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君が2周目を生きるのは

久々に着たアウターのポケットから10円ガムが出てきた。

白と黒のキャラクターがギョロっと笑ってる包装紙のやつ。
 「体に気をつけてね!今までありがとう」
ゾッとするくらい穏やかな置き手紙を置いて出ていった彼女。
お金がなくて死にたい。できればホームに飛び込んでという会話をした時に
「でも改札を通る分のお金はかかるよ」っていわれたときからなんか気になりはじめて、猛アタックの末に付き合えたのが3年前。
深刻になる地球温暖化を止めるため、人類の半分を冷凍保存して、地球の寿命を引き延ばす政策が始まったのが一年前。
部屋のテレビが壊れたのがさっきのこと。
 このガム、あの日君が帰りの電車代分しか入ってなかった僕の財布を奪って、無理やり買ったガムなんだったっけ。
 やっぱり、別の上着を着ようかな。まだ少し肌寒いから。

部屋のテレビは、廃品になって初めて本物の空を写した。

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