当社の回路基板向け生産設備に、カメラアライメント付き金型パンチ(ワークが位置決め移動)があります。その装置でソフト機能要望を受けた時に検討したプロセスを記したいと思います。

要望受付
顧客A「アライメントマークと加工の座標記録ログ」が欲しい。
※アライメントマークは加工基準としてカメラ撮像されるマーク。
顧客B「個別オフセットの自動設定」が欲しい。
※オフセットは金型パンチに与えられる位置パラメーター。設計値からの差異を意味する。一般的にはカメラー金型の中心誤差を吸収するために用いられる。
開発者からは「何のために?」の深掘りが要求されて当然ですが、顧客の側はそれを表現できないケースがあります。例えば、IT化などを上司に指示されたなどがそれにあたります。このような場合は設備メーカー側から、欲求満足と課題解決に貢献する機能提案作成にトライします。

設備課題の振り返り
本設備は、大判(500mm)のシートを把持して動作する機構のため加工精度に不安定性があります、生産機種立ち上げで場所ごとにオフセットを調整する要件があり、立ち上げまでに時間を2h以上要したり、加工位置調整が未熟のまま生産させるミスが発生しやすいです。
顧客ABの要望は、この共通課題から発生していると想定して、当社からの提案仕様というカタチで検討する余地があります。

保有技術の洗い出し
当社の他の設備で実績のある機能や、該当設備で既設の機能を列挙します。それらを組み合わせて開発する機能であれば、ムダ検討のコスト浪費を避けられ、成約した時に開発コストを低額に抑えられることもあります。
A. 生産ログ(マーク座標、サーチ位置)
B. 加工ログ(オフセット値)
C. 測定ログ(※)
D. 自動補正(全体/エリア/個別、選択可)
※既設機能、測定基準マークと同心加工を金型に仕込んだ上で、装置稼働中にカメラサーチにより測定する。
ABCを重ねて評価すると、加工誤差要因の切り分けに寄与できます。Cの値がDの材料となる(Cを複数ファイル選択してオフセット自動調整、DのGUIで適用ピースエリアをサポートする)。Cは既設機能のため、書式がABDに最適でない可能性あり。

ABCDのような素案で顧客意見を再ヒアリングすると、顧客が生産課題に気づいて精査が進むことがあります。また、それぞれの開発コストを算出することができるので、仮に価格がミートしなくても、他のユーザーに展開可能な機能としてディスカウントを行うこともできます。商品の市場価値向上、機能追加によるユーザー満足度、設備販売条件のクリアを同時に達成するかもしれません。

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