安芸高田市の「議会だより」問題について客観的にまとめる

さてまたも安芸高田市は燃えていますね。
今回は議会だよりの予算を計上するかどうかです。

すべての情報を追うのが難しいという方もいらっしゃると思いますので、表に出ている情報をもとに、可能な限り公平にまとめてみようと思います。


これまでの議会だより問題の流れ

石丸市長が市政の動き(2022年4月号)にて議会だよりの表現がおかしいことに言及

石丸市長が市政の動き(2023年1月号)にて議会だよりの間違っている点について大きく紙面を割き具体的に間違いを指摘
その後何度か(同年4,7,10月号)市政の動きにて議会だよりの問題点について言及する

10月末
市長から議会へと直接問題点の指摘が行われ、このままでは来年度の予算計上ができないことが伝えられる

11月
議会「どこがまちがっているのか具体的に指摘しろ」
市長「市政の動きで具体的に指摘しているから確認しろ」

12月
議会は「虚偽や間違いは確認できない」と決定

1月
市長から議長へと直接通告(修正が行われない場合予算計上しない)が行われるが、議長は「虚偽や間違いはなく予算計上しないことは容認できない」と回答

議会だよりに対する市長と議会の主張

市長
・議会だよりには虚偽の内容が記載されていた
・にもかかわらず議会はその間違いを認めていない
・そのような状態で議会が提示した対策は信用ができない
・市がチェックし修正してから発行する方式をとるのであれば発行を認める

議会
・議会だよりは市民が必要としているため発行を続けるべきだ
・市長が指摘する内容は明らかな間違いではなく解釈の範囲内であり間違っているとは言えない
・広報委員会でチェックを行い、修正ができるのでもう大丈夫
・市のチェックを経ないと出版できないことは議会の自立権を侵害している

以上が両者の言い分なわけですが、大きく分けると以下のように2つの軸があります。

1.議会だよりは市民にとって必要だから発行するべきか
2.再発防止策として適した方法はどれか

議会での採決の様子を見るに、議会は1に主眼を置いて予算を落とすべきではないと主張しています。
一方で、市長が主眼を置いているのは後者である対策部分です。市長自身も議会だより自体の必要性については認めており、対策(市のチェック)さえできればすぐに予算をつけて発行すると述べています。
したがって、本来的に議会で話し合われるべきだったのは2である「どの対策方法がよいのか」という点です。

議会の主張する対策方法の落とし穴

広報委員でもある田邊議員は自身のyoutubeにおいて「広報委員会でチェックできるようになり、それ以降問題は起こっていない」と主張しています。
実際に問題はそれ以降起こっていないわけで、この主張は一見正しいのですが、実は広報委員会が正しく判断を下せるのか明らかではないという根本的な問題点を解決できていません。

そもそもの話ですが、修正する側である広報委員会が原稿における該当箇所を問題点だと認識しなければ修正は行われません。
つまりこの対策方法で正しい議会だよりが発行されるかは広報委員会が客観的に判断して修正できるかにかかっているわけです。

広報委員会にその能力があるかという問いに対して「現状問題は起きていないから大丈夫」と答えているわけですが、これはほとんど説得力を持ちません。
加えて、広報委員会はとある発言によって信頼値に大きなマイナスがあります。

それは事実認定の部分です。

今回の件に関して、広報委員会では先川議員の要約に対して「解釈の範囲」という意見と「間違った要約だ」という意見が2vs2で分かれ、最終的な結論が出ないままでした。(その後議長によって「間違いはなかった」とされたわけですが)
したがって仮に、現在の広報委員会によるチェック体制だった場合であったとしても、当時の先川議員の文章要約が事前に修正できたとはとうてい思えません。

今回の主張で押し通すのであれば、少なくとも今回の件について広報委員会として結論を出し、今後の修正ラインをしっかりと見せるべきだと思います。
つまり市長が指摘するどの文言をどのように修正するのかという点を示し、市長に納得してもらう必要があると思います。
そこの部分をあいまいにして「修正できるので大丈夫」というのはさすがに難しいと思います。

市長のチェックであれば問題ないか?

