石丸市長との意見聴取から推測する広報委員会の言い分とその問題点

先日、安芸高田市における議会だより問題に関して、大きく話が動いたなという出来事がありました。
それはシセイクラブの二人(南澤議員・田邊議員)に対する市長の意見聴取です。

議会だよりに関する意見聴取については以前にもありましたが、今回は渦中の広報委員会のメンバーである議員二人と市長とが正式にやりあうということで、どのような議論が行われるのか興味深く見ていました。

思っていた以上に新しい情報も多く、非常に興味深い内容だったので内容を軽くまとめつつ、そこでの議論から見えた広報委員会の言い分について書いていこうと思います。


意見聴取内容の要約

これは本音を言うと動画を見てもらったほうが良いのですが、結構長い動画でもあり前後編に分かれているので、私なりにそれぞれポイントをまとめます。当然主観に基づいたまとめです。
動画自体を見ていない人でも簡単に把握できるようにまとめますのでご活用くださればと思いますが、本音としては動画を見てほしいです。結構おもしろいので。

意見聴取前編(3月26日)

前編の内容としては大枠3点です。
1.なぜ議会後すぐの意見聴取ではなく日付を再調整したのか
2.議会だよりの問題点についての受け止め
3.広報委員会の言う対策の中身

1.なぜ議会後すぐの意見聴取ではなく日付を再調整したのか

これについては長々とやりとりしていましたが、今回の本題とはあまり関係ないので簡単にまとめるのみにします。

議員側としては広報委員会があることが決まっていたからというもので、執行部側としては時間を簡単にずらせる広報委員会より、内容的にも意見聴取を優先するべきではないかというものでした。
市長はこの問題に対する覚悟や危機感を尋ねたかったように思いますが、意見聴取の案内にあった「無理な場合は別日で調整してください」というのを議員は文字通り受け止めて当日に行かなかったという感じです。
このあたりについては書く機会があれば書きます。

2.議会だより75号の問題点についての受け止め

まずは基本となる事実関係の確認が行われました。
市長が問うたのは以下2点です。

・議会だより75号の要約は不適切ではないか
・不適切な内容を議会だよりとして発行することは議会基本条例に違反するのではないか

二人の議員の反応は前者に関しては双方その通りと認識していました。
一方で、後者については当初言い淀んでいましたが、最終的に南澤議員が「そうですね」と発言し、市長の言い分を認める格好となりました。

これはかなり重要な発言であり、市長の言う「不備のあるものを発行できない」という議論の土俵に最終的にあがってしまったということです。

3.広報委員会の言う対策の中身とその時期

この部分が前編の動画の肝だと思います。
これまで語られてこなかった広報委員会での議論とその言い分について明らかになりました。
前編の動画の結論として、広報委員会のいう対策は以下の通りです

1.議事録に載っていない言葉を使わないようにする、使う場合はかっこ書きにする(ただし一般質問は各議員個人の責任なので関知しない)
2.上記1の対応を一般質問部分にまで拡張したが、議員が修正しないと言えば修正しない
3.一般質問についても広報委員会の責任で修正を行う(要約の修正も含む)

そして多くの方々との認識のずれはこれら対策を行ってきた時期がそれぞれ違うという点です。
・対策1に関してはおそらく73号から
・対策2に関しては76号から
・対策3に関しては78号から
という形でそれぞれの対策の実施時期が異なります。
これらをひとまとめにして「対策は以前から行ってきた」と広報委員会は主張されていたので、誤解が広まっていたんだろうと思います。
現に、77号でも不適当な要約があったという市長の主張に対して二人の議員は、対策3の前なのでできなかったという返答をしていました。(つまり不適当とは認めた形)

この後、市長の都合によって続きは後日ということになりました。

意見聴取後編(3月27日)

後編の内容としては大枠3点です
4.現時点での広報委員会の修正は万全なのか
5.広報委員会は執行部チェックの何を問題視しているのか
6.今後のチェック体制の在り方

4.現時点での広報委員会の修正は万全なのか

前編の意見聴取において広報委員会の行った対策の詳細が明らかになりました。
そこで、後編ではまずそれら対策ができているとされた78号~80号について正しい情報になっているのかという点について確認が行われました。

