第17回朝日アマチュア囲碁名人戦 参戦記

どうもお久しぶりです。
今年、朝日名人戦では初めて兵庫県大会で優勝し、全国大会に出場させていただくことができたので、今回はそれを記念して(?)大会に出場した記録を書き記そうかと思います。


まえがき

この大会の兵庫県大会に出場するのは今回が3回目で、過去2回は現プロの中濱さん、何度も学生の全国大会や兵庫県の一般の大会で優勝されている水精さんにそれぞれベスト8で敗れ、層の厚さを毎度実感しておりましたが、今回は幸運にも初優勝を飾ることができ、ウキウキで東京に乗り込みました。

Twitterで、よく自分の「碁の調子が悪い」「体の調子も悪い」「頭も悪い」みたいなことを言っていたように、ここ3年ほど納得の行く碁が全く打てませんでした。囲碁の勉強をそんなにはしていなかったため妥当な結果とは言えますが、知識は増えているし、盤の前に座れば真剣に考えているつもりなのですが、成長が見られない。
そのようにもがき苦しんでいたのですが、今年度に入ってかなり調子が上向き始め、直前にいくつか大会がありましたが、自分なりに納得の行く碁を打てて、結果もついてきていた(4月以降は大会では無敗でした)ので、もしかしたらこの大会もかなりいいところまで行けるんじゃないか?と思っていました。本気で優勝するつもりでいました。



気になるトーナメント表(画像は拝借しました)は上の通り。打ちたい選手はたくさんいらっしゃいますが、(当たりそうかは関係なく)特に意識していたのは、アマチュア囲碁界の星である栗田くんと、学生囲碁界の現環境では敵なしの川口くんでした。この2人には学生大会でひどい目にあっているので、なんとしてもリベンジがしたい。トーナメント表を見ると、自分が勝ち進めばその2人と当たれる可能性がかなり高いと思い、モチベーションが高まります。

ただ、そこまでたどり着くまでに、一つ大きな壁があります。夏冰さんです。昨年度3位で、言うまでもなく優勝候補の一角でしょう。年齢は少し離れていますが、同じ関西地区在住であることもあり、強さは本当によく知っています。また、(勝手に)非常に徳のある人格者であると思っているので、自分が負けたら全力で応援しようと思っていました。冷静沈着で落ち着いた碁を打たれるイメージで、石も心も乱れている僕とは正反対と言っていいでしょう。厳しい戦いであることは間違いないのですが、過去に1局だけお手合わせしたことがあり、その時は僕が1年に1局の名局を打ったのでなんとか奇跡的に勝利しました。それゆえに、僕のことを(実際の実力以上に)過大評価してくださっているかもしれず、そこにチャンスを見いだせたら勝てる可能性はあると思っていました。

ただ、もちろん、夏冰さんに当たるにも、その前の2局を勝たないといけません。対戦する方々は各県の予選を勝ち抜かれた猛者ばかりですので、夏冰さんと対局できるであろう3回戦まで行ける保証も全くないため、とりあえず1局1局目の前の碁に向き合うだけですね。

さて、ここから大会当日を振り返りますが、基本的には僕のnoteでは盤面を深く掘り下げるのは負けた対局のみになります(たまに例外はあるかと思います)。その点ご承知おきくださいm(__)m

1回戦

大会当日。親しい友人の家に泊めてもらったのですが、緊張、興奮から全然ちゃんと寝ることができませんでした。僕は自他共に認める超ロングスリーパーなので、幸先の悪い出だしではありますが、大会で囲碁を打つときに限って異常にアドレナリンが出て元気ということが多いので、平常運転ではありますね。会場でいろんな人と話しながら、高鳴る胸の鼓動を抑えます。

1回戦の相手は岩手代表の熊谷さん。東北はアマチュア囲碁界が活発な地域だと認識していて、特に岩手県は東北の六県対抗戦(?)でよく優勝しているイメージ。そういった地域の代表と初戦から当たるのはなかなか厳しい面もありますが、優勝を目指すためには初戦から強敵と当たって頭の回転を良くするのは逆にいいかもしれません。

ニギリで☨得意☨の黒番を引くことができ、今日の運勢は悪くないと思えました。
これは余談なのですが、僕は現状のコミ6目半では(自分の棋風的に)圧倒的に黒番が有利だと思っていて、7目半でもどちらかというと黒が好きなので、ニギリで白番を引いたときはいつも悲しそうな表情をしています。
ちなみにこれはさらに余談なのですが、僕は大学生になってから学生大会で13敗しています。その13敗全部黒番です。フシギダネ

話を元に戻します。黒番を引けたので最初からエンジンガンガンで気分よく打っていました。気分が良すぎてすぐに打ちすぎの悪手を打ってしまいました。勢い余った打ちすぎを咎められてひどいことになりかけるも、得意分野のわけのわからない戦闘に持ち込むことができ、なんとか勝利することができました。最後の最後までチャンスを求めて粘り強く戦ってこられて、非常に手強かったです。

ともかく初戦突破!!これを5回繰り返せば優勝できますね。

2回戦

2回戦の相手は福岡代表の安東さん。過去に全国大会でベスト4の実績があるようで、こちらも強敵です。
ニギリの結果また黒番。実力が足りない分は運量でカバーします。

碁の内容としては、僕が途中までは3年に1局の名局を打って、感動の手筋で種石を取って勝利が決まりました。自分でも惚れ惚れするような内容だったのですが、ほぼ勝ちが確定してから何度も何度も決め損なって「あーだめだ笑」となっていました。
普段、序盤と中盤の前半で形勢がものすごく悪くなることが多く、後半追い上げみたいな碁しか打っていないため、優勢になってからの収束のさせ方が本当に下手だなと再認識することにはなりましたが、まあまあ満足、といったところでしょうか。

