木こり生活

ショートショートで、無料部分でも成立するように1000文字でまず書いてみました。無料部分だけでも楽しんで頂ければ幸いです。

俺の名はきゃらを
木こりをしている
若いころは必死だったが
年齢を重ねる事で熟練したというのか

木も力いっぱいに切り倒せば
切れるというものではない
木には木の呼吸もあるから
そこをうまくつついてやれば
上手に切り倒すことができる

ただその日はなんとなく感覚がつかめず
勢いに任せて切っていたら
手をすべらせてしまった

ちゃぽーん♪
あぁー湖まで飛んで行ってしまったか

新しく買ったばかりの斧なのにな
また、町まで出て新しい斧を
新調してこないといけないな

そう思って湖を眺めていると
「？？？？？？？」

驚いた事に湖から何か現れたと思ったら
俺の斧が頭にさっくり突き刺さっている
これは謝るべきだよな？
こっちを凝視している

「すみません・・・手をすべらせて」
「君が落とした物はこの
　パルミジャーノ・レッジャーノか？」

「うん？」
よくみると手にはチーズらしきものを
持っているぞ。

斧のことを
パルミジャーノ・レッジャーノって
言うのだろうか？

「パルミジャーノ・レッジャーノは
　イタリアを代表するチーズのひとつ
　イタリアチーズの王様とも呼ばれる」

聞きもしないのに
チーズの説明がはじまった
ということは、頭の斧のことは
問題視していないのだろうか？

普通の人間ならば死んでいるし
そもそも神がかったものでなければ
湖の中からは出てこない

君が落としたのは・・という
セリフからみても俺が何か落としたのは
わかっているのだろう

頭に刺さっている斧のことは
当人は気づいているのだろうか？

そして、落としたものが斧なのに
チーズかときいてくるのは
この人はどっちの人なんだろうか？

斧が刺さっておかしくなったのか
もともとのコミュ障なのか
斧が刺さっておかしくなったのであれば
俺の責任は重大だ

それに祟られないだろうか？
日本で言えば地蔵の首を壊したようなものだ
罰があたらないといいが

「日本でパルメザンチーズとして
　販売されている粉チーズの多くは
　アメリカや日本製であり
　パルミジャーノ・レッジャーノとは
　別物である」

場所がここで、なによりこの状況下で
パルメザンチーズとの違いを語られる
でも知りたいのはそこじゃない

斧が関係しているのかどうかはわからない
だが解ってることは1つある
このタイプの人はあまり関わらない方がいい

「私が落としたのは
　そのパルミジャーノ・レッジャーノです」

「そうか、なら持って帰るといい
　パルメザンチーズよりも美味しいよ」

「ありがとうございます」

そういうと彼は湖に消えていった