2021年9月9日
雨で湿っぽくちょっぴり寒い日です。薪ストーブに火を入れました。一時間もすると室内の
空気感がとても心地よくなりました。燃やした薪はケヤキを割って2年間乾燥させたものです。湿度の高い日が続いたにもかかわらず良く燃えています。
「味噌汁」
家族全員が藁葺き屋根の家の二階に寝ていましたが、私は一階の暗い北側の部屋で寝ていました。板で作られていた部屋の引き戸を全部締め切らずに、少し隙間を残して寝ていました。朝食は「姉さん」と呼んでいた兄嫁が毎日早起きをして作ってくれました。その朝食の準備に気づいて目を覚ませば学校に遅れることはないからです。目覚まし時計などの無い時代です。自分で起きて学校に間に合うように村道を歩く毎日でした。
特に目覚めの悪い日でした。姉さんのまな板をたたく音にも、水音にも気づくことが無く眠っていたようですが、鼻に感ずるもので目が覚めました。ぼんやりと目を開けると板戸の隙間から、味噌汁の香りが届き、目には東からの光に味噌汁の湯気が立ちのぼっていました。淡い白色の味噌汁の湯気と、シルエットの姉さんの立ち姿はとても美しい情景として60年たった今も鮮明によみがえってきます。
やっぱり学校に遅れそうです。今日は遅れを取り戻すために近道をすることにしました。流し場の勝手口から東に出ました。その瞬間、目に飛び込んで来た美しさに、学校に遅れることはすっかり忘れてしまいました。曲がりくねって重なり合った柿木の枝に、初雪が5~6㎝積もっていました。ふんわりふんわりと真綿の様な雪が、柿木の上の上の空から次から次へと途切れもなく、降り落ちてきていました。さらにその上に太陽と思われる明るい輪が広がっていました。モノトーンの美しい世界でした。こんな原体験が私のモノクロ写真に影響しているのかなと思うこともあります。
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