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おちゃのじかんにきたとら

あらすじ

ティータイムを楽しもうというある一家のもとに突然、腹ぺこなトラが訪ねてくる。最初こそ腰の低いトラだったが、そのうちトラは勝手に冷蔵庫や戸棚をあさり、家中の食べ物を食い尽くしてしまう。


一見すると異様な光景。しかしなんだか楽しそう!

私なら、『ちょっとちょっと!人んちの食料を根こそぎ食べちゃうなんて、ちょっと図々しすぎるのではないかい?』と思わずツッコミたくなってしまうのだが...。この家の住人たちはトラの突然の訪問を疑問に思う様子など1ミリたりともないのである。そればかりか、娘のソフィーに関しては自分の分のおやつまでも快くトラに与え、なんだかとっても楽しそうなのだ。

その様子に、最初は『ひぇー。トラが家に突然押しかけてきて家中のもの根こそぎ食べられるなんてたまったもんじゃないぜ。』と好き勝手にモヤモヤを撒き散らかしていた私も、なんだか胸がほかほかし始めているではないか。

いよいよ食料が尽きたところで、何事もなかったかのように和やかにトラとお別れをする一家。そう、お茶のじかんのアレコレが何も無かったかのようにー。


外の様子を説明する描写、一気に現実世界へ。

食料が尽き果ててしまった一家はお父さんの提案のもとレストランで外食をすることに。

「そとはもうくらくなっていてがいとうがともり、じどうしゃははライトをつけていました。」

この一文によって先程のトラ騒動から一転、読者はシュシュシュッと現実に引き戻されることになる。

現実とファンタジーが一冊の中に共存しているこの異様さこそが、この作品に引き込まれてしまう魅力のひとつであり絵本というものの醍醐味なのではないだろうか。「おちゃのじかんにきたとら」は、絵本の楽しみ方を再認識させてくれた、いわば私の教科書のような絵本なのである。


おちゃのじかんにきたとら

作 ジュディス・カー

訳 晴海 耕平




今後、さまざまな絵本について私なりのことばでつらつらとしたためていけたらと思いますのでどうか温かい目でご覧いただけますと幸いです!

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