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特別展「雪舟伝説」

「画聖」と称される雪舟。6件もの作品が国宝に指定されており、個人としては最多。間違いなく日本美術史を代表する画家の一人である。
 雪舟の高い評価はいかにして形成されてきたのだろうか。雪舟とその作品に対し歴史的に積み重ねられてきた評価の上に今日の高い評価があるのはいうまでもない。その雪舟が受容されてきた歴史を辿っていく。
 特別展「雪舟伝説ー「画聖(カリスマ)」の誕生ー」が2024年4月13日(土)から5月26日(日)まで京都国立博物館にて開催される。
 京都国立博物館の松本信之館長は「雪舟展ではなく雪舟伝説であることに注目してください。雪舟は後世の教科書に載るほどに有名な画家になります。その雪舟伝説を探ります。画家たちの作品を見比べることによって雪舟像を探ろうという展覧会です」と2023年9月27日に都内の清澄庭園・大正記念館で行われた記者発表会で話した。
 「この展覧会には雪舟の国宝6点がすべて揃います。また雪舟に影響を受けた、あるいは雪舟を慕う、桃山から江戸にかけての超一流の画家たちが揃っています」と松本館長は続けた。

松本信之・京都国立博物館館長

 京都国立博物館の福士雄也・主任研究員は「雪舟は古くから高く評価されてきました。桃山、江戸、近世における雪舟を辿り、今の評価がどのように形成されてきたのかを考える展覧会です」と話した。
 「同じ会場の中に雪舟と彼に影響を受けた人の作品を展示することによって、比べることが出来ます。それによって影響が分かるのです」。

京都国立博物館の福士雄也・主任研究員

〇第1章「雪舟精髄」ー国宝6件が一堂に会します。

国宝 秋冬山水図 雪舟筆  東京国立博物館蔵 室町時代(15世紀) 通期展示 
国宝 天橋立図 雪舟筆  京都国立博物館蔵 室町時代(16世紀) 通期展示

〇第2章「学ばれた雪舟」ー後世に大きな影響を与えた作品に注目します。現在でも雪舟の作品だと伝えられる「伝雪舟筆」も含まれる。

〇第3章「雪舟像の継承ー雲谷派と長谷川派」ー雪舟の後継者とみなされていた雲谷等顏(1547-1618)と長谷川等伯(1539-1610)。雲谷は雪舟と同様のモチーフを好んで用いた。また等伯は自分の落款の中で「雪舟より五代」とわざわざ表現したくらいであった。

竹林七賢図屏風(右隻)長谷川等伯筆  京都・両足院蔵 桃山時代 慶長12年(1607 通期展示

〇第4章「伝説の始まりー狩野派の仕事ー」ー雪舟の神格化に最も寄与したのは狩野派。狩野探幽(1602-1674)は雪舟に学んで自己の様式を研究しました。長福寺蔵の《山水図屏風》はモチーフにせよ濃い墨の使い方にしろ雪舟風で、若い頃から探幽はそういうものを描いていた。

富士山図 狩野探幽筆  江戸時代(17世紀) 通期展示
探幽縮図 雪舟筆自画像模本 狩野探幽筆  京都国立博物館蔵 江戸時代(17世紀) 通期展示

〇第5章「江戸時代が見た雪舟」ー「雪舟」が数多く流通したのが江戸時代。いかに高い需要があったかということ。現在認められている作品を含めて、当時の人にとっての雪舟像を形成するのに役立った作品を紹介する。

富士三保図屏風 曾我蕭白筆  滋賀・MIHO MUSEUM蔵 江戸時代(18世紀)通期展示
富士三保松原図 原在中筆  静岡県立美術館蔵 江戸時代 文政5年(1822)通期展示
駿州八部富士図 司馬江漢筆  江戸時代 寛政元年(1789)通期展示

〇第6章「雪舟を語る言葉」ー資料の紹介。狩野探幽は雪舟の画風を学んだと書いている。また江戸に滞在していた光琳からの手紙には「毎日雪舟の絵を見て、ずいぶん写しました」と書かれている。これは江戸での雪舟の人気を物語る貴重な資料だ。

〇第7章「雪舟受容の多様化と広がり」ー宋元画を主に規範とする漢画系の画家だけでなく様々な画家たちに影響を与えた雪舟。山口雪谿の号は雪舟の「雪」と牧谿の「谿」の一字ずつとったもの。春画にも雪舟が「登場」する。《初宮参図巻》(部分)は江戸時代の春画だが、画中に「山水雪舟筆」と書かれた箱が見える。これは格の高いものとして雪舟作品が認識されていたことを示しているものである。

初宮参図巻(部分)勝川春草筆  北海道・似鳥美術館蔵 江戸時代(18世紀)通期展示
竹梅双鶴図 伊藤若冲筆  東京・出光美術館蔵 江戸時代(18世紀)後期展示 5/8~5/26

 展覧会全体では国宝7件、重要文化財13件を含むおよそ90件が展示される予定。30名を超える画家が登場する。

 この展覧会は前期が2024年4月13日(土)から5月6日(月・休)までで、後期は5月8日(水)から26日(日)まで。開館時間は午前9時から午後5時半まで(入館は閉館30分前まで)。休館日は月曜日(ただし、月曜日が祝日・休日の場合は開館し、翌火曜日が休館)。
 観覧料は後日発表される。
 なお、この展覧会は巡回しない。
 展覧会公式サイトはhttps://sesshu2024.exhn.jp

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