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速すぎた亀

まず俺が何故戦わねばならないのか
そのことを教えて欲しかった。

戦いというものは望む望まないに関わらず
突然やってくるものだった

「お前ノロマだろう?」
いわれなき侮辱だが事実でもある。

だけどそれは種が違う
カラスが空を飛べない猫を
馬鹿にするような話だ

そう俺は亀であり、やつは兎だった。

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同じ亀に言われるならば理解できる。
だが同じ亀には言われることはないだろう
なぜなら亀の世界で言えば
俺はオリンピック選手クラスの快速だ

亀がオリンピックをするならば
それはカメリンピックという
ネーミングになるのだろうか?
だがそんな疑問は本文とは関係ない

『種が違うよな?』

「だから何だ?お前は俺より足が遅い」

取り付く島もない
『お前さ、兎だろう?』
「そうだ。」
『お前、兎の世界では嫌われてないか?』
「なっ・・・」

図星だな。
いるんだよなこういうやつ

だから種の違う俺に対して
優劣を誇り自尊心を保つタイプ

『そもそもだ、亀に勝って嬉しいのか?』
本当にここは疑問なのだよね
全く性質の異なるものが
何故同じ論点で戦わないといけないのか?

だが・・・

「お前はそういって本当は
 負けるのが怖いだけだろう?」

そういう理論にはなりがちだな
煽るというやつか。
負ける事は悔しくないぞ
だって俺は亀だからな!
寿命の長さで言えば俺の方が勝てる

相手にしても仕方ないのだが
時には、この手の奴はぼこぼこに
してやったほうがいい気もする。

『受けて立とう。何メートル走る?』
「1キロ先のあの岩まで先に着いたら
 勝ちというのはどうだろうか?」

『わかった。お前が負けたらどうする?』
「俺の皮を剥いでくれていいぞ」
『そんな約束して大丈夫なのか?』
「亀ごときに負けるかよーははは」

嫌なやつだ。

「それと俺は間抜けじゃないから
 途中で油断して眠るとかはないぞ」

そうか。
だが、勝算なくして俺も戦おうとは思わない
審判にはたぬきに立ち会ってもらった

「位置についてよーいドン」

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負けるわけがない
俺はいつか兎に勝負を挑まれると思っていて
二足歩行を強化していた。
100メートルはもはや3秒を切る亀である

「ちょっ・・お前・・反則・・」

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