一方で私はこれにも問題があると思っています。
市長が異議を申し立てた内容がすべて反映されるとすれば、それは市長に都合の良いように修正されてしまうことになり、例えば市側に都合の悪い質疑に関して無理やり見えにくくすることも可能だからです。
逆に、市長が異議を申し立てた内容を広報委員会が判断して修正するかどうか決定するとすれば、これは先ほどの議論に戻ってしまい、意味のないチェックということになります。

しかしながら上記で言及した内容は逆にも言えるわけで、現状は議会に都合の良いように議会だよりの内容を発行できる状態でもあります。
これは自立権の範疇なのでしょうか?

理想のチェック機能とは?

結局のところ、どちらの方式をとったとしても問題を含んだ議会だよりが発行される可能性は残ります
仮に「第三者機関によってチェックしてもらう」というできる限り客観的な方式を採用したとしても、その第三者機関は信用できるのか、どのように選定するのかという点が問題になると思いますし、コストのかかりかたも跳ね上がるでしょう。

つまり現状、悪意を持つひとがいた場合に悪用されるリスクは残り続けるため、この議論は究極的には出口の見えない問題なわけです。
一方で、客観性を担保するというのは議会だよりとして最低限必要なことですので、どのように客観性を担保するのかについてもう少し議論するべきではないかと思います。

議会だよりの役割と必要な客観性のレベル

そもそも、すべての議論を公平に客観的に知りたいのであれば議事録を読めば済みます。
市のwebページに掲載されていますし、youtubeにも映像自体は公開されており、市民はこれを自由に無料で見ることができます。
最近は切り抜きまとめ動画もたくさん作られており、投稿者の質にもよりますが、ある程度客観的に把握する方法は充実してきていると思います。

あくまで議会だよりは議会で話し合われた内容をざっくりと知りたいという方のためのものであり、要約にすぎないということはもとよりあきらかなことです。
要約という形態である以上、完全な客観的公平にはなりえませんし、それを目指すのであれば膨大な文章量になります。
加えて、仮に議事録に乗っている言葉だけを用いたとしても、取り上げ方によっては印象操作は可能です。
したがって、ある程度の偏りは線引きとして許容したうえで、双方が納得の上で発行されるというのが理想の形ではないかなと思います。

しかしながら、許容できる偏りの程度や双方の納得というのは話し合いが可能である場合に成り立ちます。
安芸高田市の議会と市長の対立は根深いものであり、客観的な理想像を目指した話し合いや、相手に配慮した譲歩などというものはありません。
したがって、理想的な議会だよりを安芸高田市においては発行できないというのはある意味仕方がないのかなとは思います。

安芸高田市民はそこを理解したうえで、議会だよりは目次程度にとどめて、気になる議論に関しては一次情報(議会動画、議事録)をあたるというのが正しい議会だよりの使い方なのではないかなと思いました。
これは市政の動きも同様ですね。
一次情報マジ大事。

さて、安芸高田市についてはこのあたりだと思いますが、これはほかの市町でも同様のものであり、いつ市長と議会の関係が悪くなるか、悪人が紛れ込むか分かりません。
そうなったときのために、客観性の線引きをどこにするか、客観的でなくなった場合にどのように解決するのかという議論は全国的にもう少しあってもよさそうに思います。

個人的には第三者としてメディア等が報道を行うことで市長・議会双方の権力の私物化を防ぐというのがあるべき姿だと思います。
ただ安芸高田市では市長がメディアと仲が悪いため、こういった解決方法も期待できないというのは非常に残念です。

安芸高田市の議会だよりにおける実情と今後

以上、事実ベースで議会だよりの問題点について客観的に取り上げてきました。
双方の言い分について、どちらが完全に正しいといえるものではないというのが私の結論です。
市長の言うようにやった場合も懸念点はもちろんあるし、議会の主張もそれでは通らないと思えるものでした。

ただし、私の主観的な判断でいえば現状の安芸高田市の議会だよりはかなり恣意的な印象操作と取られても仕方ない要約が多いです。

具体的には一般質問のまとめであるにもかかわらず、市長の態度を非難するための切り抜き方であったり、議員個人の主義主張が含まれていたりといった具合です。
議事録に残っている文言ではあるので嘘とまでは言えないですが、かなり悪質な切り抜き方だなと思えるまとめ方になっています。
これについては長くなるので別の記事で書こうと思います。

そして今後について、再議になるということが発表されました。
議会による予算変更(追加)が法的に認められるのかについて審議を行うようですが、どのような議論が起こりどのような決着がつくのか、興味深く見守っていきます。


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