スズメバチと薪割り爺さん
2022年5月30日
子供の頃のスズメバチの話
テレビもラジオない時代でした。生き物とのふれあいが一番楽しいことでした。藁屋根の家で味噌汁かけごはんを食べながら留守番をしていた子どものときの話しです。
気にかけていたスズメバチの巣がだいぶ大きくなってきました。物置の重い戸を10㎝ほど開けて、長い竹の物干し竿で、巣をつっついてみたくなりました。こう思うと試して見ないとおさまりません。巣の中からスズメバチがどんどん湧き出してきて巣の周りを飛び交っています。「痛っ」。竹の棒をつたわってきたスズメバチなのか、私の右目の下を攻撃したのです。顔の右半分が「ジンジン」と、痛みが増してきました。鏡で自分の顔を見ていると、こんどは「ドンドン」膨らんでくるのです。「マズイ」と思って、一人で自転車に乗って村のお医者さんに行きました。治療で覚えているのは、看護婦さんに痛いよと言われながら、太目の注射をされたことです。
大人になってからのスズメバチの話
古い民家の畑の中に、四方が解放されている屋根付きの物置が有りました。その屋根の下面に、直径25㎝ほどの黄色スズメバチの巣が有りました。
民家の方に許可をもらって撮影を始めることにしました。手持ちの機材(フイルムカメラ時代)で何をどのようにどんな方法で撮るのかを考えました。どんなに巣が大きくなっても巣への出入り口は、直径1㎝位でしょうか、働き蜂が一匹通れる大きさです。出入りするハチの様子を撮影しながら観察することにしました。
以前スズメバチがアゲハチョウの幼虫をとらえて飛び上ろうとしても、青虫が大きくて重かったのか飛び上ることができませんでした。二つに噛み切ってから肉団子の様にかみ砕き持ち去る様子の撮影をしたことがありました。この経験から巣に帰って来るハチは肉団子を持ち帰ることは予測できましたが、子供のころから疑問がまだ解けません。
撮影の準備を始めました。巣に刺激を加えてしまったら、ハチに顔も頭も「ぼこぼこ」にされてしまいます。慎重に、慎重に、大型三脚を最大に伸ばし、脚立を立て、手持ちのレンズ200㎜マクロで出入り口を中心に15㎝ほど切り取りピントを合わせました。巣と私の距離はかなり近いことがこれで想像ができると思います。さて、その疑問はと言うと、巣の外側が大きくなるのは理解できるが、巣の内側が小さいままでは外側を大きくする意味がどこにあるのでしょう?
百聞は一見でした。みなさんもスズメバチの観察をどうぞとは、危険すぎるので言えませんので、記憶の限り紹介します。出入り口に入って行ったハチは、青虫の肉団子を?前足で抱えて?口に咥えて?顎で挟んでだったかは思い出せないが、入っていきました。次に出入り口から顔を出したハチは、前方をうかがうかのように、出入り口から飛び出しました。次のハチは、大あごで茶色い色をした物をくわえて顔を出してきました。飛び立つ気配はなく巣の外側を歩きまわり、一ヵ所に留まり、外側の薄い壁になる部分に陶芸家の様に、茶色い物質を練りつけて、巣の中に戻っていったのです。巣材は木をかじりかみ砕きパルプのようにしたものを貼り付けていくのです。そうですよね、巣材の再利用をしていたのです。内側の壁をかじり取ることで、内側を広くすると同時に、女王バチが卵を産む幼虫の部屋をどんどん増やすことができますね。そこへ木をパルプにして戻ってきたハチが巣穴には入らず外壁を作り始めた。壁作りの作業量は一匹一回で、厚さ1㎜以下で横幅1~2㎝で縦幅が2~3㎜でした。
横浜の知り合いやってきて面白い事を言ったのです。横浜のスズメバチの巣には横縞が無いのに、この巣は横縞の色がいろいろと綺麗だねと。そうなんだ、この巣の周辺にはいろいろな種類の木が有るので、その木の色が横縞模様になったのです、樹種の少ない場所の巣は単色になるようです。巣は縞模様の貝殻を貼り合わせた様にも見えなくもないのです。その貝殻の膨らみのようにみえるのが空気層になります。何層も重ねることで、夏の高温や秋口の低温から巣内の温度を一定に保つ大切な断熱の役割をしているのです。
