今年の桜の話

私の好きな花ランキングを発表する。同率1位で桃、桜、梅だ。
これらの中で、一番メジャーなのは桜だろう。
私も桃が好きな理由は「名前の由来だから」であって実物は数えるほどしか見たことがないし、梅は気がついたら咲いて気がついたら散ってるし。

梅が名前の由来の人に訴えられそうなので、本題の桜の話をしよう。
私が今年感動した桜ランキングだ。
こっちも同率1位なのでもうランキング形式にする必要ないじゃん。感動を比べるな。音楽コンクール反対だった高校時代の部活の顧問みたいなこと言った。


①地元の桜。
私の最寄り駅は、「桜」が名前に入っているだけあって、駅前の桜並木が物凄い。
前後の駅から続いているから、ゆうに1kmを超える距離で桜が生え続けている。
なので桜が咲くと、私は毎年1駅先、もしくは1駅後で降りて、家まで桜の下を歩くという行事を続けている。

ま〜あ綺麗なんだわこれが。突然の語彙の消失。
アスファルトの隣に生えている桜の下を、いつも通りに歩く地元民たち。
観光地の桜もいいけど、このくらい飾らない、日常と共にある桜が、私は好きだ。
きっと来年になって、もういちど花が咲いたら、私はその日常の喜びを全身で受け止めるのだろう、と自宅の窓から満開の桜を眺めながら思ったりした。
きっと目と鼻を花粉に殴られるけど。


②社協の桜。
※社協=新宿区の施設。私のサークルの主な練習場所。
社協の目の前には、謎の団欒場所がある。行ったことがある人は想像できると思うが、寂れた店の目の前に、何個かのベンチ、それに覆い被さる木。
この木が桜だということを、私は春が来て初めて気がついた。

桜は、物凄い力を持っている花だとつくづく思う。
いつも素通りしている謎の空間が、一気にピンク色のフィルターがかかったみたいに輝いて見えたから。
来年もこの景色を見るために、この時期に社協に通う生活をしようかな、と無鉄砲な考えを抱くくらい、春を纏った戸山は美しかった。


③国立の桜。
初めて国立の桜と対峙したのは、夜が更け始めた時だった。
提灯に照らされた一面の薄ピンクを見て、胸が高鳴ったのを覚えている。
いや、嘘。あれは桜のせいじゃないな。
その日、私は大好きな人達とのお泊まり会を控えていた。
あの時のどきどきは、これから訪れる幸せな時間に対するものだったのだろう。

私は持参した写ルンです(若干茶化された)で夜桜に向けてシャッターを切りながら、今この瞬間の自分たちを丸ごと撮ってもらえたらいいのに、なんて考えていた。
それを現実化するとなると私たちの後ろに無言でカメラを構え続ける知らない人をつけて歩くことになるから秒で断るけど。なんなんだこの茶番。綺麗にまとめます。

真面目な話、自分の目で見たものだけが、思い出と呼べるのではないだろうか。
その証拠に、私の脳裏には、桜よりもその下で笑う大好きな人達の顔が色濃く残っている。

この桜にはもう一つエピソードがある。
翌朝、一同で眠い目を擦りながら、モーニングを提供しているカフェに寄った時の話。
案内された窓際の席、大きく抜かれた窓の外には、一面のピンク色があった。
私はそれを数秒間目に焼き付けると、迷わず桜に背を向けて座った。

私にとっては、青空の下の満開の桜より、寝ぼけ眼で食パンと格闘している友達を、目に焼き付けておきたかったから。

ただの愛の告白みたいになってしまいました。すみません。
でも、大好きな人にはちゃんと大好きって伝えることが大事って改めて思ったから書き残す。


この文章は3月末に書いて、一旦ボツにしたものだ。
その証拠に、部屋から見える桜は、もう葉桜になりつつある。
私の背骨も、長期間の引きこもり生活によってそろそろ溶けそうだし。

けれど、この文章の言葉達は、3月の思い出を、満開の桜を散らすことなく鮮やかに残してくれていた。
誰かの頭の中でも、桜がもう一度咲き誇ることを願って、私はこの文章をインターネットの海に投げようと思う。


来年はもっと、大好きな人と色んな場所で桜を見れますように。

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