生産設備の不具合を発見したときに、使用者にとって重大な不具合である場合には、顧客に知らせた上で、迅速に解決策を提供しなくてはなりません。重大な不具合というのは、使用者に危害を加える可能性や、顧客に損害を発生させる類のものです。顧客現場や設備メーカーでの制作工程、不具合の発見シーンに寄らず、市場へ納品した設備への対策横展開を行うことになります。

電気部品対策

加工ツールの発熱により、部品が焼損する不具合が発見されました。使用者に火傷を負わせる可能性や、煙が発生したことから火事になる危険性がありました。対策としては、加工ツールへの電力回路にサーキットプロテクターを追加することとなりました。20年の渡って販売してきた設備で、市場には1000台以上存在していましたが、全ての設備へ対策することが決定されます。ブランドを掲げる設備メーカーとして当然の処置と考えています。国内顧客向けには、サービスメンバーが現地に赴いて部品取り付けを行いました。海外向けには、サービス代理店へお願いして作業を委託しました。作業費を1台xxxx円と設定して、設備メーカーでコストを負担しました。代理店から作業レポートを得て、請求書を元に海外送金にて支払いが行われました。移設や廃棄になっていて行方不明の設備を、代理店レポートより明確にしながら、開始から3年を要して対策完了することができました。設備メーカーの推進者の胆力は勿論のこと、サービス代理店の実行力や、顧客現場の協力があってのことです。

ソフトウェア対策

検査機の機能開発工程で、過去提供した検査シーケンスをレビューしたところ検査条件違反となる不具合が発見されました。検査条件違反というのは、使用者現場で実行されるべき検査が適切に行われないということで、生産された部品や完成品が市場に流出する可能性があります。限定的な条件での発生で、部品100万個中1個程度の影響度ですが、5年間という長期間存在し続けていた不具合でした。500台を超える設備を対象として、対策横展開を実施します。不具合を顧客に通達することと、修正版ソフトを提供することです。しかし、当時の当社の行動として悪かったことは、通達と修正提供に1ヶ月以上の時間差があったことでした。すべてのユーザーが、売上やコストにダメージを負うことを覚悟して生産を停止すべきか、生産出荷を継続すべきか悩み、市場は混乱しました。異例とはなりますが、使用者の顧客であるセットメーカーに、設備メーカーである当社から説明を行う事態へ発展しました。更に未熟だったのは、修正版ソフトには使用者が適切検査実行を監視できる機能がないことを指摘されて、修正提供のスケジュールは更に伸びることになりました。設備メーカーとしては大きすぎる勉強代を支払うこととなりました。

ソフトウェアの修正という技術的側面に留まらず、顧客生産ロスに対する求償対応が発生します。ロス金額によってはお互いの会社にとって致命傷になり得るので、誠実さだけでは乗り越えられない交渉となります。保険適用することもできますので、設備メーカーは予めリスクを考慮しておく必要があります。

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