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京都橘高校吹奏楽部便り③

 2024年3月24日(日)、京都橘高校吹奏楽部の記念すべき第60回定期演奏会もついに最終日を迎えた。連日、会場の「滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール」は満席で熱い声援が送られた。
 台湾からもファンが駆けつけていた。
 今日でフィナーレ。3年生は進学や就職する人たちなど新たな旅立ちの時を迎える。その前に高校時代の青春の集大成ともいえる発表会だ。その門出にOB合同スペシャルステージが中盤に用意されている。
 第一部はコンサートステージだ。兼城先生は黒の燕尾服で登場した。
 まずは團伊玖磨作曲の「祝典行進曲」。司会から「今年は團伊玖磨さんの生誕100年。それを記念して選びました」との説明があった。
 「パガニーニの主題による狂詩曲」そして「トゥーランドット」が演奏された。ここからは「ポップスステージ」となる。
 「「魔女の宅急便」セレクション」がまずこのセクションで演奏された。1989年公開のスタジオジブリ映画「魔女の宅急便」の音楽は作曲家久石譲の手による。打楽器やウッドベースによる音表現からダイナミックな音風景へ。そして弾むような表現から静かな情緒を醸し出す音へ。
 いろいろな変化がある演奏だった。

「We are the world」を披露
 続くは1985年にマイケル・ジャクソンなど世界に名を知られるようなスーパースター45名が参加したチャリティソング「We are the world」が披露された。もともとはアフリカの飢饉対策と貧困撲滅を目的としていた。
 まず4人のトランペットが前に出て演奏を始めて、徐々に皆が奏でる様々な楽器の音が溶け合って一つの音のハーモニーとなり、それはちょうど有名アーティストたちが合わせた声を凌駕するかのようにも聞こえた。


 この後、OB合同スペシャルステージが控えているが、準備の間に「いい日旅立ち」が演奏された。これは谷村新司作で山口百恵の歌唱で知られている曲。JRのキャンペーンソングともなった。
 OB合同スペシャルステージでは、71期から122期まで50年間の卒業生と現役生あわせて約180名が演奏する。「卒業してから何年経っても私たちを応援して下さり感謝しています」と謝意が述べられた。
 そしてOB・OG約80名を含むメンバーは「となりのトトロ~コンサート・バンドのためのセレクション~」を奏でた。
 1988年に公開された宮崎駿監督のファンタジー映画の曲たちだ。メドレーの冒頭は「風の通り道」、続いて「さんぽ」「五月の村」「すすわたり」「ねこバス」そしておなじみの「となりのトトロ」となった。
 客席では子どもたちが身を乗り出して聞き入っていた。

 ハープ後ろからの全景

 マーチングステージは「Winter Games」で幕を開けた。
 まずはブルーの衣装だ。
 続いて松田聖子をスターダムに押し上げた1980年のヒット曲「青い珊瑚礁」。オーティス・レディング作曲の「I can't turn you loose」で、これは映画「ブルースブラザーズ」で使われた。
 そしてフランキー・ヴァリが作り、のちにボーイズ・タウン・ギャングがカバーしてリバイバル・ヒットした「君の瞳に恋してる」。
 アンニュイなイントロから始まった「サマータイム」。多くのアーティストたちにカバーされている名曲だ。ゆっくりと始まり、アップテンポに変わっていく編曲の妙が味わえた。
 Earth Wind & Fire(EW&F)のヒット曲「September」では大いに観客席が盛り上がるとともに、生徒たちはステージ上で見事なステップを見せた。
 「Think」では ”アラート”を発しているかのような切迫感を感じさせる音模様を見せる場面もあった。


 ドラムメジャーからの挨拶があった。今年のモットーは「Reach the Peak」だったと話し、コロナによる制限が緩和されて多くの出会いが生まれたという。台湾遠征もあった。
 「今日でこのメンバーで演奏するのは最後になるが、最後まで全力で頑張るので最後までお楽しみください」と述べた。
 ここで祝電が読み上げられた。台湾の蔡英文総統からの祝電もあった。
 ここから3曲。まず、クール&ギャングのヒット曲「Celebration」。ノリのいいソウルの楽曲が続き「Uptown Funk」。これはソウルの女王アレサ・フランクリンの代表曲だ。
 そして「Amazing Grace」を3年生だけで演奏した。
 音に心は出る。心は音に出る。
 横に一列に並び前に進み出る。隊列を組みなおしてまた前へ。

いよいよフィナーレへ
 フィナーレだ。
 ここで吹奏楽部長からの挨拶があり、感極まりつつも、共に歩んだ仲間たちへの想いや指導してくださった顧問の兼城先生そして応援しているファンの方々への謝意をしっかりとした言葉で述べた。
 3日間を締めくくるエンディング・テーマはロッド・スチュアートが歌った「セイリング」。京都橘高校の校旗が登場した。

京都橘高校校旗

 「セイリング」が終わると「もう一曲お付き合いください」とあり、カーペンターズで知られる「青春の輝き(I need to be in love)」が始まった。
 旅立ってゆく3年生たちの名前を顧問の兼城先生が一人一人読み上げるなか、一人一人ステージを去ってゆく。先生とみなハイタッチしてゆく。
 ステージを降りる一人一人に花束が贈られた。
 そのBGMが1,2年生が演奏する「青春の輝き」だった。
 この歌にはこんな詩があるーー「人生で一番つらいことは/信じ続けること/こんなおかしな世界にも/運命の人がいるってことを」。
 「I need to be in love」ーどんな人でも愛に包まれないといけない。もちろん、家族の愛、友人の愛などに包まれているのだろう。でもさらに、それとは一味違う「同志」愛に包まれる仲間たちとの運命の出会いの場が京都橘高校吹奏楽部だったのではないか。
 ”同じ学び舎”で”同じ部活”で”同じ釜の飯”を食った縁(えにし)。
 そんな”偶然という必然”を奏でているようだった。必然というのは常に偶然という衣をまとってやって来るのだ。出会うべきして会った。
 残る1,2年生たちが先輩たちを送り出す格好で、まさに「青春の輝き」をともにしたかけがえのない仲間たちへの音の贈り物だった。
 花束を贈られた3年生たち。最後にステージを去った部長は兼城先生に万感の思いを込めて大きな大きな花束を贈った。

顧問の兼城先生より万感の想いを込めて
 ここで兼城先生が挨拶に立った。
 「近年、世界では不安なことや悲しいことが起きていますが、日頃この高校生たちと過ごしていると未来は悪くないなと感じます」。
 「世の中が便利になって顔色一つ変えずに何でも出来ているようだけど、この子たちは難しい時は難しい顔をするし、よく泣くし、そういう人間的な営みをしつつ、一生懸命に頑張っている。その姿はいつも感動的です」。
 そして兼城先生は言ったーー「出来ないことが出来るようになった時のみんなの笑顔は本当に私の宝物です」。

顧問の兼城裕先生




 

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