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海外で牛の骨を移植された話

私はカナダに留学していた頃、歯茎が腫れ痛くなった。脳みそを掻きむしりたいほどの痛みだった。日本を立つ時にてっていして、歯医者で検査したのに、なんだこの突然の痛み。
そう、これが俗に言う「モーモー事件」のはじまりである。


事件のはじまり1


私は歯茎が痛くなり、すぐさま恐怖症に陥った。
「私、口くさいんじゃね?」
と思ったのだ。
歯茎が痛いという事は、膿や虫歯菌か何か得体の知れないものが口内で繁殖しており、口が臭いのではないだろうか。
という考えに至った。
その為、人と話す事がとても怖くなったのだ。
「海外にまできて口が臭いのにしゃべる迷惑な日本人」
というレッテルを貼られたらどうしようと思うと当たり障りのない会話をするのさえ躊躇してしまう。
これは大問題であった。
海外へ語学を学びにきて、喋らない。
英語の勉強なら日本で部屋にこもってやってりゃよい。
今の私の状態は傍迷惑にも程がある。


事件のはじまり2


日本人の友達を作りたくなかった。だから、私は常日頃から自己紹介で「私は北朝鮮からきた」と言っていた。
ブラジルの方など目を見開いて「オーマイガッ」と慌てる様も少し好きで多様していた。
(咳の仕方などで日本人と言うことは、わかる人にはわかるらしいが)
学校の中では「あの人スパイ?!」と怪しむ人も現れる次第である。

そこで、今回である。唐突に喋らなくなってしまうのだ。
もう隠キャの極み、怪しすぎてテロリストと疑われても仕方がない。
仲の良い数人には事情を説明したが、これは歯医者に行かねばならなくなったのである。
私の嫌いな歯医者へと…。(ついに対決か)


事件との遭遇

私はカナダのトロントで歯医者を探す事となった。
一軒目でレントゲンをとり
「お前死ぬぞ」
と言われた。
(いやいや、そんなことあるかい。)
足元をみられてると思ったので、別の歯医者へ向かった。

二軒目では、早く治療した方がいい。
ただし抜歯に20万かかると言われた。
(20万?!嘘だろ 私の妹なんか歯に糸を結んで石にくくりつけて、その石をぶん投げて抜歯してたぞ)

三件目で、とある中国人ドクターと出会った。
金額も他の医者と同じくらいで治療法は抜歯しかないらしい。ここでも他のドクターと同じ答えだった為、私は観念した。
この時点で、私は激痛に襲われていた。もはや、誰でもいいから治療をして貰いたい。ねじ式の主人公になった気持ちである。

『ねじ式』つげ義春/『月刊漫画ガロ』6月増刊号より

すぐに手術は行われた。
なぜ抜歯をしなければならないのかというと、歯の根っこが腐り、顎の骨をも溶かしてしまっていたのだ。というか顎に穴があいている。
私は、はっきりと戸惑っていた。
ドクターは私をみて、
カタコトの日本語で
「だいじょうぶ!トロントのギジュツは世界一!」
と言ってくれた。
医者で多彩な言語を操るかなり優秀な方なのはわかるが、映画でよく見る謎の中国人がそこに現れたみたいだった。普通に怪しさしかなかった。

私は余計に怖さが倍増した。
顔を抑えられ、麻酔が打たれる。
抜歯され、顎の骨をピンセットが触る感触があった。
恐怖で、私は漏らしそうになる。
次に血液を採取され、大がかりな機械(?)に私の血が投入された。
ドクターがスイッチを押すと
「ゴォゴゴゴゴ」
凄まじい音を立てて機械が回転している。
私の血液が、赤色と透明な液体(瘡蓋かさぶたを剥いだ時に出る黄色っぽい透明な汁のような もの)に分離していた!
その透明な汁に何かを投入し再び
「ゴゴゴゴゴォォォー!」
騒音とともに何か出来上がる。
この謎の物質は、抜歯後に溶けた顎に埋め込まれるらしい。
埋め込み、歯茎を縫い合わせ手術は完了する。

「これは、、なんですか…」
麻酔で口はきけないので、身振り手振り恐る恐る尋ねると、
ドクターは教えてくれた。
「あなたの血と牛の骨を混ぜたものです」

(?!?!?!?!)



Googleで牛と調べて出てきた画像


そう言う訳で、私は牛肉を食べる時、不思議な感覚を覚えるようになったのです。



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