花王の罪と勘違い

梅雨を経て暑くなってくると、やはり気にはなる。
それなりのケアも必要だろうと思う。

が、それにしてもやり過ぎではないだろうか。
あるいは日本に住まうというのは、かくもテレビに迎合することかと不安になる。

使ったことがあるかどうかは別にしても、名前くらいはご存じだろう。
リセッシュ、である。

私は、室内向けの消臭剤だと思っていた。
猫を飼うまでは、カーテンやソファなどにシュシュっとやっていたものだ。

が、ここにきてデオドラントとして推してきている。
かなり大々的に、である。

正直なところ辟易している。

香りを纏うというのは、洋服以上にセンスが必要だと私は思う。

ところが朝の通勤で、たとえば乗ってくるオジサン連中が一様に同じにおいを漂わせているのだ。

CMというのは、これほど効果的であったろうか。

ここ最近、私の中に生まれた新しい言葉に「制汗臭」というのがある。
ルビを振るなら「りせっしゅう」だろう。

耐え難いくらいには臭い。
昭和を思わせる、消臭に躍起なタクシーの社内のような。
これを通勤の小一時間ずっと意識させられるのは大変つらい。

トイレの芳香剤を思い浮かべて頂きたい。
ホテルやエステサロンのような場所の、上品な香りのものがある。一方で、スーパーや区役所の押し付けるようなラベンダー臭にむせかえることもあるだろう。臭いの系統で言えば、おそらく後者だ。
考えた方は心底から「良い香りだ」と思っているのだろうか。

臭いについては「個人的な思い入れ」が作用するところも多分ある。
私などは「くっさいなー」などと口にしつつも愛猫のトイレを片付けているときは心穏やかなものだ。
同じく制汗臭を「良いもの」と認識している方には気にならないものなのかもしれない。

あなたは、どちらか。

もし今これを電車の中で読んでいらっしゃるなら、1つ確認する方法がある。

外の景色でも見るふりをして、乗降ドアの窓に鼻を近づけて見て欲しい。

もし微かにでも制汗臭を感じたなら、あなたの感覚は少なくとも私に近いかもしれない。
それほどに浸透しているという事でもあるのだが。

CMというのは恐ろしいものである。