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【世界の料理】シュクメルリを作ってみる

ジョージアという国があることを知っている人はどのくらいおられることだろうか。
今の若い世代だと、ああロシアの南のあの国かと思い浮かべることだろうが、私のようなおっさん世代だとグルジアと言わなければハハアあれかと分からない人も多いんじゃ無いかと思う。
なんでも最近国名を変更してジョージアになったということだが、これも面妖な話で、元々グルジアは英語表記だとGeorgiaというようにアメリカのジョージア州の綴りと同じであったはずなのだ。
それは今でも変わらないのだが、はっきりとロシアに反旗を掲げてからは、日本語での「グルジア」というようにアルファベット以外の表音文字による外来語的表記をする国に対しては、ロシア語由来の音であるグルジアと呼ばないよう政府が諸外国に要請することで、日本ではジョージアと呼ばれることになったということだ。
なおアメリカのジョージア州とはなんの関わりもないが、お互いの首都同士が姉妹都市関係になり、あろうことかジョージア国家警備隊とジョージア州兵(英語だと両方ともGeorgia National Guardになる)は相互協力協定を締結したというのだから、冗談みたいな話だ。

さて、ジョージアといったらおっさんが現場で一服するときに飲む奴だと思っている人は置いといて、グルジアといって何を連想するかということになると、あまりネタが出てこないので困る。
まずは独裁者スターリンの出身地であるということと、ゴルバチョフ政権時代に外務大臣をやっていたシュワルナゼの出身地ということくらいかと思う。
シュワルナゼ外相はソ連崩壊後グルジアに戻って大統領になったそうで、東西冷戦を終わらせた偉い人の一人として覚えているのだが、ドイツ統一にも尽力したということでドイツから大変感謝され、ドイツに亡命しませんかというオファーを受けたということもあったらしい。
他にグルジアには何があるんじゃ、大体場所はどこだということになるとなかなかイメージできないのももどかしい。
最近知ったのは、グルジアは独自の文字を持っていて、これが世界で最もかわいい文字の座をビルマ文字と(私の脳内で)競り合っているのだが、ロシア文化圏の中でもわりとロシアに近い方だと思っていたら、想像以上に異世界だったという意外さが楽しい。
今日はそんな国の料理を作ってみた。

牛丼の松屋はシュクメルリを期間限定で復刻

ところで、いきなりなんでそんなマイナーな国の料理を作ろうと思ったかについては、それは本日昼飯を食いに松屋に行ったからだよというところから話をしなければならない。
数年前に松屋ではシュクメルリ定食という白いシチューのような限定メニューを提供して、全国のおっさん諸君から大変な喝采を受けたということを聞いたことがある。
一見ただの白いシチューにご飯とサラダと味噌汁がついているというもので、もっとも松屋は基本的にどのメニューにもおまけに味噌汁がついているので、実質的にメニューの内容としてはシュクメルリの鍋とご飯とサラダというべきか、一見あまりインパクトを感じられない外見であることに反して、大変インパクトのあるレビューを見るに至り、味にうるさいというか味がわかりやすいかどうかにうるさいおっさんどもを唸らせるその味はどんなもんだろうと思ったものだ。
それが本日買い物のついでにたまたま立ち寄った松屋では「シュクメルリ復刻」という文字がオドっていたので、ハハアあれか、あまりに人気だったのでもう一回やってるんだなと思った。
それで、味が薄そうな外見に反しておっさんを唸らせるうまさというのはどんなもんかと思って本日注文してみた次第。

なお脱線するが、手持ちのカネが200円に満たない場合でも松屋ならば幸せを感じる程度にはめしを食うことができる。
それは160円のライスを注文することなのだが、松屋は他の牛丼御三家の吉野家やすき家に勝る点としてテーブル上の調味料が豊富で、中でもバーベキューソースは焼肉のタレみたいなものでそのままめしにかけてもおかずがわりになる。
さらに、松屋では味噌汁がおまけでついてくると前述したが、これは注文がライスのみであっても律儀についてくるらしく、160円で暖かいめしと汁にありつけるというので、松屋の経営理念はセーフティネットのように慈愛に満ちているに違いない。

松屋のシュクメルリ定食

そんなことはどうでもよろしい、なるほど出てきたシュクメルリはホワイトソースのような色をしているにも関わらずうまそうな匂いをバンバン放っていて、それは大量のニンニクによるものだとすぐわかる。
固形燃料の上で煮えたぎるのをスプーンで掬って口に入れると、煮えたぎったのがそのまま入ってきてびっくりし、そのままではとても食えないので固形燃料の火を吹き消してからスプーンで掬ったのをよく覚まして食ってみると、旨みが爆発したような味なのに驚いた。
これはうまい、カレーもご飯にあうがシュクメルリは舌先三寸程度の量でもごはんが無限に食えるだけの実力がある。
うむ、今まで外見だけでナメていたが、つくづく外見だけで物を判断するのは良くない、なるほどおっさんが大喜びする味で間違いないな。
シュワルナゼ外相もこれを食ってたからこそペレストロイカを頑張れたに違いない。

あまりにうまかったので、今度はこれを晩飯で再現してみようと思い立った。
そうなると参考にするのは動画の大使館レシピだ。
これは在日外国公館のシェフが教えてくれるそれぞれの国の代表料理の作り方のチャンネルで、これを再現すると結構海外旅行感が味わえる。
それでジョージア大使の奥さんのお母さんが教えるシュクメルリという動画があったので見てみたら、どうも松屋のシュクメルリとはだいぶ違う。
初めは鶏肉と根菜を煮込んだホワイトシチューにニンニクをしこたまぶち込んだものかと思っていたがさにあらず、鶏肉は味付けせずに蒸し焼きにし、ソースはバターとニンニク、それに大量の牛乳と塩、そして3種類くらいのスパイスで味をつける。
この手の味付けとしては胡椒を使わないのが結構意外だ。
そうして焼いた鶏肉にソースをかけ回して食べるというものらしい。

早速作ってみた本日の晩飯

レシピ通りに作ってみたら、爆裂にうまいんで昼以上にびっくりした。
基本的に味を構成しているのは塩とニンニクとバターと牛乳で、あとはスパイスで調整しているというシンプルなものなのだが、これだけのことでなんでこんなにうまいんだというものが出来上がった。
見知らぬ料理を作っていると、時折こんなものがなんでこんなにうまいんじゃわけわからんがうますぎるぞというようなのに出くわすもので、しかも外見がちょっととぼけているだけに食った時の意外感はものすごいもんだ。
ちょうどメガネで冴えない顔した貧弱な坊やが実は空挺レンジャー過程を終了した猛者だったというようなもんだ。
これは簡単でうまくて、スプーンの1杯でごはんがいくらでも食えるというすばらしい料理だ。
公民館事業で飯盒めしにこれを出したら多分カレーよりも人気が出るのではあるまいか。

そんなわけで、わが家恒例の家にいながら世界旅行、今回はジョージアに舌を伸ばしてみた次第、世界にはまだまだうまいものがいろいろあるに違いないな。

材料はこれだけ
バターでニンニクを炒めるというか揚げるくらいに熱する
肉と玉ねぎは鉄鍋で蒸し焼き
バターで炒めたニンニクに牛乳と塩とスパイスを足してソースにする

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