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日本に暮らす日系フィリピン人の若者にこそ読んで欲しいジェイク・ザイラス(シャリース)の自伝「歌姫の仮面を脱いだ僕」

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ジェイク・ザイラス、天才女性シンガー シャリースとして世界を席巻した歌姫がトランスジェンダーであることを公表し性別適合手術を受けて男性シンガーとして活躍しているフィリピン人アーティストだ。
彼が自身の半生を赤裸々に語った告白本「I AM JAKE」をフィリピンで出版したのは2018年の秋。
あれから1年半、日本語版「歌姫の仮面を脱いだ僕」が出版された。
この本は貧困家庭に生まれたジェイク(シャリース)がどんなきっかけで歌手になり、どのような経緯で世界を席巻するスターになったのかが克明に描かれている。

僕はこの本を日本に暮らしているフィリピンの人たち、フィリピンをルーツに持ちながら日本で生まれ育った人たちに是非読んで欲しいと思っている。

マイノリティとして海外で生きていく中で様々な苦労をしてきた、現在もしているフィリピン系の若者たちはひょっとしてフィリピン人の血を引いていることに負い目や引け目を感じている人も多いのではないだろうか?
偏見や差別的待遇を受ける中で、また様々な形の支援を受ける中で、僕たちは支援される民族なんだ、劣った民族なんだ、かわいそうな民族なんだ、だから偏見や差別を受けるのも仕方ないことなんだと知らず識らずのうちに心に刷り込まれている人もいるのではないか?自信や誇りを失いつつある人、そもそもそういったものを持てずにいる人がいるのではないか?

フィリピンには日本人が束になって挑んでも叶わないような偉業を達成した人が何人もいる。ジェイクもその一人だ。彼はフィリピン人の中でも特別な環境や才能に恵まれた「突然変異」ではない。ただ幼い頃ほんのちょっとみんなより大きな声が出せてほんのちょっと歌が上手く歌えただけだ。それを不断の努力と尽きることのない情熱で研ぎ澄ましていくうちに声ひとつで世界中の人々を感動させられるまでになった。トランスジェンダーであることを公表し男性シンガー ジェイク・ザイラスとして今もフィリピンのトップシーンで活躍している彼はもう少しで28歳になるフィリピンの若者の一人だ。彼は今もより優れたパフォーマー、クリエーターになるために努力しているし、上手くいかないことや立ちふさがる大きな壁をはねのけ続けている。

僕はこの本のことを話してもらうために昨年の7月、ジェイクに会った。その時の彼はまさにこの本で自身が語っている通りの人物だった。16歳でアメリカのショービズ界に注目され渡米、アルバムは全米アルバムチャート10位にランクインする大ヒットとなりセリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストンら世界のトップスターと並び称されるまでになった正真正銘のセレブリティだ。しかし同じテーブルに座り食事をしながら話した彼はとても気さくでその場を楽しい雰囲気にしてくれる正にフィリピンスタイル、多くのフィリピン人と同じポジティブな人間性をもっていた。僕たちは本の内容を離れてお互いのことを語り合った。食べ物の趣味や好きな音楽のこと、家族のことなどで共通項を見出した時の彼の嬉しそうな顔はいつまでも忘れられないだろう。
僕は本のことで訊いておかなければならないことがたくさんあったのだがこの本のことを理解するにはまずお互いに気心知れ合うこと、彼のことをよく知ることが何よりだと思い至った。そしてそれは正しかったと思う。半日一緒に過ごした後、僕は本についてわからなかったことがクリアにわかるようになった。彼ならこういう気持ちになったんだろうな、ジェエイクの悩みや迷いもそういうことだったのだな・・・。

懐かしい旧友に再会した時のようにとりとめのない話で盛り上がった後、ジェイクは僕に歌を披露してくれた。そこでいきなり僕は現実に引き戻された。僕の隣で歌っているのはまぎれもない世界のスーパースターだった。僕はそのことをすっかり忘れていた。生歌なんてものじゃない。マイクも音響機器も通さない文字通り「素の歌声」だ。それは僕をたいそう混乱させた。さっきまでジェイクのことを僕の本当の旧友・親友になったような気持ちで話していたことがなんだかとても失礼なことをしでかしたような気持ちになったからだ。
「えらいことをしてしまった!
目の前にいるフィリピン人はお前なんかがおいそれと話しかけられるようなその辺の奴とは違うんだぞ!
それをなんだってお前は・・・」
狼狽している僕を見たジェイクは歌い終わると元の『親友』にもどって、いたずらっ子のような笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
彼のしかけたイタズラにまんまと引っかかったようだった。

この本を通して僕は「強く生きること」「楽しく生きること」「幸福に生きること」はどういうことなのかを学んだ。僕は彼よりずっと年上なのだが生まれて初めて教わった。ジェイクがいなかったら、彼がこの本を書かなかったら僕はそのことに気づかずに一生を終えていたかも知れない。
今僕はそんな風にポジティブに生きているフィリピン人のことを知っていること、ジェイクと同じ時代を生きていることをとても幸運なことと思うと同時にとても誇りに思っている。
ジェイクは勇気と情熱があればここまでになれるんだということを身を以て教えてくれたのだ。

在日フィリピン人の皆さん、日系フィリピン人の皆さん、たとえフィリピン国外で生活していても彼と同じ血がどこかに流れているんだということをこの本を通じて知って欲しい。

彼は別れ際、持参した本にメッセージを書いてくれた。それはこんな具合だ。
"I Hope you find your real happiness.
I'm very grateful to have met you.
Thank you for being in my life.
Always Be Kind To People even if they hurt you.
Love, 
Jake Zyrus."
これは僕だけでなくこの本を読んだすべての人へのメッセージなんじゃないかな・・・

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