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北九州初代門司駅遺構再開発?

 国の史跡に値し、将来的には世界遺産の可能性もあるといわれる北九州の初代門司駅遺構が同市が進めようとしている周辺の再開発計画によって破壊されてしまう恐れが出ている。
 2024年6月26日、ユネスコの諮問機関のイコモスが、重大な懸念があるとするテレサ・パトリシオ会長名の声明文を出した。
 旧門司駅遺構については、「この都市の起源を物語るものとして多くの学者から評価されている。特に機関車庫の基礎は驚くほどよく保存されており、西洋の近代建築土木技術と日本の伝統的、近世的な建築土木技術が融合した物的証拠となっている」。
 「重要な遺構を破壊することは、たとえ発掘と記録のあとであっても、日本の文化遺産保護政策に反するものだと認識している」として、北九州市と北九州市議会に対し、遺構の破壊をやめて開発計画を見直すよう求めた。
 また、ヘリテージ・アラートと呼ばれる警告文についても発出する可能性を示唆した。(北九州News Webによる)。
 九州考古学会、建築史学会、考古学研究会、産業遺産学会、鉄道史学会、日本イコモス国内委員会、文化財保存全国協議会などの学会が保存要望を北九州市に提出している。


 この遺構は、門司区で北九州市が建設計画を進めている複合公共施設の予定地で見つかったもので、1891年に開業した旧門司駅の機関車庫の基礎部分などとみられている。
 国内で現存する明治期鉄道遺構は極めて少なく、九州では最古。機関車庫の下には、門司の築港・駅建設のために埋め立てられた土地と、もともとの埋め立てではない土地、それらの境界にあった近世の護岸石垣が見出され、明治22(1889)年の埋め立て以前の海岸線が判明している。
 また、埋め立て部分とそうでない部分とでは、煉瓦造機関車庫の基礎工法を変えて施工している様子も明瞭で、鉄道黎明期である明治中期の土木・建築技術の様相を物語る実物史料として貴重だ。
 北九州市は当該地域にある現在の公共施設の老朽化などを理由に挙げ、門司港地区複合公共施設整備事業を進める必要性を強調している。
 この遺構の保存のあり方や複合公共施設の建設をめぐって、市議会でもさまざまな意見が出ているなか、市は、4月半ばに開かれた市議会の建設建築委員会で、発掘調査が行われていないエリアの追加調査を実施することや、遺構が確認された場合には記録保存を行って可能な限り速やかに複合公共施設の事業に着工する方針を示した。
 今年1月25日付記者発表資料によると、「当該遺構の文化財的価値と本事業の重要性を踏まえ、「遺構の保存」と「複合公共施設の整備」の両立を図る」としているが、遺構の一部を切り出した後に建設工事に着手して、2027年度中の供用開始を目指すとのスケジュールを示している。
 同日の記者会見で武内和久北九州市長は全面保存を望む声や遺構と建設予定の建物との共存を図る努力を求める意見などがあったことを認めたうえで、土木学会の専門家の現地視察を踏まえての意見を紹介した。
 「機関車庫や一部の石垣などの遺構は当時の門司駅開業当時のもの、可能な限り現地に遺構を残すための努力が必要であるというふうに考える」。
 「しかしながら、現実的には遺構の保存と建設計画との両立を図る必要があり、遺構の全てを残すことは難しいと考えられる」。
 「今回発見されたものは、当時の駅関連建物としては一般的な建物であり、特別な意図や象徴的な意味を持つものではない」。
 「遺構を現地に残すための努力として、部分的に残すというのもひとつの手であり、また、工法上の制約などでどうしても遺構を残すことが難しいと言うのであれば遺構の一部移築保存を行うことも考えられる」。 
 すなわち遺構全てを残すつもりはないというのだ。

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