スズメバチの種類もいろいろですが、体長4、5㎝もあるオオスズメバチに出会うと、その体と羽音の大きさに怖くなってしまいます。林道を歩いていたとき、オオスズメバチがキイロスズメバチを捕えて噛み切っているところに出会いました。
ある幼児園の園庭に、二匹のキイロスズメバチが一体になって空から落ちてきました。交尾です。空中結婚です。女王バチだけが越冬するようです。越冬をする前に来年の産卵準備をするのでしょうか、多くのオスバチを引き連れて上空飛行にでかけ、飛行能力の高いオスバチと交尾をするとか。その空中結婚を上空で目撃することはできませんが、落ちてきた二匹をみて納得しました。
その園庭に現れた一匹の黄色スズメバチが、園児が遊ぶ園庭を飛び回っています。先生に砂糖水をお皿に作ってもらいました。そのお皿を飛び回るキイロスズメバチの前へ差しだすと、砂糖水を得るためにキイロスズメバチはお皿に静止しました。そのお皿とハチを静かに安全な場所まで移動をしました。
吊り橋でスズメバチにであったときに
こんなこともありました。「今日は吊り橋を二つ渡る遊歩道を歩きます」と、子ども集団の引率です。一つ目の吊り橋を渡る前に「一人づつです はしを歩かないで、安全に向うに渡ってください」と言ってみたのです。「川を渡れるか」とかいろいろと言っていましたが「とんちだ 吊り橋の真ん中を 安全に歩け」と言うことでしょと、安全を受け止めてくれました。今度は二つ目の吊り橋に行く前に「スズメバチが飛んでいるので もし顔の近くやってきても 顔に止まっても 絶対にふり払わないでね」「スズメバチは 皆の顔を刺すためくるのではなく エサを探しにくるのだから 怖くても目をつぶって 動かなければ 飛び去ってゆくから」と伝えておきました。吊り橋の中央で川の上流や、下流の合流点を見ていたときです。来たのです一匹のキイロスズメバチが、ブンブンは音を大きくして、「目をつぶって 耳をふさいで じっとして」。長く感じた10秒ほどの時間だったでしょうか。何事もなく静かに事が過ぎ去りました。
スズメバチの攻撃性
女王バチが一匹で巣づくりと産卵を始めたころの巣の大きさは小さいものです。私が見かけたのは直径10㎝ぐらいです。これが夏の終わりから秋にかけては、直径30~50㎝にもなっています。その中には働きハチが数百匹もいるようです。絵本の「クマのプ~さん」に描かれていましたね。ハチの集団に追われて逃げるプ~さんの姿が。一匹のスズメバチが異変を感じたとき、巣を守るために仲間に伝える手段が、そのハチが出す臭いだそうです。その臭いを受け取った数百匹のハチが攻撃的なるのです。
巣が大きくなると同時に巣の中の幼虫の数も増えてきます。このときエサとなる蛾や蝶の幼虫が少なくなる季節と重なると、青虫を捕える仕事ができない働き蜂がイライラとさらに攻撃性を増すとかと言う話もあります。そこで昆虫(ハチ)生態学者から注意ですが、スズメバチが出す危険信号の臭いの質と似ている臭いが、私たちの生活の中にもあるようです。整髪料や化粧水などが混じり合いその臭いがスズメバチの攻撃性を刺激することもあるようだと。
スズメバチに挑んだ薪割り爺さんの若かりし頃の話
仲良しにしている隣の方が、屋根のペンキ塗りを業者に依頼をしたら断わられたと言うのです。その理由は二階の屋根の下に大きなスズメバチの巣があるからだと。私にとってくれないかとも聞こえてくるのです。巣を丸ごと取ってみたいという気持ちも湧いてきました。
