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映画「春画先生」

 「性器ばかりに気をとられないで。ここにはそれ以外にも多くのことが描かれている」、「春画というのは、この地球上のすべての生命の貫通と結びついている」ーともに主人公の春画先生の言葉だ。
 これらの言葉こそが映画「春画先生」(2023年/監督・脚本:塩田明彦/114分)が言わんとしていることのエッセンスだと思った。
 江戸文化の裏の華である”笑い絵”ともいわれた春画の奥深い魅力を、まじめに説く変わり者の春画研究者と、しっかり者の弟子という子弟コンビが繰り広げる春画愛をコミカルに描く作品である。


 春画は江戸幕府の禁制品で表に出ないものだったからこそ、自由な創作が可能となり、とどまることを知らぬ芸術の域に達して、庶民から大名までを虜にした真の江戸時代のエンターテイメントだった。
 明治時代以降、西洋化でのキリスト教文化流入以前の日本人が持っていたとされる、性をおおらかに肯定する精神が横溢している。


 2023年10月13日(金)全国ロードショー。この作品はマスコミにまずは興味本位で取り上げられるだろう。というのも、これまで春画というのは日本映画でもタブーとされて性器部分の描写は映倫審査でぼかし加工が必要だったのが、無修正春画画像の上映が可能になったからである。
 この作品は映倫審査で区分【R18+】の予想をあっさり裏切り、R15+で世に送り出すことが承認されたのだ。
 原作・監督・脚本の塩田明彦はコメントした。「江戸時代、”笑い絵”とも呼ばれた春画の世界は、男性同士はもちろんのこと、致す前の男女、さらには女性同士までが顔つき合わせ、笑い、楽しむものでした。そうした日本の春画の知られざる美しさや艶やかさ、どこまでも陽気な人間賛歌とでもいうべき春画の魅力を少しでも多くの人々に知って頂きたい。その一心で、わたしたちはこの映画を作り上げました」。
 「笑って笑って、ちょっとエロくて、でもやっぱり笑ってしまう。そんな楽しい映画に仕上がったと自負しております」。

  


 プロデューサーの小室直子さんは言う。「いったい、モラルとポリティカル・コレクトネス視点で創作物を分析してその場で”アウト”のレッテルを貼ることは何なのだろうか?多様性の時代と言われると同時に、なにか厳しく息苦しい現代に、春画から投げかけられる何か、それが映画にできれば」。
 「春画先生」芳賀一郎役は内野聖陽。「初めて脚本を読んだとき、性愛についての奥深さを感じさせるちょっと笑える、微笑ましい「おとぎ話」のような感覚を持ちました。春画先生という役は、普通の人にはない距離感の人で、大きな喪失感をもってますけど、とても愛すべき研究者だと思いました」と内野さんはコメントした。

春画解説をしている一郎


 弟子の春野弓子、北香那(きたかな)は「登場人物は皆、それぞれの幸せを掴むために真っすぐに向かっていくけれど、その姿がどこか異様で微笑ましく、じわじわと滲み出てくるような魅力と面白さがあります」と話した。

弓子


 春画先生の弟子にして編集者、辻村俊介を演じるのは柄本佑(えもとたすく)。先生の家のお手伝いさんである本郷絹代を演じるのは白川和子(しらかわかずこ)で、日活ロマンポルノ「団地妻」シリーズで人気を獲得し、映画やテレビ、舞台を中心に活躍し、田中絹代賞を受賞した俳優だ。

辻村俊介 
本郷絹代


 春画先生の今は亡き妻、藤村伊都と双子の姉一葉を演じるのは安達祐実(あだちゆみ)。「私が演じた藤村一葉は、芳賀と弓子を更なる深みへと誘い込む役です。三人の関係はとても特異ではありますが、芳賀と弓子にとって、一葉はなくてはならない存在であり、そこに流れている愛や時間はとても尊いものだと思えてきます」と述べている。

妖艶なタイトドレス姿の怪しげな一葉



 

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