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やさしい紙飛行機


エッセイとは、紙飛行機だと思った。18時の帰宅ラッシュにもかかわらず、たったの2両しかない列車を眺めながら小さくつぶやく。

最初は驚いた。帰宅ラッシュの時間にたった2両しかない列車に。けれど最近は驚かなくなった。22歳のくせに、都会の人口密度に住みたいという欲が減った。コンビニもスーパーもカフェも銀行もある。ネットが繋がっている。車もあるし駅も空港も近い。家の前の道も部屋の中も広々としている。宅配ボックスが備わっているアパートなのに、家賃が安い。

人の手で作り上げた建築物は大好きだが、列車の窓から見る美しい山々と湖にはどうしても勝てない。それはきっと建築家には承知のことだから、自然と調和させた建築物を見上げたときは、たまらなく泣きそうになる。もうすぐ訪れる秋が深まった田舎の景色と、イルミネーションで彩られる都会の景色が楽しみで、やっぱり四季がある日本に生まれて良かったと思う。

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先日noteで、ジャルジャルが「キングオブコント」というコントの賞レースで優勝したことを書いた。

18時の、2両しかない列車内で考えた。ジャルジャルのファンクラブに入っている私はこのnoteを、ファンクラブ内の800人ほどいるチャットに載せようと思っていたが、辞めた。

いつものように余裕で席に座り、Twitterとnoteを開いた。やさしいエッセイは、いつだってふとしたときに届く。




Micaさんが私のnoteを読んでくれた。それと同時に、あるエッセイを教えてくれた。それはとてもおだやかに飛ぶ、紙飛行機のようだった。やさしい風にゆられて、私のもとに着地した。


18時の、2両しかない列車の中で、涙を堪えた。窓から見える湖が夕空になじんでいた。国道を走る車に渋滞はなかった。頬を隠す髪の毛が前後に揺れていた。いつものマジックアワーの景色とともに、私は涙を堪えていた。

11時の、2両しかない列車の中だったら、きっとドバドバと泣いていた。そう思いながら家でまた読み返すと、本当にドバドバと泣いた。


自分のnoteを、ファンクラブ内の800人ほどいるチャットに載せようと思っていたが、代わりにこのエッセイを載せた。このエッセイがやさしく届くように、私はおだやかに紙飛行機を飛ばした。チャットには続々と既読がついた。そのたびに私はドキドキした。

「ステキな記事を共有してくださってありがとうございます。」なんて嬉しい感想が届いた。Twitterのリプライで「もしかしてチャットでこの記事を教えてくれた方ですか?」と言ってくださる方もいた。もしあのとき自分のnoteを共有していたらどうなっていただろう。顔から火が出てファンクラブを退会していたかもしれない。


ファンクラブのチャットだから、もちろんジャルジャル本人やスタッフも更新している。もしかしたら、と思っていたが、本当に届いていた。



2019年12月にこのエッセイが書かれ、2020年キングオブコントで優勝し、さらにこの記事がジャルジャルに届いて、完結した。

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ネットにエッセイを書くとはなんだろう。「1つのいいね」のような小さな喜びから、「本人に届く」といったドラマみたいな展開まで、たったひとつの作品からたくさんの物語が生まれる。

そんな夢の広がる物語に、できることなら永遠に参加していたい。けれどいいことばかりが全てじゃないと思う。違った解釈をされて、知らない匿名の人間に罵声を食らうかもしれない。はたまた全然書けないなんて日も来るのだろう。

それでも、自分の書いたエッセイが「いいね」と言われ、おだやかな風に乗って、誰かが飛ばしてくれる日を夢見ていたい。たかが日記だろうと、自分の文章に誇りを持っていたい。秋が深まった田舎の景色と、イルミネーションで彩られる都会の景色を見つめながら、自分が書いたエッセイと好きなひとが書いたエッセイとともに、今日も私は紙飛行機に乗せて飛ばしていく。

やさしいエッセイを書きたい。そしてやさしいエッセイは、届いてほしい人に届けたい。



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