市長の指摘にはただの主張も多分に含まれていたため(例えば「議員とのかみ合っていないやりとり自体が分かるように掲載するべき」など)すべてではありませんが、細かいものを含めばいくつか執行部の意図とは異なる編集のされ方をしているものがあり、議員もそれを認めました。
したがって、現時点においても対策は万全ではないという執行部の主張が通ってしまった形です。

5.広報委員会は執行部チェックの何を問題視しているのか

上記の通り、現段階での対策は万全ではありません。
そして「執行部側による確認やチェックが必要である」当事者である広報委員会の委員自らが今回述べていました。
「事前にこのように話があれば理解できるんですけどね。」それはそう。

ところが広報委員会としてはそれができないとも主張しているわけです。
その理由は何なのでしょうか。
今回後編で最も重要な議論はここだろうと思います。

議員が主張していたのは「執行部がOKを出すまで発行は認めないという市長の発言が問題」ということでした。
つまり、執行部の都合の良いように変更されるまで発行しないということが起これば執行部の都合の良いような議会だよりになってしまうと。
執行部と対立する存在である議会が執行部の手助けをすることは承認できないということです。

一方で執行部とすれば、指摘をしてもそれが修正されなければ意味がありません
実際のところ、従前行われていた執行部のチェックを無視して議会だよりを発行するということが過去に起こった結果、現在のようにチェックをそもそも受けないという方針に変わったという経緯があるからです。

これはどちらの意見も正しく見えます。
私の過去の記事でも、どちらにしても完全な客観性は担保できないと書いた通りです。

執行部はこの点に関して「仮にそんなことが起これば事実を明らかにして執行部をやめさせて市民に判断を委ねればよい」と主張しました。
個人的にはこれはその通りすぎてぐうの音もでないと思いました。
しかしながら、議員は最後まで執行部によって発行が止められる可能性が存在すること自体がダメだという姿勢を崩しませんでした。

6.今後のチェック体制の在り方

結局のところ、どうしてもイニシアティブを握りたい議会と、チェックするなら修正の確認は必要という執行部との間で議論は平行線となっていました。
その状況を打破する方法の提案が市長から行われる形でこの議論は終わりを迎えます。

市長の提案した手法は以下の通りです。
1.執行部のチェックと修正の確認を行う(これまでの主張)。
2.執行部は指摘を行うがそれを踏まえてどう修正するかは広報委員会の責任とする。その代わり執行部と委員会で行われる修正議論の内容を動画として公開する。
3.第三者委員会(市民、県外のひと、職員など)によって審査する。

これらの方法のどれがよいのかを議論したいとのことで、最終的には広報委員会へと持ち帰りとなりました。

また、動画の最終盤で広報委員会の問題点についての話もありましたが、それはこのあとにまとめて書きたいと思います。

意見聴取全体のまとめ

以上の話全体をまとめると、
・議会だよりには問題があった
・問題があったまま発行するのはやっぱりマズいと議員も認める
・対策も現時点で万全ではないし現時点で問題は起きている
・ただし執行部のチェックは承服できない
・ほかの客観性が持てる選択肢を検討する
といったことを両議員と確認したということになります。

意見聴取から見えた広報委員会の意図と問題点

今回、意見聴取の特に前半部分は二人の議員の対応や発言、リアクションを見てもかなり広報委員会サイドの意向に沿った内容だと思います。
従って、前半の発言部分から広報委員会としてこの問題をどのように収めようとしていたかが透けて見えてきました。
私が感じた広報委員会の主張と意図は以下の通りです(あくまで私の主観に基づきます)

1.議会だよりの内容には問題があると感じる人もいるが、それは意見の違いであって内容が間違っているわけではない。すなわち議会基本条例には違反していないのでこのまま発行しても問題ない。
2.「市長の指摘に対応した」というのは市政の動き2022年4月号での指摘部分(議事録に存在しない言葉を用いている)であり、そこに関しては解決済みである。
3.ほかの指摘に関しては解決できているわけではないが、市長は「私の指摘」としか言っていないので2の対策で「指摘には対応している」と言ってよい。
4.あくまで議会だよりの内容についての決定権を持つのは議会であり執行部にその権限が渡されるようなチェック方式は受けない

