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岩下志麻は「楷書」である

 名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」(東京都杉並区阿佐ヶ谷北2-12-21)の企画「昭和の銀幕に輝くヒロイン」の一環として、岩下志麻さんが出演している映画が、2023年7月1日(土)まで特集上映されている。
 期間中、午前10時半からの「モーニングショー」1回のみの上映で次のような作品が紹介されている。ラピュタ阿佐ヶ谷の電話は03-3336-5440でホームページ(http://www.laputa-jp.com/)もチェックされたし。

『素敵な今晩わ』(1965年)-野村芳太郎監督、出演:犬塚弘、ハナ肇、中村晃子、楠侑子、村田知栄子、桜井センリ、渡辺篤、武智豊子
『暖流』(1966年)ー野村芳太郎監督、出演:倍賞千恵子、平幹二朗、仲谷昇、岸田今日子、小川真由美、笠智衆

『智恵子抄』(1967年)ー中村登監督、出演:丹波哲郎、平幹二朗、中山仁、南田洋子、岡田英次、佐々木考丸
『あかね雲』(1967年)ー篠田正浩監督、出演:山崎努、佐藤慶、小川真由美、日高澄子、宝生あやこ、花柳喜章、野々村潔

『女の一生』(1967年)ー野村芳太郎監督、出演:栗塚旭、左幸子、田村正和、竹脇無我、宇野重吉
『日も月も』(1969年)ー中村登監督、出演:大空真弓、久我美子、石坂浩二、中山仁、香山美子、松岡きっこ、入川保則、森雅今井之、笠智衆
『婉という女』(1971年)ー今井正監督、出演:中村賀津雄、緒方拳、河原崎長一郎、江原真二郎、山本学、北大路欣也

『心中天網島』(1969年)ー篠田正浩監督、出演:中村吉右衛門、加藤嘉、藤原鎌足、浜村純

  一般社団法人共同通信社の立花珠樹(たちばな・たまき)・編集委員の著書「岩下志麻という人生」によると、夫で映画監督の篠田正浩さんは岩下志麻さんを「楷書の女優」と称した。
 篠田さんは説明したー「角張った枠組みを必然的に持ってしまっている女優」、「最初に自分個人で自分を造形してしまいます」、「与えられた台本のせりふを、まず正確に発声しようというのが基本的にあった」。
 「確かに、岩下には「うまい女優」なんていうレトリックは似合わないんだけど、それは欠点ではなく特性なんですよね。岩下のせりふの言い回し、ダイアローグには、彼女しかつくれないスタイルやリズムがあります」と篠田さん。
 さらに付け加えて、「もう一つ大事なことは、楷書であるということは、言い換えれば、クラシックを演奏できるプレーヤーだということなんですよ。だから、彼女は『心中天網島』や『鑓の権蔵』で近松門左衛門というクラシックを演ずることができたんです。クラシックはだれもが演じられるわけではないんですよ」。

 岩下志麻さんは1941年、東京生まれ。女優としての初出演はNHKドラマ『バス通り裏』(58年)。60年の『乾いた湖』で映画デビューした。
 62年には小津安二郎監督の遺作となる『秋刀魚の味』のヒロインに抜擢される。66年に映画監督の篠田正浩さんと結婚。2人で「表現社」という独立プロダクションを立ち上げる。『心中天網島』(69年)が大ヒット。
 77年には『はなれ瞽女おりん』に主演し、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、キネマ旬報賞女優賞など多くの賞を受賞。
 その後も、愛人に産ませた子どもを次々に殺していく夫婦を描いた『鬼畜』(78年)、裁判で桃井かおりさんが演じる「悪女」を弁護する弁護士を演じた『疑惑』(82年)などの作品で話題をさらう。
 86年からは「極道の妻たち」シリーズに出演。
 2004年、紫綬褒章を受章。2012年には旭日小授賞を受賞。

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