収益認識ロゴ4

収益認識基準に対する動き

収益認識に関して、ニュースなどでも、収益認識基準の適用に向けた各企業の動きなどを伝えるものも目につくようになってきました。

新会計基準で変わるポイントの扱い 戦略転換も必要に

その他、それに向けて以前のnoteにも記載したように、各種団体の動きなどもあります。

そして、また、業界としての動きが出てきたところがありました。

【意見募集】「スマートフォンゲーム等における収益認識基準に関するガイドライン(案)」

一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラムから出されたものです。

(一応補足すると、私はこの団体の関係者になります)

同団体の公表資料によると、スマートフォンゲームは、2018年における市場規模が1.4兆円にもなることされています。例えば、出版業界は、同じく2018年でみた場合、紙と電子を合わせて1.5兆円ほどとなっています。

すなわち、スマートフォンゲームと出版業界は市場規模においてほぼ近いレベル感となっています。このように、大きな市場規模を持つ業界である一方で、歴史的には、非常に短いです。日本でiPhoneが発売されたのは2008年のことです。そこから数えても10年少々しか経っていません。またスマートフォンゲームとして大ヒットした「パズドラ」がリリースされたのが2012年のことです。そこから数えると10年も経っていない状態です。

収益認識の話に戻りますが、歴史的にも短いスマートフォンゲームであり、これに関連する会計処理に関しても、まだまだ定まっていないところが大きいです。

そのため、この分野の収益認識の方法に関しては、これまでも様々な会社で議論がなされてきました。主にIFRSを導入しようする企業において、従来の日本基準などで認められていた方式が認められないといった事例もあったようです。

ただ一方で、「ゲーム」というカテゴリーで簡単にくくってしまい、IFRSとしての事例がある海外企業の処理を単純に日本企業にも当てはめるのはおかしいのではないか、と感じている人もいました。なぜなら、各国で売れるゲームというのはそれぞれゲーム性が異なる点も多いためです。

そのため、より実態にあった会計処理ができるようにするため、事業会社の担当者が集まり議論を重ね、新しい収益認識基準への要望などをまとめてきました。そのため、原則IFRSに沿った形の新しい収益認識基準の作成が始まった段階からMCFとしては意見などを提出するなどしてきました。

2016年 「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」
→ これに対しての意見書
2017年 企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」等の公表
→ これに対しての意見書

こういった活動をして、団体内部でも意見を集約してきました。

最終的に2018年に収益認識基準が公表されました。

この収益認識基準は、ベースになったIFRS15号に加えて、『重要性等に関する代替的な取扱い』という項目を設けて、日本にあった収益認識の方式が採用できるような形となっております。

一方で、MCFとして出してきた意見についてはどのようになったのかというと、後に公開されたコメント集ではこのような記載がありました。

主なコメントの概要とそれらに対する対応

この資料の24〜25ページ目にこのような記載があります。

スマートフォンゲームにおけるゲーム内課金に係る収益認識については、収
益認識会計基準第 38 項の要件に照らして、一時点で収益を認識すべきか、一定の期間にわたり収益を認識すべきかを判断する。仮に一定の期間にわたり収益を認識すべきと判断した場合には、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたって計上することとなる。

なお、上記の判断及び進捗度の適切な見積方法は、企業が提供するゲームの性質や、ゲームの中で使用されるアイテムの性質等を加味して決定されるべきものであり、企業やゲームによって、収益の認識時期は異なる可能性がある。そのため、単一の収益認識方法を本会計基準等の中で定めることは適切ではなく、各社が、自社が提供するゲームの実態を反映した適切な方法に基づき収益を認識すべきであると考えられる。

ゲームの種類には様々な種類があると認めた上で、それぞれが実態を適切に反映する方法の会計処理を採用すべき、ということで、細かな基準には定めなかった、という事になっています。

各社で正しい実態を表すことのできる会計処理を考えて、実行していくことが必要となります。

それにはもちろん、各会社における経理担当者だけでなく、会計監査人も事業への理解を持って、目的の実現に当たることが必要となってくると思います。

新しい収益認識基準が発足しても、各社が混乱をきたすことなく、スムーズに新しい処理に移行できるようになるのが望ましいと考えています。


(以下、数行程度のこの記事を書いてみての感想があります)


ここから先は

167字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?