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収益認識基準に対する動き その2

前回は、スマートフォンゲームという1つの事業に関して触れました。

今回は、日本における収益認識基準が発表された点はこれまで述べてきていましたが、早期適用ですでに対応している会社をちょっと見てみようかと思います。

収益認識基準は、2021年4月以降の期から強制適用されますが、すでに早期適用という形で、前倒しでこの基準で収益認識を計上している会社もあります。

ディスクロージャー分析~収益認識に関する会計基準等の早期適用の開示分析
収益認識会計基準ー28社が早期適用【経営財務誌調べ】

もちろん、数としては、少数派なので、ほとんどの会社は、強制適用のタイミングで、導入対応することになると思われます。

日本基準のままで早期適用した会社の特徴など何かあるのかな、という点での見方もありますが、ざっとみた感じ、業界的に偏りがあるとか、そういうのはなさそうな感じです。

CMなどでお馴染みのオープンハウスも早期適用組ですね

(オープンハウスが早期適用で対応しているのがなんとなく意外でしたが、、、まあ、これは個人的なイメージの問題ですが)

ちょっと見ると、こんな感じのようです。2019年9月の決算短信から、会計方針の変更の箇所に下記の記載があります。

オープンハウス

約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識
従来、媒介した不動産売買契約が成立した時点で認識していた不動産仲介手数料について、媒介契約により成立した不動産売買契約に関する物件が引き渡された時点で収益を認識しております

前段のところは、いわゆる収益認識の5ステップのうちの、ステップ5「履行義務の充足による収益の認識」の点ですね。(5つのステップについてはここでは詳細は説明しないので、詳細を知りたい人は各自で調べてください)

後段のところ、売買契約時点から、物件引渡した時点での収益認識ということで、これは文章を読んでわかりやすいパターンで、図解とかしなくてもイメージもしやすいでしょう。(と言いつつ、ちょっと図を入れてみますが)

オープンハウスの取引

時間軸的には、収益認識時点が後ろ倒しになったということですね。

さて、それでは、こちらの会社を見てみましょう。

ビーグリーについてです。「まんが王国」という漫画アプリなどを運営している会社です

ちなみに、ビーグリーに関しては、以前にコンテンツ資産について書いたことがあります。

では、この会社が、収益認識基準を早期適用することによって、どのあたりに変化が表れたのでしょうか?

2019年12月期の第2四半期の決算短信をみてみます。会計方針の変更の箇所の記載が下記の通りです。

ビーグリー決算短信

従来、ポイント購入時に全額を収益として認識しておりましたが、ポイントに係る収益はポイント使用時又は失効時まで繰り延べ、契約負債として認識する方法に変更いたしました

これも収益認識のステップ5に関連する履行義務の充足がいつか、が焦点になっている例ですね。

これはスマートフォンゲームでも似た形ですが、漫画アプリ内部で購入するポイントがあるのですが、以前はユーザーがアプリ内ポイント購入時に収益計上していた、ということです。

(漫画アプリを見る人はわかると思いますが、一旦アプリ内ポイントを購入した上で、電子漫画を購入あるいは、一定期間レンタルで読むことができる権利が発生する、などの使い方をします)

図解するとこのような流れになります。

マンガ購入フロー2

時間軸にすると、こちらも先ほどのオープンハウスと同様に、収益認識時点が後ろ倒しになった形ですね。

そして、決算説明資料の方で、会計処理の変更による営業利益への影響について触れています。

ビーグリー影響額説明

2019年の2Q期間においては、従来方式だと162Mだったのが、変更後の方式だと122Mになるということで、アプリ内のポイント消費額と比較して購入金額の方が大きかったと推測されます。

このように、収益認識基準をいつから適用するかによって各社において売上や利益数値にも影響することから、入念に準備して業績シミュレーションなどした上での対応が必要になってくると考えられます。(とはいえ、強制適用までのリミットがそれほど残されている訳ではないですが)


(以下、数行程度の、この記事を書いてみての感想を記載しています)

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