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不思議世界 デ・キリコ展

  シュルレアリスム芸術に大きな影響を与えたジョルジョ・デ・キリコのおよそ70年にわたる画業を80点以上の作品で堪能することが出来る、日本では10年ぶりの大規模な回顧展がやって来る。
 簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながらも、歪んだ遠近法、モチーフの脈絡のない配置、幻想的な雰囲気によって、日常の奥に潜む非日常を表した映画を描き始めたデ・キリコ(1888-1978)。
 それら1910年代の作品は後に「形而上的絵画」と名づけられ、サルバドール・ダリやルネ・マグリットといった後のシュルレアリスムの画家をはじめ数多くの芸術家たちに衝撃を与えた。
 1919年以降は、伝統的な絵画技法に興味を抱くようになり、古典絵画の様式に回帰していく。同時に、以前の形而上絵画の題材を取り上げた作品も頻繁に制作するなど、90歳で亡くなるまで創作を続けた。
 「デ・キリコ展」は2024年4月27日(土)から8月29日(木)まで東京都美術館(東京・上野公園)にて開催される。


 開室時間は午前9時半から午後5時半、金曜日は午後8時まで。入室は閉室の30分前まで。休室日は月曜日と5月7日(火)、7月9日(火)~16日(火)。ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)、7月8日(月)、8月12日(月・休)は開室。
 観覧料については詳細が決まり次第、展覧会公式サイトなどで告知する。
 この展覧会は2024年9月14日(土)から12月8日(日)まで神戸市立博物館に巡回する予定となっている。
 問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)まで。公式サイトは https://dechirico.exhibit.jp/

〇「自画像・肖像」ー 最初のセクションでは、肖像画とりわけ自画像に注目する。画業の初期から取り組んできた自画像は、過去の巨匠たちと作品との対話において最も重要なテーマのひとつ。デ・キリコは自画像において、様々な衣装をまとい自己を演出している。

 


〇「形而上絵画」-1910年代に描き始めた非日常、神秘あるいは謎を表した絵画を描き始める。ニーチェの哲学に影響を受けたその作品群は、のちに自ら「形而上絵画」と名づけ、シュルレアリストなど多くの芸術家たちに影響を与えた。


〇「イタリア広場」ー 1910年にフィレンツェに移ったデ・キリコは、ある日、見慣れたはずの街の広場が、初めて見る景色であるかのような感覚に襲われた。これが形而上絵画誕生の「啓示」となった。「イタリア広場」のシリーズは、その原体験と密接に関係しており、柱廊のある建物、長くのびた影、不自然な遠近法により、不安や空虚さ、憂愁、謎めいた感覚を生じさせる。


〇「形而上的室内」ー デ・キリコは第一次大戦勃発により軍から召集される。1915年にフェッラーラの病院に配属となった。そこで彼は、この町の家の室内、店先のショーウインドウなどに魅せられて、室内画を制作していく。このシリーズは、線や四角、箱、地図、ビスケットなどのモティーフを組み合わせて構成された。

 


〇「マヌカン」ー「形而上絵画」において、マヌカン(マネキン)をモティーフとして取り入れた。これによって、古典絵画において重要なモティーフであった人物像を他のモティーフと同じモノとして扱うことが可能となった。マヌカンはしばしば、謎めいたミューズたち、予言者や占い師、はたまた自画像など、様々な役割を演じている。

 
 
 


〇「1920年代の展開」-1920年代、デ・キリコは従来のマヌカンに加え、「剣闘士」などの新たな主題にも取り組む。その新しい主題のひとつが「室内風景と谷間の家具」。これらの作品では、海や神殿、山々など、本来は外にあるはずのものが天井の低い部屋の中にあり、逆に室内にあるべき家具が外に置かれており、ちぐはぐで不穏なイメージを作り出している。

〇「絵画伝統への回帰:ネオバロック時代」-1920年ごろから、ティツィアーノやラファエロ、デューラーといったルネサンス期の作品に、次いで1940年代にルーベンスやヴァトーなどバロック期の作品に傾倒し、西洋絵画の伝統へと回帰していく。過去の偉大な巨匠たちの傑作から、その表現や主題、技法を研究し、その成果に基づいた作品を描くようになる。

 

〇「新形而上絵画」-1978年に亡くなるまでの10年余りの時期に、デ・キリコはあらためて形而上絵画に取り組んだ。それらは「新形而上絵画」と呼ばれ、若い頃に描いた広場やマヌカン、そして挿絵の仕事で描いた太陽と月といった要素を画面上で総合し、過去の作品を再解釈する新しい境地に到達していく。

 
 
 

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