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AppStoreの価格帯(tier)とは その2

さて、前回は、AppStore価格変更に関するニュース報道等を取り上げてみました。

今回はタイトルにあるもあるAppStoreで定める価格帯 - tierについて触れていきます。

規約関係

まず、関連する規約を見ていきます。(ここで、取り上げるAppleの規約は2022年11月22日時点でのものです。以後、更新されて内容が変わる可能性もあるのでご注意ください)

Appleのアプリ開発者向けの規約としては、以前の「スマホゲームの徴税強化?」の記事でも触れていますが、以下の規約が関係します。

この各種書類の中で、アプリの有料販売をする場合や、アプリ内課金を導入する場合には3番目の「有料App契約(Apple Developer Program使用許諾契約の別紙2と別紙3)」が関係してきます。
そして、各種言語のものがありますが、英語版と日本語版があります。
 英語版 日本語版
この中で、英語版で「tier」という単語が出てくるのが項目3-1からです。

別紙2 項目3-1
別紙2 項目3-1

「price tier」で日本語版の「価格帯」「価格表」と対応するような形となっています。この記事ではタイトルとしては、「価格帯」の方をとっています。(正確には「price tier」でないと「価格帯」にはならないのですが、ある程度「tier」という言い方が定着していると思うので、ここでは単に「tier」を価格帯とするものとします。)

ちなみに、ネット等で検索すると「tier」と書いている記事などが多いのですが、「価格帯」と書けば良いのにカッコつけて英語で「tier」と書いているのか?と思うかもしれません。
実は、以前(おそらく昨年の始めくらいまでか?)はこの別紙2(Schdule 2)の日本語訳文が開示されておらず、英文資料しかなかったため、英語での「tier」という呼び方が定着していると考えています。

私は以前、まだこの別紙2が英文のものしかない時に、とある事情で、日本語訳(全部ではないですが)をある役所に提出しなくてはならず、しんどい思いをしながら日本語訳文を作った思い出があります。公式の日本語文が出て助かっています。

実際の価格帯 - tier

さて、その価格帯表ですが、こういったものです。
これは2022年10月に変更対象となった分の価格表です。基本的にApp Storeの配信がある世界の国々の通貨に対応した分がありますが、わかりやすいように、日本円の箇所だけ抜粋してみます。(他国の通貨との関係性はまた別のところで取り上げます)

日本円の価格表の一部

このように段階的に、tier0は0円として、teir1の160円からtierが上がるごとに徐々に金額が上がっていきます。

160円、320円、480円、650円、、、というように価格帯があります。これらの中からアプリ事業者は価格を選択して販売価格を決定する必要があります。
例えば、100円で売りたい、と思っても、上記の表には「100円」という価格がないので、100円で販売することができません。

すべてのライセンスアプリケーションは、App Store Connect ツールに定められ、Apple により随時アップデートされることがある価格表から、デベロッパの自由裁量により、1 つの価格帯に設定される、デベロッパが指定した価格で、Apple がデベロッパを代理してエンドユーザーに販売するものとします。

規約3-1

規約3-1に上記のように、このtierの中から選択する旨が定められているためです。
まあ、固定価格しか選択できないのに「デベロッパの自由裁量により」とか書かれているのは若干しっくりこない感覚もありますが、一旦そこは置いておきます。

Appleが価格帯 - tierを自由に変更できる

定まった価格帯の中からしか選択できないのは、これはこれでそういうものとして仕方ないとしても、問題になるのが、前述の規約3-1のこの箇所です。

Apple により随時アップデートされることがある価格表

規約3-1

いちばんの問題は、これがAppleがいつでも自由に変更できるという点です。デベロッパの都合に関係なく、Appleがいつでも価格帯を変えることができます。
実際、今回、9月19日にAppleからの通知があり、10月5日以降にApp Storeの価格帯が変えられたわけです。
  AppおよびApp内課金の税金と価格の変更について (2022/9/19)

果たして、デベロッパの意思に関係なく、アプリストア運営者であるAppleがこういった手法を取ることは問題ないのでしょうか?
次回以降、このAppleのtierをめぐる問題点について、いろいろな角度から検証してみたいと思います。

規約等の日本語訳の開示に関して

以下、話の趣旨とはずれる少し余談ですが。
前半の方で、Apple Developer Program使用許諾契約の別紙2(Schedule2)の日本語訳文が出されたのが、昨年からだったようだと述べました。
日本語訳版が出されるようになったのは(日本語版だけでなく、他の言語版もですが)、前回も少し触れたデジタルプラットフォーム取引透明化法が影響しているのではないか、とも思われます。

そして、この施行規則の第5条に下記の記載があります。

施行規則 第5条

このようにアプリ開発に必要な規約等に関してはアプリストア運営元の言語(Apple,Google共に英語ですが)の提供だけでは不十分で、日本語の翻訳文を提供しなければいけないことが定められています。
そのため、別紙2もこれまで英文のものしか存在しなかったので、日本語文を提供するようになったのではないか、という推測です。

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