語)。

「自動」って「auto」の英訳により生まれた言葉ではないか?、と。

昔(江戸時代まで)の言葉で「自動」という言葉を聞いたことがない。
例えば絡繰(からくり)。「自ら動く」のであるから、これに「自動」という字を当てても何ら不自然ではないが、現代の説明文で「自動で動く人形」という説明をされることはあっても、これに「自動人形」のような名前がついているのは見たことがない。

「skyscraper(直:天をこするもの)→摩天楼」や「philosophy→哲学」のようにこれまで本邦に登場しなかった言葉ではないか?という仮説を某掲示板に投げてみた。するとコトバンクが飛んできた。 

どうやら『西国立志編』の第二冊で「自動(オノヅカラウゴク)の機器を造り出さんと」と訳されたのが初出であるらしい。

西国立志編第二冊

『西国立志編』はイギリスの著述家サミュエル・スマイルズの"Self-Help"を中村正直が和訳した時(1871,明治4)のタイトルである(現在は『自助論』という邦題の方が一般的)。300人以上の成功体験をまとめた本で、1872~80年までは学校教科書としても採用されていた(のちに文部省が現在まで続く教科書許可制を施行し使われなくなる)。第二冊のタイトルは「新械器を発明創造する人を論ず」であり、いかにも「自動」が出てきそうな題目である。

一応、プロジェクト・グーテンベルク(日本で言う青空文庫のようなサイト)で"Self-Help"を見てみることにする。 すると、

Vaucanson, however, did not confine himself merely to the making of automata.

このような文が見つかる。おそらくmaking of automata(直:自動人形の製作)の部分を「自ずから動くの機器を造り出さんと」と訳したものと思われる。「自動」の初出がautoやautomaticでなかったのは意外だったが、一先ず説は立証と相成った。

余談:本当は対応する訳文のところももう少し長く載せようと思ったのですが、当時確認した大阪大学のサイトがデッドリンクになっており、早稲田のサイトで同様のものを見つけたものの、様式が変わっていたのでページ数がずれて見つけることができませんでした。見つけたらコメント欄に書いておいてください(丸投げ)。
あとこれより古い用例もあったら教えてください(丸投げその2)。

このnote記事はこちらのアドベントカレンダーに参加しています。
https://note.com/calm_avocet202/n/n51c4049a1e9e


12月5日  追記

he had already been devoting his spare time to the invention of a perpetual-motion machine:
彼は元来職業の餘暇を以て。自動(オノズカラウゴク)の機器を造り出さんと。
13ページ最終行 より「●」を「。」に書き換え。

餘暇は余暇のことですね。


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