見出し画像

3.27原子力規制委会合

 2024年3月27日(水)に行われた原子力規制委員会の会合で「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」の設置が了承された。
 今年初めに起きた能登半島地震によって家屋が倒壊したり道路が寸断されるなど原子力災害対策指針で想定する屋内退避などが困難な状況が発生したことから設置が考えられていたチームだ。
 今回の震源近くには北陸電力志賀原発がある。
 同チームは「原子力施設で現実に想定される事態進展」や「屋内退避の開始時期や対象範囲のあり方、また屋内退避の実施継続期間」を検討する。
 説明に当たった長官官房放射線防護グループ放射線防護企画課の新田晃課長は「チームで事態進展について議論される」とした。
 だが同時に「事務局として事態進展について、例えば炉心損傷はしますが、重大事故対策として格納容器の破損防止措置が行われ、フィルターベントが用いられて、放射性物質が放出されたり格納容器から放射性物質が漏洩する事態が課題だと思っている」と新田課長は述べた。
 それに加えて検討するのは、「屋内退避の解除または避難・一時移転への切り替えを原子力規制委員会が判断する際に必要となる原子力施設の状況および原子力施設周辺の状況の情報や判断のタイミングの考え方」だ。
 伴信彦委員から「自然災害との複合災害時の対応についても議論するのか」との質問があった。それに対して新田課長は「具体的にどう議論されるかは検討チームで議論することを想定している」とした。

来年3月末までに検討結果を取りまとめ
 同チームの第一回会合は2024年4月中に開催し、2025年3月末までに検討結果をとりまとめることを目指すという。
 同チームの会合は公開で議論され、資料も原則として公開される。また必要に応じて、関係者らからの意見を聴取する。
 自治体関係者として、宮城県復興・危機管理部原子力安全対策課と敦賀市市民生活部危機管理対策課からチームに参加する。
 原子力規制委員会からは伴、杉山智之両委員、原子力規制庁からは児嶋洋平長官官房審議官(放射線防護グループ長)ら13名、内閣府(原子力防災担当)から2名、外部専門家4名が参加する予定。
 外部専門家4名は以下の通り:
〇3.11後、住民被爆線量調査を行っている栗原治氏(量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 放射線医学研究所 計測・線量評価部長)
〇被ばく線量評価シミュレーションを行っている高原省五氏(日本原子力研究開発機構 安全研究・防災支援部門 安全研究センター原子炉安全研究ディビジョン リスク評価・防災研究グループリーダー)
〇3.11後の医療支援や避難による健康被害の研究に携わっている坪倉正治氏(福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座 主任教授)
〇シビアアクシデント評価を研究している丸山結氏(日本原子力研究開発機構 安全研究・防災支援部門 JAEAフェロー)

関電および関連会社社員の技術力低下
 さらに原子力規制員会は関西電力高浜原発(福井県)3号機における追加検査の結果の報告を受けた。これは同原発3号機タービン動補助給水ポンプ制御油系統のオイルフィルタ蓋部からの油漏れの問題に関してだ。
 関電は直接原因について「パッキンが軸芯からずれた状態でオイルフィルタ容器に取り付けられたことが問題であるとし、その状態でボルトを締め込んだことにより、パッキンがオイルフィルタ容器内側にずれ込み、胴と蓋のシート面に隙間が出来たことにより漏えいに至った」と特定していることを確認したと原子力規制庁原子力規制部検査グループ実用炉監視部門の村田真一統括監視指導官から説明された。

関電高浜原発3号機


 また、背景要因および根本原因として、関電から「組織におけるリスク管理の弱さ」「関西電力社員の技術力低下」「協力会社員の技術力低下」などが挙げられたと村田氏から報告があった。
 「リスクレビュー会議」というものがあるが開催頻度が低い、また関電社員の机上での資料作成能力は向上したが、「現場に行くことができず設備の運用状況および点検上状況を把握する能力が下がった」という。
 さらに「協力会社内のベテラン層の退職などにより点検作業に熟練した人材が少なくなってきていることに加えて、プラント長期停止に伴いプラントの運転に向けた作業機会が減少していたことで、現場の機器の点検作業の経験が不足している状況となっていた」とされた。
 杉山委員から「個人社員の技術力低下をもたらしている状況こそが根本原因ではないのか」との問いがなされ、関電および関連会社の「社員に対して失礼ではないか。士気が下がるのではないか」と述べた。
 
福井地裁が高浜原発について判断する予定
 高浜原発の1号機から4号機と、関電美浜原発(福井県)3号機について、原発に反対する住民たちが老朽化を問題視して事故の危険性などを主張して運転をしないよう求めている仮処分の申し立てに対し、福井地方裁判所が2024年3月29日に判断を示すことになっている。
 原発の運転は東電福島第一原発事故の後、原則40年に制限されてきた。
 しかし、高浜原発1号機と2号機、それに美浜原発3号機は、原子力規制委員会の認可を受け、運転開始から40年を超えて再稼働している。
 また、高浜原発3号機、4号機は2025年で運転開始40年になる。
 住民が美浜原発3号機について運転をしないよう求めていたが、大阪高等裁判所は2024年3月15日にこの仮処分申し立てを退けた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?