巣が作られている場所を良く見て考えました。防護をすれば可能です。スキー用具を全て身に着けさらに、大きな透明のビニール袋を頭からかぶり、隙間からスズメバチが顔に入ってこないようにしながらも、呼吸困難にならないように工夫をしました。両手に殺虫剤のスプレー缶を持ちました。巣に刺激を与えないように大きなビニール袋に巣を入れてから、巣の上部の付け根を袋で閉じる作戦でしたが、手が巣にぶつかってしまいました。巣の中いたスズメバチが飛び出し、巣から2㍍ほど離れたところで、私が敵だと気づき、顔を目がけて体当たりをしてきました。その数を数えるとか観察するとかできないものすごい数のスズメバチが向かってきました。その中の一匹をしっかり見ることができました。顔の4~50㌢前でスズメバチが体を湾曲にしました。頭を前にして向かってきたかと思うと、お尻から針を出し突撃してきたのです。針がとても大きき見えた事を記憶しています。それに対してスプレー缶から殺虫剤を噴霧しました。スズメバチは空中へ飛び去りました。(蚊を取る殺虫剤でスズメバチは死にません。あのころはスズメバチ専用の殺虫剤は手に入りませんでした)巣を袋にいれて口をしっかり結び、屋根から降りてきました。いったん空中に逃げたスズメバチが、巣が有った場所に次から次と戻ってきていました。数日後にはその場所に一匹のスズメバチもいなくなり、無事に屋根のペンキ塗りも終わりました。袋の中の巣からさらに数十匹のスズメバチが出てきて袋の中で息絶えました。この話が中学校の理科の先生の耳に入り、教材となりました。
今度はクロスズメバチの話
大学生の室内スポーツクラブの選手と、野外トレーニングと称して山の尾根道でウオーキングをしました。20名ほどが縦一列になって細尾根に差し掛かった時です。最後尾で「痛っ いたっ 痛い」と言う叫び声が先頭の私に聞こえてきました。髪の毛に潜り込んだハチに頭を刺されたようでした。
・小学生の自然クラブと山へ登るコースが決まりました。経験豊富なスタッフが、安全度や危険な場所がないかなど十分な下見をおこなった後の当日の出来事です。川沿いの林道をぶらぶら歩きながら登山口に到着です。ここからは登山という基本ルールに従って、縦一列のところどころにスタッフが入り歩き出しました。沢の源流場から離れて階段を上り始めました。先頭は階段を登り切り山道を歩きだしていました。最後尾の数人の足元からクロスズメバチが出てきたのです。
2例とも医者にみてもらい、異常がみられないことが確認でき、ホットしました。
*クロスズメバチは、土の中に巣を作ります。巣が見えません。ハチの出入りが活発でなければ、なかなか気づくことはできない事の様です。
*巣の上の表土をドンドンと大勢の人の歩く刺激で、クロスズメバチは攻撃を始めたものと考えられます。
キイロスズメバチに手をかまれた話(刺されたのではないです)
フイルムカメラ(デジカメが無い時代)で、蜂の撮影のときです。二ホンミツバチが樹木の洞の中に巣を作って活発に活動をしていました。地上からの高さは1、7㍍位で、撮影は三脚を伸ばしカメラを取り付け、シャッターを押すエアーレリーズ(ゴム球を押すと空気がピストンを押し下げてシャッターが切れる仕組み)のゴムホースを長くして2㍍ほど離れました。キイロスズメバチが二ホンミツバチにやられてしまう様子を撮るのが撮影目的です。
やってきましたキイロスズメバチが。二ホンミツバチたちは巣の出入り口に集まって、羽音を出しています。二ホンミツバチたちはキイロスズメバチを覆い包み、温度を上昇させスズメバチをやっつけるという話しを写真にしたかったのです。スズメバチはなかなか巣の出入り口に静止しません。その周りをブンブンと単独で飛び回っています。二ホンミツバチの集団の中から、一匹が飛び出しました。その二ホンミツバチは空中でキイロスズメバチに捕えられて、食いちぎられ、肉団子にされて持ち去られました。そんなキイロスズメバチが、私の左手に止まりました。ドキドキしながら見ていると、親指と人差し指の間をかじり始めました。私の手の肉を肉団子にしようとしています。噛み切れずに飛び去って行きました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?