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『ペイ』
「なあ……」
「はい」
「『ペイ』って何だ?」
「……『ペイ』? ああー……」
「恥ずかしいんだが、何のことかよく分からなくてなぁ」
「えっと……数学のやつですよ。忘れちゃったんですか? ほら、3.14の代わりの……」
「それはお前、『パイ』だ」
「……あれです。金魚すくいの紙で出来ているやつ」
「それは『ポイ』な」
「すみません……。自分も分かりません。知ってるふりしました」
「お前はそれっ“ぽい”よな」
「あ、よくお店に表示されているやつですね」
「ああ。だがよ、その店内を探してもどこにもねぇんだよ」
「食べ物じゃないですか? ほら、よく『スイカ』ってわざわざ表示している店増えているじゃないですか」
「最近は夏でもないのにスイカ売ってんのか」
「分かりましたよ! こん“ぺい”とう、のことじゃないですかね?」
「ばぁか。それは空で光ってるやつだろ。というか食べもので決まりなのか?」
「お店の人に聞いてみたらどうです?」
「いや聞いてみたんだが、『自分は担当じゃないので分かりません』だとよ」
「……待ってくださいよ? 担当じゃないってことは『その人はペイさんじゃない』ってことじゃないですか?」
「何? 『ペイ』って人の名前なのか?」
「いや、分かんないですけど」
「……しかし、その可能性はあるな。
……待てよ。ってことは、店に『ペイ』って表示しているってことは……?」
「『その店にはペイさんがいる店です』ってことですよ!」
「なるほど! そういうことだったのか。凄い人だな『ペイさん』って」
「多くの店にいることになりますからね」
「………いや、かなりの数になるぞ? 俺の近くのコンビニにも『ペイさん』がいますって表示があった」
「あ! 自分の近くのところもです!」
「つまり何だ。世の中『ペイさん』だらけってことかぁ?」
「知らない間に世の中『ペイさん』だらけになっていますよ!」
「おい! 待て! ……いいか、ここからは小声で話せ」
「……はい」
「……もしかして、この日本、いや地球は『ペイさん』に侵略されつつあるんじゃないか?」
「ええ!? 侵略?!」
「ばか! 声が大きい!」
「……じゃあ何で世の中騒ぎになっていないんですか?」
「……政府が隠“ぺい”しているのかもな。もしくは洗脳されているのかもしれん」
「ひぇぇ……」
「何とかしないとな。……これに気がついたのは俺たちだけだぜ」
「……武器とかあった方がいいですか?」
「そりゃ、あったほうがいいが……」
「じゃあ、自分集めてきますよ」
「あ? どうやって?」
「自分ちょっと裏ルートあるんで。すぐ用意できますよ」
「お前何者だよ……」
「ではちょっくら調達してきます!
……はい」
「……………………なんだ、その手は」
「自分、いま持ち合わせないんで」
「しょうがねえなぁ。
………あ、しまった! 財布忘れた」
「も〜ダメじゃないですか」
「あ〜あ、財布がなくても、スマホが財布がわりになってくれればなぁ」
「それだと楽そうですね。……仕方ないですねぇ、僕が自分で払いますよ」
「え、お前持ち合わせがないんじゃ……」
「カードはあるので」
「じゃあ初めからお前が出せよ!」
「自分、あまりカード使いたくないんですよね〜」
「現金なやつだな」
おしまい
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