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【企業売却の舞台裏2】基本合意から最終契約、情報開示、そして統合までのステップ

トップ面談が成功に終わり、次に控えている段階は基本合意書と最終契約の締結となります。この部分が双方にとって非常に重要な局面となります。

また、契約が確定した後は、情報の開示が求められます。特に、取引先や社員への情報開示は注意深く行わなければなりません。

さらに、M&A完了後の組織運営にも一層の注意が求められます。
その概要についてもまとめてみました。

基本合意契約

両者間で大筋の条件が固まった時点で「基本合意契約」を締結します。
これはM&Aプロセスの重要な節目で、ここまででは複数の企業と交渉を行うことが可能ですが、この段階を過ぎると独占交渉権が発生し、一対一の交渉が進行します。

売買価格、スケジュール、M&A契約の予定日、デューデリジェンス(買収審査)に関する詳細など、主要な条件についての合意が行われます。
基本合意契約は最終的な契約書の下地となるため、ここで可能な限り詳細な内容を定めることが求められます。

デューデリジェンス(DD)実施

デューデリジェンス(DD、買収監査)は企業の価値やリスクを評価する重要なプロセスです。これは、M&Aの状況下で買収する企業が売却する企業の財務状況などをチェックするための調査です。

売り手企業の財務状況や事業リスクを評価し、事前に得た情報と比較する調査が行われます。通常、この調査は専門家、例えば弁護士や税理士などが実施します。

ヒアリングでは、多数の資料を使用して行われ、インタビューシートには会社の理念、組織構造、業界の見通し、財務状況など約60項目にわたる情報の収集が行われました。また、予想される未来のリスクについても考慮されました。専門知識を要する内容が多く、大変疲れる作業でした。

平等な交渉


M&Aは本来、双方の企業にとっての利益を最大化するためのシナジー効果を追求するものですが、プロセスが進むと譲渡することが目標に感じてしまうことがあるようです。
私のケースでは、後継者問題への早い対応が目的だったにも関わらず、仲介者を介してM&Aを進行させる過程で、無意識に譲渡が目標となってしまっていました。

しかし、一度立ち止まり、自分の目標を再確認することで、無理に譲歩して交渉を進める必要はないと気づきました。

M&Aは本来、双方が平等な立場で交渉を行う場であり、買収側が大企業であっても、同等の態度で接することが重要です。
必要なことは伝え、必要な情報は聞く、これが最適なスタンスだと思います。交渉期間中には相手をきちんと観察し、その反応を感じ取ることが重要です。

【リアル体験談】
買収側の企業が2,000万円の値下げを要求してきました。
何故この額にしたのかは不明ですが、即座にお断りました。
おそらく、買収側の企業は我々がM&Aを急いで進めたいと思っていたのかもしれません。

最終契約の締結

最終契約の締結は、企業の合併や買収(M&A)のプロセスの中で、買収側と売却側が取引のすべての詳細について同意し、その合意を法的に有効な書類に記録し、署名・捺印する行為を指します。

この契約書には、買収価格、支払いのタイミングと手段、移転する資産、負債の扱い、保証条項、契約違反時の対処法等、取引の具体的な条件が明記されます。
最終契約の締結は、M&A取引が正式に完了し、所有権が移転するという意味で重要な段階となります。

契約書は必ず最後までよく読むこと!文字が小さいと感じるなら拡大コピーをして読んでください。
後で「聞いてない」は通用しません。
分からないことや、疑問に思うことは仲介人に聞きましょう。

デューデリジェンス(DD)が完了した後から最終契約の締結までの期間は、それほど長くはありませんでした。

ディスクロージャー(情報開示)

M&Aが成功し、一段落ついたところで、重要なタスクが待ち構えています。それが情報の開示、つまりディスクロージャーです。開示は譲渡企業と譲受企業の関係者、また他の関係者に対する情報の公開を指します。

一番心配だったのが、従業員への説明です。
私は始めに、なぜM&Aを選んだのか、そしてこれからの事を彼らに説明しました。買収企業の社長からは「これからも頑張ってほしい」という激励の言葉を受け取りました。
しかし、従業員たちは何が起こっているのか理解できない様子でした。
全員が無言で、話を聞いていました。

取引先に対しては、書面を送って情報を伝えました。
予想通り、これに対して多くの反応がありました。
私が若く、3人の子供がいることを知っている人たちは大いに驚いたことでしょう。おそらく様々な噂が広まったことでしょう。

また、メインバンクの支店長も、私たちの業績が良かったため、後継者問題に悩んでいたことすら知らず、力になれず申し訳ないと話してくれました。買収企業のメインバンクは別の金融機関でしたが、今後も我々の金融機関を利用するとのことで、一安心しました。

ポストマージャーインテグレーション(PMI)の重要性

ポストマージャーインテグレーション(PMI)とは、企業の合併や買収が終了した後に、それらの企業を効率的に運営し、統合するためのプロセスを指します。

言い換えると、2つ以上の企業が合併または買収を通じて一つになった後、それらをスムーズに運営するためのさまざまな取り組みのことです。

ここには、組織の構造や文化、業務フローとシステム、そして従業員間の協調性などの統合が含まれます。

PMIの計画と実行にあたり、以下の要素に注意が必要です。

⚫︎M&A後の両企業の経営戦略、業務規定、社員の意識を一つにし、M&Aの利 益を最大化する。
⚫︎買収企業のリーダーシップは極めて重要であり、売却された企業と協力して、シナジー効果を適切に引き出すことが求められる。
⚫︎PMIは単なる均質化ではなく、変化に対する強固なリーダーシップが求められる。

特に、人間関係の統合については注意が必要です。
新規の人員追加が行われる場合、福利厚生や勤務スケジュールの違いから、売却側の従業員の士気が落ちる可能性があるため、配慮が必要です。

それまで接点のなかった人々が一緒に働く場合、話し合いを通じて共通の理解を構築し、進めることが必要です。

もし片方が過度に権力を発揮したり、逆に片方が過度に我慢を求められるような状況が続くと、大きな問題を引き起こす可能性があります。


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