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【KY9】低PBRと割安株


低PBRの銘柄は割安なのか?

東証の改革で注目されています

日本の株式市場に投資する人の7割は、外国人投資家と言われています。米国よりも欧州の方が多いみたいです。
それはさておき、外国人投資家は資本効率というものを重視します。簡単に言うと、投資したお金でどれだけ稼げるのか、ということです。
その一つの尺度としてPBRが用いられるので、東証の株式売買が盛り上がるよう、企業にPBRを改善するよう促しています。

PBR(株価純資産倍率)とは

PBRは、会社の時価総額を純資産で割ったものです。
時価総額は、株式市場の株価✖︎発行株式数で、会社の市場での評価額です。
純資産は、会社の自己資本(総資産ー負債)であり、株主のものとほぼ同義に考えていいです。
会社全体の資産を金銭的に評価して、他人に返すものを引いて残ったものが自己資本とあり、解散価値と見なしても良いです。

式で表すと、PBR=時価総額/純資産です。
たまに、株価/一株当たり純資産、で表すこともありますが、トータルでなく1株で計算されているだけなので、同じです。

低PBRの株の意味

低PBRとはPBRが1.0未満のものを言います。つまり、時価総額が純資産を下回っているということです。
すると、バーゲンセールだと思うかもしれません。企業を解散して投資額を回収すれば儲かるはずですが、そう単純な話ではありません。

例えばTシャツを想像してください。原価5,000円・販売価格10,000円・バーゲン価格2,000円としましょう。なぜ2,000円なのか、あまりにダサかったら10,000円どころか2,000円でも買いません。そのようなダサいTシャツは着たくもないからです。持っている分には5,000円(自己資本)という評価ですが、着る分には2,000円(時価総額)ということです。

これは会社でも同じです。企業というのは簡単に解散できません。そして市場評価は、会社の未来の活動に対する評価だということです。
その会社が成長せず、ほとんど利益を出さなかった場合は、どうでしょうか?株というのは、他の金融資産(他の銘柄だけでなく金や債券を含め)と比較してそちらが儲かるのであれば、容赦無く売られます。
つまり持っているだけで株価が上がる気配が少ない、より儲かるチャンスを逃しているならば、低PBRでも買われない、割安ではないということです。

多くの日本の株は低PBRの理由

分かりやすく言うと、Tシャツの事例と同じです。持っているだけで価値が下がる、着てもカッコよく見えない、自分の価値が下がる。着るなら他のカッコいいTシャツを着たい!バーゲン価格ですら欲しくない!ということです。
他にいい投資先がある、成長見込みが少なく赤字になる可能性があるから、処分価格(低PBR)で売られるということです。
日本はここ最近までずっと低成長でしたし、企業は成長するよりも財務の安定性を重視して、利益を配当として株主に返すことや、積極的な新事業投資をせず、中に溜め込んでいました。
お金が貯まるので、会社としては安定するのですが、成長しないということです。Tシャツと同じで値上がりしないから売られるし、もっといい投資先として米国株や外国債券などにお金が向かうことになります。

有望な低PBR銘柄の見分け方

PBRを分解してみよう

どのような低PBR銘柄が買いなのか、その前にPBRを分解してみます。
PBR=ROE(自己資本利益率)×PER(株価収益率)が広く知られています。
ROE=利益/純資産、PER=時価総額/利益

ROEは効率性、株主からしたら投資した金額でより利益を出せるようにするということです。ROEは年率なので、静的な指標ともいえますね。
PERは期待値、つまり株主からしたら何年ぐらいで投資したものが回収できるのかということです。PERは期間(倍率)を意味するので、動的な指標ともいえますね。例えばPERが100倍という銘柄もありますが、これは100年掛かってもいいということではなく、今後の成長が期待され、利益が増えることで回収期間が短くなると見るべきです。

低PBR対策とは

低PBR対策として、東証は「資本コストや株価を意識した経営」と言っています。
ここで気づいて欲しいのは、資本コストという表現です。コストは費用、例えば家計で言えば電気代とか食事代とか、無くなるものです。投資家は投資しているのに、費用とはどういうことなのか、ということです。

これは会社側から見た表現です。会社を回すのに必要な資金をどこから得ているのか、それは何らかの形で借りた分以上に返さないといけないから、コストと表現しています。
投資家の立場から、会社は投資先であり株主のものです。したがって、株主にとって低PBR対策とは、より儲けさせてくれるかがポイントです。

増配や自社株買いを評価すべきか?

世間一般で、低PBR銘柄の会社が増配や自社株買いしたら買いだと言われています。この点は、より深く考える必要があると思います。
ROEの増配や自社株買いは、純資産(分母)を減らすことです。減らしたらどうなるのか、会社は使えるお金が減るのだから、企業活動は縮小する可能性が高いです。したがって銀行から借入するとか、何らかの方法で調達しないといけません。

毎期、儲かって仕方がなく頻回に自社株買いしていたら良いのですが、急に自社株買いをした場合でお金を他から調達しなかった場合、株主からしたら会社の中に死金を貯め込んでいたということになります。自分のお金を有効に活用していなかったということです。
お金を増やそうともせず、貯め込んでいた会社を評価すべきか、これは疑問です。

財務レバレッジを効かせる経営

例えば90,000円を投資して100,000円を稼ぐ会社があった場合と、10,000円を投資して銀行から80,000円を借入し100,000円を稼ぐ会社があった場合、どちらが株主にとって良いでしょうか?
答えは後者で、確かに80,000円を銀行に返す必要がありますが、毎年の返済が5,000円と計画した場合、利益10,000円(返済分を引くと5,000円)が自分のものになります。株主は3年目に、投資した以上の金額を回収できます。
なお前者で利益が10,000円だと、投資額の90,000円まで9年掛かります。
このように投資額を減らして、借入を増やすことを財務レバレッジを効かすと言います。

財務レバレッジ=総資産/自己資本

つまり株主にとって、財務レバレッジが効いている会社の方が良いです。残りの8万円を他に投資できます。
また借入金がある程度ないと、企業も必死になって稼いで返そうとしないので、成長への意欲が低くなります。
ただし借入が多すぎると経営が不安定になるので、限度はあります。

サンテック(銘柄コード:1960)という低PBR銘柄の投資判断

私は最近、サンテックという低PBR銘柄を買うか悩みました。
Yahoo!ファイナンス(サンテック)

東南アジアに出張する機会があり建設ラッシュを目の当たりにしたので、独立系電気工事の大手で東南アジア中心に海外工事にも意欲があるという、同社に関心を持ち、財務内容も良かったので注目しました。
しかし私は投資を見送りました。
同社は私が判断を見送った後、東証が求める「資本コストや株価を意識した経営」を発表しました。さらにその後、四半期決算を出しましたが、コンセンサス未達の可能性が高いです。株価はパッとしません。

なぜ私が投資を見送ったかですが、端的に成長の可能性が少ないと判断したからです。私はROEではなく、PERの変化の可能性に着目すべきだと思っています。今は市場の評価が低いが、会社の将来性があれば低PBRでも投資判断するということです。増配や自社株買いの可能性よりも、株主のお金を有効活用しているか、その点に着目するということです。

株主の立場からしたら、株主のお金を無駄なく使っている会社が良いし、株価が低ければ強気で投資できます。増配や自社株買いは、カタリストに過ぎません。

今回はここまで。また次回よろしくお願いいたします。


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