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夏と秋の狭間に吹く風が 一足早く夕暮れを連れてくるようになった。 あんなに毎日響いていた蝉の合唱が いつしか静かな鈴虫の調べになっていた。 そうやって 巡っていく。 そっと 変わっていく。 季節も、 世界も、 私も。
過去の奇跡にすがりついていた。 「さよなら」って手を振ったら また真っ暗闇に引き戻されるんじゃないかって 怖かったんだ。 でも、 もう、あの頃の私じゃない。 ちゃんと進んで来たよ。 目を開けて。 大丈夫。 手をはなしても 私は私で 立っていられるから。