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資源・エネルギー4(非鉄金属)

今回は、鉄以外の金属を取り上げます。
重金属:銅、鉛
軽金属:ボーキサイト(アルミニウム)、マグネシウム
貴金属:金、銀
大部分のデータはこちらからいただきました。
マグネシウムだけはデータはこちらから。

重金属

重金属である銅と鉛の生産国をみていきます。

銅は電気伝導度が高いため、電線に使われます。工業化、都市化にとって電気網の整備は最重要事項ですね。
日本での銅のイメージは、足尾銅山鉱毒事件ではないでしょうか。鉱毒が流れ出し大規模な環境汚染を引き起こしました。

チリの産出量が多くを占めています。チリでは露天掘りで銅が採掘されています。露天掘りでは鉱毒が駄々洩れのような気がしますが、環境汚染は大丈夫なのでしょうか。実はあまり心配はありません。それはチリの気候に関係しています。

チリの銅山といえば北部にあるチュキカマタ銅山が有名です。ここでは大規模な露天掘りが行われています。

チュキカマタ銅山(Wikipediaより)

チュキカマタに近いチリ北部の港町、イキケの気候グラフを見てみると、年間を通してほとんど雨が降りません。これなら、鉱毒が流れ出ることもありませんね。


鉛は鉛蓄電池の電極としての需要が高い金属です。いわゆる車のバッテリーですね。

自動車産業には欠かせない資源ですが、当然日本はほぼすべてを輸入に頼っています。日本はアメリカ、オーストラリアからそのほとんどを輸入しています。

JOGMECより引用

鉛の産出量としては中国が圧倒的です。

軽金属


アルミニウムの原料であるボーキサイト、マグネシウムです。

ボーキサイト(アルミニウム)

アルミニウムは、自動車や航空機、スマホやジュースの缶などさまざまなところで使われています。
その原料であるボーキサイトは熱帯に多く分布します。熱帯では雨が多いので土壌が溶脱し水に溶けにくい無機質が残ります。そして高温でもあるためラトソルが凝集してラテライトとなります。この中には酸化した無機質が多く含まれるので赤色土となります。

こちらより引用

ラテライトのうち、酸化アルミニウムを多く含むものをボーキサイトといいます。アルミニウムの原料になるのがボーキサイトです。このような理由でボーキサイトは主に熱帯地域に分布しています。
主なボーキサイトの産出国は以下のとおりです。
オーストラリア、中国、ギニアで世界のほとんどを占めています。

1位のオーストラリア、3位のギニアはわかりますが、中国は熱帯ではないのにどうしてこんなに産出量が多いのでしょうか。
こちらの論文によると、中国中央部の山西省、河南省、貴州省、広西チワン族自治区に鉱山があり、この4地域で中国のボーキサイト生産の90%を占めています。
これは私の推測ですが、かつて長い間ユーラシア大陸は低緯度にあったため、かつて熱帯地域であった名残でボーキサイトが多いのではないでしょうか。大陸移動の様子はこちらで見られます。

ところでボーキサイトからアルミニウムはどのようにして作られるのでしょうか。
<ボーキサイト→アルミナ(Al2O3)>
原料であるボーキサイトを、苛性ソーダ液で溶かしてアルミン酸ソーダ液をつくり、そこからアルミナ分を抽出します。

<アルミナアルミニウム(Al)>
アルミナを溶融氷晶石の中で電気分解することによりアルミニウム地金を製造します。

<アルミニウム(地金)製品素材>
地金を原材料として圧延・押出・鍛造・鋳造などの加工を行い、いろいろな形の製品素材に成形する工程です。

さてここで重要な工程はどこでしょうか。そうです、アルミナアルミニウム(アルミニウム地金)をつくる工程です。なぜならこの工程では大量の電気を必要とするからです。そのため、大規模な水力発電で安価な電力を獲得できる中国、ロシア、カナダでの生産量が多くなっています。

こちらより引用

マグネシウム

マグネシウムは、おもにアルミニウム合金への添加材として利用されることが多いです。
かつては米国とロシアで生産のほとんどを担っていましたが、2000年以降両国の生産は中国に取って代わり、現在は中国の一強です。

マグネシウムの輸出国はどうなっているのでしょうか。データはこちらからいただきました。
いつもと違い、中国が世界の輸出量でも最大となっています。自国消費しても有り余っているのですね。

3位にイスラエルが入っているのが特徴的です。マグネシウムの精錬は電解法と熱還元法がありますが、昔は電解法が主流でした。しかし、中国で熱還元法による精錬が始まってからは中国一強となり、電解法で生産している会社はイスラエルとアメリカに1社ずつ残っているのみとなりました。

貴金属

次は貴金属です。メダルの色の2つです。銅だけは重金属ですね。生産量が少ないほど上位のメダルになっています。

金と言えばアクセサリーですね。その他にも投資対象としての用途が多いです。しかし、産業用途に使われることも少なくありません。電子機器の部品やメッキ、歯科治療の金歯にも使われますね。
ちなみに東京オリンピックのメダルは「都市鉱山」を利用するという考えで電子機器などからのリサイクルをもとに作られました。

金の主な産出国は中国、オーストラリア、ロシアとなっています。
では輸出国はどうなっているでしょうか。
データはこちらからいただきました。
さて結果はどうでしょう?

スイス?ドイツ?日本?
最初は間違いかと思いました。
スイスの都市チューリッヒは古くから金市場の中心でした。そのため世界の金精製企業大手4社がスイスに拠点を置き、世界の金の3分の2を精製しています。そのためスイスは世界最大の金輸入国であり、同時に輸出国でもあります。
日本の場合はどうでしょうか。金は、マネーの集まるところに引き寄せられるという性質があります。日本は金を積極的に輸出しているということではなく、日本にある金が、マネーのある海外に投資目的で流出していると見る方が正しいのかもしれません。工業用途としても重要な希少な金属を、国家戦略として守る必要があるのですが、そういった戦略は中国の方が上手ですね。

銀も金同様、装飾品として使われますが、一番多い用途は工業用です。特に半導体での需要が大部分を占めます。今はスマホで気軽にデジタル写真を撮りますが、かつてはカメラのフィルムにも多く使われていました。

さて、産地としてはメキシコが一番です。ペルー、チリなど中南米が多いですね。

SASプログラム

今回は、マクロを使って、Excelの各シートを一気に読み込んで、グラフ化しました。プログラムはなるべく冗長性をなくすことでメンテナンスがしやすくなります。

まとめ

重金属、軽金属、貴金属の順にみてきました。
年によって、順位の入れ替えはありますが、それぞれ特徴的な国を覚えておきましょう。
鉛、マグネシウムなど中国一強のものは、「中国」と覚えておき、それ以外は特徴的な国、銅であればチリ、ボーキサイトであればオーストラリア・ギニア、金はオーストラリア・ロシア、でも精製金はスイス、銀はメキシコなど中南米、と言った具合です。グラフから対応する金属を探すときは、マグネシウムのイスラエルも試験対策としては覚えておくといいかもしれませんね。


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