ハサウェイ・ノアという残滓

生まれの不遇から逃れられなかった、かわいそうなひと。
ガンダムの呪縛という点でも富野由悠季さん自身の怨念を背負わされて殉教させられたんじゃないかと思っちゃうくらい。
小説を読んだのは30年くらい前でも、わりに覚えてるもんです。

救いようがなく終わる物語。

小説で読んだ当時と違うように感じたのは映像作品として観たせいなのか、こちらが大人になったからか。もうちょっと社会に抗う意思みたいなものを持っていた気がしたんだけれど、ただ不満を抱えた子どもにされちゃって。
とにかくハサウェイ・ノアが不憫で仕方ない。

本作は小説版と違って、映画版『逆襲のシャア』からつながる物語になっているそうで、むしろ背負っている怨念が深いように思えるところも。

小説版のハサウェイは、好きだった子を誤って殺してしまっている時系列にあるんですが、その子が自分を庇って死んじゃうっていうのが映画版で。
しかも..と、まあ知っている方にはいらない説明ですね。
知らず観るひともいないだろうって気はしますが。

さておき本作で、そのあたりが「シャアの反乱に参加して1機撃墜した」と都合よく帳尻を合わせて流布されていて、たぶん父親の威光が説得力になったりして、先々で口々にそう称えられちゃうわけです。
これ、かなりキツイと思うんだけれども。

高畑勲さんが『火垂るの墓』について、「人は悲惨な目に遭うと人情というものが働かなくなるということを伝える話だ」と説明されていました。
なんかね、同じような心情を感じるところがあるというか。
この映画のハサウェイ・ノアは所在なさげというか、それっぽいことは言いながら、まったく興味なさそうで。
達観とは違って、もっと突き放して見ているような。
もう単純に「こいつ今度こそシャアの側になりたかったんじゃねえの?」と思われないように、ずっと言い訳してるみたいな。

どちらにしても救いようがないまま終わるんでしょうね。
生まれの不遇から逃れられない、かわいそうなハサウェイ・ノアの物語。
べつに思い入れがないひとは、わざわざ観なくていいんじゃないかな。

アムロとシャアで喜んじゃう世代への最後通牒みたいな映画です。

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タイトル画像は「mari_iro2tsukuru」様からお借りしました。
ダバオじゃないけれどフィリピンの夜景ってことで。
もういらっしゃらないのかリンクが見当たらず。
ありがとうございましたm(__)m