婚姻編 12回目 ⑯

前回の「常居所」という言葉ですが、

各国の意味が様々な中で、ある一定の考え方として

編み出されたものですので、これで万国共通の考え方

というわけではありませんが、日本の中においては

以下の考え方に基づいて判断するようになっています。

日本人が「日本」に「常居所」があると判断する場合


・外国における常居所がなく住民票の写しがある。

・住民票が削除され海外にいたとしても、出国後

1年以上5年以内の場合(例外あり)

この場合は、日本人が日本に常居所があると判断

されます。
日本人が「外国」に「常居所」があると判断する場合


・旅券その他の資料により、当該国に5年以上滞在している

ことが証明できるとき

では、今度は、日本人ではなく、
「外国籍」の方が、

「日本」に「常居所」があると判断される場合

・入管法に基づいて判断されますが、

一般的な在留資格の場合「5年以上の滞在」

日本人配偶者や、定住者、永住者などは「1年の滞在」

で日本に常居所があると判断されます。

これは適法に滞在している場合ですから、違法に日本に

滞在している場合は、常居所としては判断されません。

(加藤文雄 渉外家事事件整理ノート 48項)

ものすごく大雑把にまとめると、

その国に常居所があると判断されるには

短期間では駄目で、相当長期間滞在、住んでいる

事実が必要。

ということになります。

ここで前回の話にもどりますが、

・夫婦で同じ本国法なら、その本国法

違うと

「夫婦の常居所地法が同一である時はその法に」

となっていますので、

夫婦がそろって(別居などの場合はまた別になりますが

ここではあえて揃ってという言葉を使います)

長期間住んでいる国であればその国の法律を根拠に婚姻

の権利義務を判断することになります

ここまで考えてもまだ、常居所がどこなのか?

わからない場合は、

夫婦に最も密接な関係のある地の法

となっています。これはいわば最終手段です。

アレもコレも駄目で最後の最後に使う判断基準

がこの密接関連地法と言われるものです。

これは、国際結婚でも、お互いに別々の国で

暮して、その理由は単身赴任でも、なにかしら

の理由で別居をしている場合でも、育児や介護

だったり様々な理由で離ればなれの生活になっている

場合でも夫婦間の権利義務関係を判断するために

夫婦で一番お互いに関係が深い場所(国)の法律を

基準として判断しようとするものです。

ですので、この密接関連地というのは統一的な考え方

基準があるものではなく、事例ごとに個別にその

状況を考えて判断する基準になるので、裁判所が

その判断をしなければいけないときに、それぞれの

事情に応じてケースバイケースで判断することになります。

夫婦一つとっても国際結婚だとこれだけの基準を用いて

判断する基準を探さないといけないことになります。

であるからこそ、過去、現在の身分関係をきちんと

公的に証明することができるようにしておけば

いざ、問題を解決するための「基準」を探すときにも

大きなヒントになることになります。

やっぱり、届出って大事なんですね。