第67回全日本学生本因坊決定戦 自戦記

こんにちは。笠原悠暉と申します。
悔しすぎて書くかどうかも悩んだのですが、学生本因坊戦に出場させていただいたので、それについて感想を記そうと思います。


まえがき

最初に言い訳めいたことを言うのですが、自分はネット対局より対面対局で強さを発揮できるタイプだと思っています。
ちなみにこれは余談なんですけど、自分が唯一個人で全国優勝したのはネット対局の最強位戦です。

閑話休題。ベスト4までは基本的にネット対局、60分切れ負けで行われるこの全国大会とは非常に相性が悪く、2年前は1回戦は不戦勝だったものの2回戦で負け、昨年は1回戦で川口くんに負けているので、なんと対局をして勝ったことがありません!!!まずい!!!
「この大会はこれまで運悪かったし今年こそは収束してくれ!!!」と思っていました。
また、これが学生大会の最後の出場となる可能性もあるため、本当に優勝したい!!数日前に組み合わせが発表されます。

(対局結果が載っていないトーナメント表の画像を持っていなかったため、こちらのリンクをご参照くださいm(__)m)

自分が勝ち進んだ場合、2回戦から決勝までずっと個人全国優勝経験者と当たりそう。まずい!!!
一応僕も優勝したことはありますが、当たりそうな方々(結果的にそうなりました)は全員複数回優勝経験がある。しかもほとんどが、学生大会だけでなく一般の全国大会で優勝経験をされている方です。まずい!!!

とはいえ、実力的に自分が下か?と言われればそれはどうかわからない。この人たちを倒して優勝すれば、「このメンバー相手に優勝できた!!!」ってすごく喜べそうですね。
最低でも東京で行われる対面決勝に進めるベスト4まで勝ち残りたい。強い同世代と対面で2局真剣勝負できるのは貴重な機会ですしね。

というわけで、さっそく対局を振り返っていきたいと思います。棋譜の総譜は載せませんが、上の学生連盟のHPから閲覧できますので、よろしければそちらをご覧ください!

1回戦

1回戦の相手は中国地区代表の森康太さん。小5で初めて小学校の全国大会に出場した時に当たった相手だと思っていました。調べてみたら当たっていませんでした(同じ枠ではありました)。

碁の内容としては、Japanese beautiful 手筋  が炸裂し、序盤で大きなリードを奪うことに成功します。押し切り方はいつも通り雑ではあるものの、そのまま中押し勝ち。
早い進行であったため、死の2局目、3局目に向けてある程度体力を温存することができました。

2回戦

2回戦の相手は関東地区代表の林隆羽さん。中1の全国大会の準決勝で対戦し、大差で敗れました。合計5回全国大会で優勝されているそうで、大変な難敵です。


この切りが成立するかどうかは非常に大きな問題。右下の進行もここをにらみながらのものです。

僕の黒番。
序盤から見慣れない進行になります。別によくある布石が打てないわけではないのですが、なぜか毎局序盤から茨の道を歩んでいるような気がします。新型は結果的にほぼ互角になりましたが、進行が進んで、この切りが成立する配置(黒から1~3個コウ立てが存在する状態)になると黒が打ちやすいようです。


コウ争いをしていたが、そんなことより9が急所だったよう。

1枚目の局面。ここで2枚目の9にコスむか、右上のコウ材を使うか、右上にしても内と外どちらから切るか、非常に悩みました。
実戦はコウを争って、コウに勝つことになればはっきり黒が優勢となったようですが、2枚目の1,3,4,5,6,8は全て9にコスむべきだったようです。大きいことは分かっていましたが、真ん中や隅の白が取られる具合があるので、黒に打つ権利が残るだろうと思って軽視していた面がありました。たまたま9に回れる結果となったのは幸運でした。

ここからは終盤の入り口まで盤面15目程度のリードを堅持し、結果は半目勝ち。あれ??????
対局中は気づいていませんでしたが、終盤の入り口で相場と思って打った進行で7目程度損していた模様。ひっっっっどい!!!
ヨセも難しく、対局中は時間に追われていたこともあり形勢もずっとよく分かっていなかったため、最後に半目残ったのは運が良かったとしか言いようがありません。この運量ならば3回戦以降もいい結果が出ることでしょう。


3回戦

3回戦の相手は永遠のライバル、森田拳くん。前述の小5の全国大会のベスト16で対戦し、そこではなんとか勝って準優勝に弾みをつけることができました。
その後、同じ関西地区在住なこともあり、プロ試験や大会などで嫌というほど当たっています。お互いアマ囲碁界屈指の武闘派・乱戦派であるため、すぐに盤上で大喧嘩が始まります。一番疲れる相手なので本当に嫌なのですが、実際一番打っていて楽しい相手なのでなんとも言えません笑

