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日々の小さな蓄積の大きな価値

葛布の帯onlineを運営して丸2年、3年目に入った。

私自身が、札幌で葛の糸づくりや布織りを一人でやってきて痛感したのが、

「わからないことがあった時にすぐに聞ける人が身近にいること」や

「『それ』に取り組んでいる人が身近にいて、その様子に触れる機会が日常的にあること」

が、「ない」ことだった。

私は基本的に孤独が好きなので、それはそれで、一人で一人の世界を楽しんできたので良かったと言えば良かったが、

もしも身近に「それら」があったら、きっともっとずっと早くコツを掴んだり技術も上がったりして、今頃もっとすごいことになっていたかもしれないと思う(妄想)。

制作を軸にしていると、教室運営などできるはずもなく、かといって、短期間の講座的なものも、葛の取れる季節がとても短い札幌では、ほぼ無理だ。でも、インターネットを介してならできるかもしれない、と思ったのが事の発端で、その背景には「新型コロナウィルスの蔓延によるインターネットを介したコミュニケーション・コミュニティづくりが急速に身近になった」ことがある。
これなら私にもできるかもしれない。だからやってみた。結果、これがすごく良かった。

形は、やりながら整えて、メンバーも出たり入ったりしながらも少しずつ増えて、今、継続的に葛の糸づくりや布織りに取り組む人、それに興味を持ってくれる人、応援してくれる人が集まり、全国から葛布に取り組む「リアルタイムな」情報の集まる場となった。

私は私で、自分のできる範囲で日常を配信する。

受け取る側(参加者)も、自分のライフスタイルの中で、無理のない形で情報を受け取り、自分の「葛の糸、布づくり」に反映させていく。時にそれをグループに投稿して、皆からのフィードバックを受け取る。

まさに、「一人一人が自分の都合の良いように利用できる場、自分にとって無理のない形で葛布づくりを続けられる場」として機能するように、少しずつ、なってきているのである。

私の配信は基本的に月〜金毎日で、「取り繕わない日常」をお伝えすることを心がけている。それに加えて、葛布に取り組む方々の、一人一人の取り組みが、時々投稿されて、これがまた、レベルが高い。

技術的に高いかどうかは人それぞれに段階があって、初めて取り組む人、数年取り組んできた人、色々で、ここで言う「レベル」は、そういうことではなくて、「思考の具現である布」という意味でのレベルということです。みなさん、きちんと自分の頭と体を通して考え、手を動かしていることが伝わってくる。

そうした「葛の布」に関する取り組みの各地・各人からの情報がリアルタイムで集まる、インターネット上のコミュニティとしては、全国的にみてもほぼ唯一の場となっていると考えられるが、どうだろう。

糸づくりや布織りは、とにかく日々の積み重ねが必要で時間がかかるので、ともすれば日常のことに流されて時間を取れず、興味があってもやらないとやらない時間が長くなり、なかなか進まない。それが過ぎるとやることを止めてしまうかもしれない。

でも、「それに取り組んでいる人の気配を日常的に感じることができる」ことと「そこに日々の取り組みの情報の蓄積がある」ことが、「糸づくりや布造りをなんとなく日常に取り込む」ことに貢献し、結果、技術も少しずつ上がる。何しろ、日々の取り組みの小さなことは小さなことだが、それが集まり蓄積すると、とんでもなく貴重で膨大な価値となるわけで、このことは、ご参加の方々からのご感想としても寄せられるので、私一人がそう思っている訳ではないことが証明されてとても嬉しい。

日々の小さな蓄積が大きな価値となるのは、

糸づくり・布づくりにも似ている。

【雪草乃記】vol.26 2022.12.3
大体毎週土曜日配信

いただいたサポートは制作費として大切に使わせていただきます。 https://kuzunonuno.com