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カネミ油症は次世代にも

 全身に吹き出物が出たり頭痛に悩まされるなどさまざまな症状を引き起こすカネミ油症が、原因物質であるPCB(ポリ塩化ビフェニール)を直接口にしていない子どもらにも発症することが分かってきた。
 カネミ油症被害者支援センターの佐藤禮子共同代表が、2024年6月14日(金)に「かふぇ&ほーる with 遊」(東京都杉並区荻窪3-46-13)で開かれたカネミ油症・映画の上映会の終了後に話した。
 「食べていない世代にも同じような症状が出てきて、国でもそのことを気にかけています。ただ、いちいち因果関係を立証していては(病状を)抱える人たちを救えない。だから基金のようなセーフティネットを作らなければいけないと考えています」と佐藤さん。
 佐藤さんによると「化学物質は世代を超えて」というパンフレットを配ったところ、エピジェニック(後世遺伝学)の専門家が「動物の世界ではあったが、人間でも起こるのか」といった反応があるという。
 佐藤さんはいう、「カネミ油症は未知の世界を教えてくれた。人類にとっての負の遺産です。被害者に学ぶこと、それ以外に道はない」。
 今回の上映会の世話役であり、カネミ油症・映画を撮っている金子サトシ監督は、国は調査をするといっているが、救済についてはどうか分からないというスタンスで「データ収集だけなのか」という。

カネミ倉庫構内の従業員寮に向かい呼びかける患者ら(映画「生木が立枯れていくごたる」より)


 子どもがカネミ油症を発症するというと生む女性の側の問題だと考えられがちだが、子どもを10か月10日包み込む胎盤を経由してだとされており、胎盤は男性の精子ー遺伝子とDNAから出来ている、と佐藤さん。
 昨今は精子の劣化もいわれており、胎盤をPCBが貫通してしまい、次世代にカネミ油症を引き起こさせてしまうという。
 カネミ油症事件は1968年に発覚した。カネミ倉庫が製造した食用米ぬか油に、製造工程で熱媒体として使われていたカネカ(当時は鐘淵化学工業)製のPCBが混入したことで起きた。
 この件をきっかけにPL法(製造物責任法)が出来たが、カネミ油症に関しては今この法律でカネカを裁くことは出来ないという。
 カネミ油症は福岡、長崎、広島など西日本一帯で多くの被害者が出た日本最大級の食中毒事件。
 PCBの加熱によってダイオキシン類が生成されることがのちに判明し、PCB中毒では見られなかった深刻な身体の異変に苦しめられた。

会社側ともめる患者たち(映画「遺民」より)


 佐藤さんは「いろいろな化学物質の毒性なんて人類には分からない。それなのにどんどんと化学物質を開発しているんです」と話す。
 同日上映されたのは「遺民」(1974年、監督:鈴木賢二、初瀬潤、松山高一、中村恒夫)と「生木が立枯れていくごたる」(1976年、監督:岡田道仁)の2本。「カネミ油症が発覚してから本当に初期の闘いの様子が描かれており、なかなか見る機会がないものです」と金子監督。
 どちらのドキュメンタリーでも被害者は国、役所、世間のどれも真剣には取り合ってくれない悲劇を口にしている。ある患者は「我々は国が助けてくれるものだと思っていたが、間違いだった。善人を苦しめ悪人を助けてきたのが国だ」と話していた。世間も「無関心」だという。
 その構図は今も基本的に同じだと佐藤さんはいう。

映画上映会となった「かふぇ&ほーる with 遊」

 なお同じ会場で6月21日(金)午後7時から金子サトシ監督のカネミ油症・映画「食卓の肖像」(2010)が上映される。103分。
 要予約。予約先は金子監督でメールは n3946062@yacht.ocn.ne.jp あるいは電話で:090-1793-6627まで。



 
 
 
 

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