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砥草


トクサ

水辺の湿地に生える草で、表面がザラザラとしている。乾燥させ、木の仕上げ磨きに昔から使われていたそうで、だから漢字は「砥草」と書くのだそうだ。

手稲には川が多く、平地の方は昔、湿地だったというが、何故だかトクサは見当たらない。小学生だった頃良く遊んでいたあの沢には沢山生えていたことを覚えていたので、数年前のある日、取りに行ったついでに根ごと少し失敬し庭に植えた。はじめヒョロヒョロだったが、年々増えて、今年は大賑わい。

織り機の向こう側の大事で硬い木(間丁〜けんちょう〜、バックビームともいう)に、長年の使用による経糸の擦れで、細かい筋がたくさん入ってしまった。経糸が何度も通ることでできた、獣道ならぬ経糸だから経糸道である。年季が入って、我が仕事の手垢だなぁと感慨深いが、しかしその筋は、織るには少し難がある。
どうしたものかと思った時にふと浮かんだのがトクサ。磨いてみると、なんとすべすべ。

織り道具の磨きは繊細さが必要だ。なぜなら少しでもササクレがあったりザラザラしたりしていると、経糸が引っかかってボソボソになってしまうから。だからうんと細かいヤスリが必要なのだが、このトクサが、その役目を見事に果たしてくれたという訳だ。

根付を作る際の磨きにもトクサが良く、たいへん滑らかになると聞いたことがある。
使い終えたらそのまま土の上に置けば良い。いつか土に紛れ朽ちて分からなくなり、他の生物の中に取り込まれ循環する。

「砥草」は「木賊」とも書き能の曲目の一つでもある。着物の柄にもなっていることから、日本においては、歴史的にも馴染み深い植物のようだ。

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