対戦成績はほぼ五分でしょうか。この大会の関西予選でも当たっており、そこでも意味不明な殴り合いが起きましたがなんとか勝つことができました。なので、今回もそれを再現するだけです。


1・3が用意のコンビネーション。優勢を拡大。

僕の黒番。この2人の対局だとコミなんて関係ない戦いが続くため、0.5手多く打てる黒番がはっきり有利ですね()
またもや各隅で見たことがないような形に。左上は大ゲイマジマリから派生する形で互角ですが、その後右上で白が意味不明な半手パスをしたため、黒が打ちやすい形勢になります。
左下には今すぐに厳しい手がないため攻めを中断し、気になっていた右上に手をつけます。1のツケには白は2とサガりますが、この時に3が狙っていた手。ザ見合いという感じの手ですね。着実に地を得しながらの攻めなのですごく気持ちいいところです。


名物「やりすぎ」

ここまでの黒の打ちまわしが本当に素晴らしく、1枚目の時点ではっきり黒が優勢。評価値で言うと黒97%、盤面15目は固いという感じですね。ここからは平和に打っていて勝てる差がついているようです。
ただ、対局中はどの程度の優勢なのか分かっておらず、1から5と厳しく出切って決めに行く方針に。形も決まるしこれ自体は悪くありません。
しかし、6と想定していなかった反撃を食らいます。上辺白は危ないですが、右上の黒の形も弱いためそこを強調した手ですね。
黒はこの手に怒り心頭。お前は自分の立場を分かっているのか??とコウ付きの上辺を取りに行く判断をします。この判断が非常にまずく、形勢は振り出し、成り行きで右上黒と右上白の攻め合いになり、そこでも悪手を打ち、右上を白が取る(↓を参照)こととなっては形勢ははっきりと白に傾きます。
どうやっても負けない碁を負けにするのは逆に才能かもしれません。


まだ勝負圏内の中必死の粘り

右上が取られて大損はしましたが、左下の白を取れれば黒の勝ちですし、取れなくても周辺次第では負けと確定したわけではない、という状況。
取れないことが明白になり、地合い勝負を意識することとなります。
2枚目の局面、左上白との連絡を防ぐために黒から1手何か打つ必要がありますが、1と奇抜な手を打ちました。後にアテを打てることになるので、凡庸にノビるよりは働いていそうです。白はこの手に応対しても後手を引くor損をするため、実戦のように手抜きが冷静ですね。


1,2と技の飛ばし合い。
18までとなれば白の勝ちが確定したようだ。

中央で黒が働いたこともあり、1枚目の時点では白が良いながらもヨセ勝負の雰囲気が漂っています。
お互い残りの持ち時間が少ない中、ここで1は中央をワリコミで切断する手を狙って地を得しようとする手で、普通ならかなりの好手になるところでした。
しかしながら、ノータイムで2とツケ返してきたのがそれを上回る強手でした。全く想定しておらずこんなに怖いところでこの対応をできるのはさすがとしか言いようがありません。実戦は2枚目のように進みましたが、18までなら白勝ちが確定。黒は7や11,13で他の手を選ぶこともできますが、どの図もあまりうまくいかないようです。


先ほどの白2で平凡にブツカった時の一例。この図は半目勝負

先ほどの白2でツケ返さなかった場合、割り込みを防がないといけないこともあり、この図の1のブツカリ、3のカケが普通の対応かと思われます。この図は一例であり、正確には白9は左辺に打った方が1目程度得なようですが、右辺の味が悪いこともあり実戦心理としてはサガることになりそう。自分がツケたときはこのような感じの図を想定していて、対局中は全く分かっていませんでしたが、この図は半目を争う展開になるようです。
普通は大石を取ったらこのような感じの図で安全に勝ちに行きたくなりますが、この甘えた図を打たずに厳しく反撃してきた相手を褒め称えるほかありませんね。

おわりに

ということで、この大会初勝利を挙げることはできましたが、ベスト8で敗退となりました。
全般的に、優勢な碁の勝ち切り方が下手すぎることを痛感しました。こういう部分は一朝一夕には上達しないと思いますが、ここを伸ばすか、他の分野の力でカバーするしかないですね。もともと楽観癖があったのですが、それをしないようにして悲観癖がついてしまっているような気がして、囲碁強くなるのって難しいなぁと改めて思います笑

最後になりましたが、この大会を主催・運営してくださった方々、またここまでこの文章を読んでくださった方々に感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。

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