先述の通りこれは私の推測に基づくので確定はしません。
しかしながら、南澤議員の「市長は限定されていませんよね」という発言や「~~と思ってまとめた可能性もありますよね」、「執行部の指摘には対応してきた」といったこれまでの発言を考えると、こういう意図じゃないかと思います。
そして仮にこれらが本当だった場合、3番に関しては特に悪質だなと私は思っています。
実際には市長が問題とした点には対応しきれていないのにもかかわらず、議会の採決において広報委員会が「対策は取った」といえばほかの議員はそれを信用するしかないわけです。(正確には疑ってもよいのですが、ややこしいのでここでは取り扱いません)
そしてこの言葉は定義を定めていない以上ウソではありません。
しかしながら限りなくウソに近い言葉ではあると思います。ミスリードを誘発する言葉ですね。
議会における重要な採決にかかわる言葉がこのように都合よく解釈されて使われていたとすると、私は非常に問題があるなと思います。
逆に、そのように都合よく解釈しないといけない理由があったのかとも邪推してしまうわけです。

そして最大の問題点は今回の意見聴取にほかの広報委員や広報委員長が出席していない点です。

今回の意見聴取はあくまで田邊議員と南澤議員二人の意見であり、広報委員会として上記のようなことを認めたり今後の対応を決めたものではないです。
結局のところ仮に今回意見聴取に応じた方々(熊高議員、秋田議員、金行議員、田邊議員、南澤議員)が議会だよりの問題を解決しなくてはならないと考えたとしても、議会全体としても広報委員会としても少数派であり、このままでは改善は見込まれないだろうと思います。

ただし、今回の意見聴取の動画を市が公開したことによって、どのような観点が問題になっているか、それぞれの議員の考え方が比較的わかりやすくはなりました。(動画3本で長時間なのでなかなか見るのが大変ではありますが)

後編の動画では田邊議員、南澤議員個人の考えがかなり出てきているようにも思いましたが、彼らが広報委員会を動かせるのかどうか、注目です。

今後行われる再議においてどのような議論になるか、そしてどのような結論になるかは分かりませんが、そして市民がどう判断するのか、今後の展開が気になるところです。

動画内容への補足

ここからは議論の大筋の内容とは異なるため詳細を省いた内容について補足します。

市長が指摘した時期
動画の中では市長が指摘を行った時期について多少揉めていました。
これは市長が市政の動きにて議会だよりの不備を初めて指摘したのが2022年4月号(議会だより72号について)ではありますが、今回の議会で問題となったのは2023年1月号で指摘を行った内容(議会だより75号について)ですので、その認識のずれでした。
議会でも主に議会だより75号について取り上げていたため、市長としては2023年1月号での指摘の話をしていたつもりだったのですが、広報委員会は2022年4月号の指摘が重要だと考えていたようです。
確かに出発点といえば出発点です。

80号において間違っていたとされた部分
80号における秋田議員の一般質問が取り上げられました。
議会では市長が「すごく大事なポイントなのでお伝えをしておきます」と産業部長の答弁に付け加えられた内容が、議会だよりには含まれていないという指摘です。

市長の答弁としては「そもそも現在の規模で指定管理料を今後も払い続けられるわけがない。5年後にはなくなるくらい市の財政は厳しい」というようなものでした。つまり「先が見えない不安というけど統合しなければそもそも潰れるので、その不安を解消するためのもの」ということです。
この部分は確かに入っていませんし、紙面には余白があるのでなおさら入れてほしかった部分だというのは理解できます。
一方で、秋田議員の質問の意図としては「先が見えないというのは統合後の組織形態が見えない」ということ、つまり「具体的な仕事内容や待遇」だったので意図と異なる方向での回答だったため省かれたのだと思います。
これは視点の違いでもあると思いますが、要約とは難しいものです。

市長の指摘のうち該当しなかったもの
市長の指摘にはただの主張も多分に含まれており、例えば、「議論としてかみ合っていないという事実を市民がわかるようにしろ」というようなものや「議員が事実を誤認していることを分かるように補足しろ」というようなものもありました。
これらは私から見てもちょっと無茶だなという主張だったので、そこを広報委員の二人が否定したのはよかったと思います。

しかしこれらの指摘に対する返答を広報委員会がしていないという点で、執行部側からすると、無視されているのか、きちんと検討せずに否定されたのか、きちんと検討した結果却下されたのか(そしてその理由)が分からないということになってしまいます。
広報委員会としてどのように議論しどのような結論を出したのかを公表するべきだと私は思います。

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