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脳波の記録方法について

神経・生理心理学 レポート課題S評価


脳波の記録は電極を用いて測定される。低周波数の脳波成分を対象にした研究では、0.5Hz未満の緩やかな電位の記録に適している銀-塩化銀の電極が推奨される。使用の際、他の材質の金属を同時に用いてしまうと、材質の違いにより電気的なシフトが生じ、緩やかなシフトが脳波に混入してしまい正常な脳波が測定されない。そのため、銀電極を銀-塩化銀電極に変換する処理(エージング)が必要な場合もある。

電極はペーストと呼ばれる電極糊・電極ゲルを用いて頭皮に固定するが、銀―塩化銀電極を使用した場合でも、塩化イオンが少量しか含まれていないペーストでは電位のドリフトが生じてしまう。緩やかな脳波成分を記録する際は、銀―塩化銀電極と塩化イオンが含まれるペーストを使用することが推奨されている。

電極を固定する際は、抵抗を減らすために頭皮の脂肪や汚れをアルコール綿でしっかり取り除き、髪を流れに逆らわずにしっかりかき分け、電極を頭皮に付けることが重要である。しっかり分けなかった場合、測定中に髪が立ってきて電極が浮いてしまったり、電極が髪の毛についてしまうなど、波形が綺麗に計測できなくなってしまう。

睡眠記録などを測定する場合は、電極を長時間装着したままの状態となるため、電極が外れないように頭部に固定する必要がある。その方法としては、粘着力が強いコロジオンを用いて電極を固定する方法や、ペーストを用いて電極を頭皮に付けた後、ゴムバンドやネット包帯で固定する方法、電極が装着された電極帽やセンサーネットを被るなどの方法がある。

電極装着の場所は、研究者間のデータを統一するため、国際的に統一されている「10-20法」が用いられる。この方法は、頭蓋にある鼻根、後頭結節、左右の耳介前点の4点の目印に基づいて配置が決定される。まず、左右の耳介前点を線で結び、あらかじめ中点を決めておく。その中点を通るように鼻根と後頭結節を線で結び、交わった点を頭蓋頂点(Cz)とする。これらの目印を基に、鼻根-後頭結節、左右の耳介前点、そしてCzを中心にした外周線を10%もしくは20%間隔に分けていき、最後に左右の耳たぶの前表面をA1,A2とし、それぞれの点に電極を装着していく。脳波は左右差も重要な所見となるため、できるだけ左右対称になるように注意する。

10-20法の他、より多くの電極を装着し空間分解能を高めた「10%法」、さらに拡張した「5%法」などの配置法もあるが、他の配置法を使用する際は、10-20法との関連付けを行わなければならない。

脳波は探査電極と基準電極の2つの電極から記録された電位の差を示しているため、基準電極の設置場所によっては波形が変化する。例えば、耳たぶは側頭部の脳波、鼻尖は前頭前部の脳波の振り幅が小さくなるため、基準電極の選択は、先行研究との比較を考慮して選定される。また、デジタル脳波計では再基準化が可能であり、基準電極になりうる場所に電極を設置しておき、目的に合わせてオフラインで再基準化する方法も用いられている。

この他、平均基準を推奨する研究者もいる。平均基準を用いるには、20部位以上もしくは32部位の電極を使用し、それらの電極が頭部に均一に装着されていなければならない。このように設置された場合、複数の部位から測定されたある時点での電位を平均すると、値が0に近づくという仮定に基づいており、脳波記録後にオフラインで再計算することができる。

現在では、256部位の脳波を高密度に計測する方法も使用されており、スポンジに覆われた電極を電解液に浸した後、電極が張り巡らされたネットを被るだけで装着が完了となるため、これまで困難だった幼児を対象にした高密度脳波計測が可能となった。

 

参考文献

脳波計の電極の意味や脳波検査の手順について
脳波判読のための基礎★: 脳波の記録方法
看護roo!脳波検査(EEG)|脳・神経系の検査

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