対局後にトーナメント表を見ると、次の対局の相手は予想通り夏冰さんな模様。とりあえず昼ご飯の支給していただいた弁当を食べて落ち着くことにします。

3回戦

昼ご飯は知り合いたちである程度固まって食べていたのですが、僕はたまたま夏冰さんの目の前で食べることになったので、「囲碁では勝てないから盤外で勝負するしかない」とか軽口をたたいていたような気がします。この心構えがダメかもしれませんね笑

談笑していたらすぐ3局目の時間に。盤面の前に座ったとき、自分でも心臓の音が分かるぐらいバグバク鳴っていました。
対局が始まったあと、着手する手も震えていて、ドキドキドキって感じで全然集中できていなかったので、離席して顔を洗いつつ気分転換をすることに。少しは落ち着けて盤面に入り込めました。


当然に見える1が悪手。直前に下辺白を助ける手を打っているため、捨てる発想は全くなかった。

僕の白番です。ニギリ失敗したーーーーってすごく悲しい気分になりました。

とりあえず序盤で見慣れない手を放って見慣れない盤面にはなりましたが、黒の勢力圏内で無理に戦っている感じがあって、若干苦しめの状況。
ノータイムで1と助けましたが、2とハネられてみると、どちらの白も弱く、異様に苦しい感じがあります。AIに1で2とノビる図を示されて目から鱗でした。


何かいい手があるかと思ったが何もない。苦しい。

少し進んでこの局面。下辺の黒は非常に味が悪いため、何かうまい手がありそうと長考に沈みます。この大会は持ち時間が40分/30秒とあまり長くないため、序盤から時間を使っている場合ではないのですが、苦境を脱するために全力で考えます。
結論としては、特にたいした手はないようです。実戦は▲の左にハサミツケたのですが、これがまだ無理な手で苦境をさらに悪化させることに。


森〇拳を彷彿とさせる強襲。

何もしなくても黒がはっきり優勢の局面。
そこでの1のワリコミは本当にびっくりしました。びっくりしすぎて「は???相手いきなり〇田拳になったんだけど」ってボヤきました。
全く想定しておらず、ここの白を取る狙いかと思って、利いてもらえると思って放心状態で6と打ちましたが7と上を止められて「あーひっどい」とさらにメンタルも盤面もおかしくなりました。
結論としては1はかなりの悪手で、6で中央を脱出する手を打っていれば、互角に近い形勢になっていたようです。6にも一応意味はあり、下辺の受け方によって中央の具合が変わる面はあるのですが、急場を逃した手で、ありえない一手と言わざるを得ないでしょう。
この後、白が下辺で生きる図になり、悪いながらもそう大差ではなく、長期戦模様になりますが、自分の方が悲観していた上に先に秒読みに入ったことで無理をして、その無理を的確に咎められ、見るも無残に白石をたくさん回収されることになります。


無駄なあがき

元々白の勢力圏だった左辺が全部黒地になっています。本当に不思議。
お互い秒読みになっているので、「まだあきらめないぞ!!」と言いながら怪しげな1線スベリを連発します。普通に受けていて何事もなく取られているのですが、黒も秒に追われていることもあり左辺が1手ヨセコウになります。押し寄せていたギャラリーも内心大盛り上がりしていたことでしょう。


激戦の跡。勝ち目はなかったようだ。

左辺がコウになったあと、左上もコウになりました。何が起こっているかわからない、目まぐるしいことにはなりましたが、黒の方が石をいっぱい取っていますし、左下に無条件生きはなさそうなので、形勢は全く覆ることがなく黒がいいままでした。無念。相手はきっちり判断ができていたようで、右下のコウ立てに対して左上を2手ヨセコウの状態で解消してきたことがその表れと言えるでしょう。

ということで、結果としては10目半負けとなりました。難しい戦いではありましたが、白の評価値が50%を超えているタイミングは最初の数手しかなく、完敗としか言いようがないでしょう。
しかしながら、自分の側も、悪手は数多く打ったものの、それはただただ実力が足りないだけであり、形勢がはっきり悪い中でも逆転の可能性が高い手を選べているとは思うので、次につながる碁、内容のある碁は打てたかなと前向きにとらえています。

ともかくお相手の夏冰さんが本当に強かったです。結果的にこの大会で優勝されることとなり、うれしい気持ちになりました。準決勝、決勝、またこのあとの大関稔アマ名人との挑戦手合三番勝負、特にその第一局はネット対局「幽玄の間」で配信されているのを拝見しましたが、本当に強い……となりました。

おわりに


というわけで、初めての朝日アマ名人戦の全国大会の舞台は3回戦敗退(ベスト16)で幕を閉じることとなりました!
悔しい気持ちはありますが、本当にチャンスが全くない碁だったため、後悔の気持ちはありません。いい経験になりました。

最後に、この大会を主催してくださった朝日新聞社様、日本棋院様、そしてここまで読んでくださった皆様に感謝を申し上げて、この文章の終わりとさせていただきます。ありがとうございました。

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