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落語日記 仲良し四人組がゲストを呼んで新春を寿ぐ落語会

2023RAKUGOもんすたぁずスペシャル公演 新春寄席
1月22日 古石場文化センター
毎回通うこの会が、毎年正月にゲストを迎えて開催する特別公演。今回のゲストはこの日主任の志ん陽師匠のご指名で、同じ古今亭一門から桃月庵白酒師匠。
昨年の新春寄席はゲストが古今亭菊之丞師匠だったが、私は欠席。一昨年のゲスト一之輔師匠の会以来の参加。客席は、おそらく常連さんでいっぱい。
 
古今亭松ぼっくり「子ほめ」
志ん陽師匠の弟子で、この会の定例の回でも前座を務めている。お馴染みになってきた。丁寧な語り口からは、真面目そうな感じを受ける。
 
春風亭三朝「悋気の独楽」
今回のレギュラー陣の先鋒は、三朝師匠の番。マクラの小噺は何度か聴いたことがあるもの。後で燕弥師匠にイジラレル。
私の落語日記を調べてみると、三朝師匠のこの噺は、2014年11月30日の第88回朝也の会で二ツ目時代の朝也さんで聴いている。約8年ぶりなので、ほとんど記憶がなく、ほとんど初見のような新鮮さ。
大旦那と小僧定吉のふわふわしたと軽妙な感じと、言葉と裏腹にきつい女性陣の性格の対比を三朝師匠が上手く聴かせてくれた。三朝師匠の雰囲気に合っている噺だ。マセガキを演じさせたらピカイチの三朝師匠。しっかり笑わせてもらった。
 
柳家燕弥「粗忽長屋」
三朝師匠の小噺の話題に触れて、会の流れと仲間意識が伝わる上手いマクラ。
さて、ここでも私の落語日記というデータベースに検索をかけてみると、過去の日記からあぶり出されてきた。2014年12月7日のRAKUGOもんすたぁず第51回に、こちらも二ツ目時代の右太楼さんで聴いていた。記録にあるが、記憶には残っていない。
備忘録として落語日記を書いている。ところが、書くことで逆に安心して忘れられるからか、日記が記憶の定着には役立たないようだ。しかし、この忘れるという脳の機能は、落語を楽しむためには重要な機能なのだ。
そんな状況なので、二ツ目時代の一席と比較は出来ない。燕弥師匠の一席も、初見のように新鮮に楽しめた。思い込みの激しい八五郎。その理解に苦しむ強烈な先入観を、観客が疑念を挟ませず笑いに変えるのはテンポの良さが肝心なところ。そんなテンポの良さを感じられる一席だった。
 
桃月庵白酒「百川」
にこやかな毒舌が楽しい白酒師匠。この日のマクラも、この会場イジリ。門前仲町駅から会場までの道のりの深川の街を、片っ端からディスっていく。お不動さんから富岡八幡宮までも俎上に上げる。地元の観客を前に、大胆な白酒師匠。しかし、このマクラから爆笑の連続で、会場を暖めて本編へ入る。
本編は、実在した料亭を舞台にした実際にあった話を基にした噺、という触れ込みだが、本当にあった事件かどうか怪しい噺。その怪しさは、田舎弁のお人好しキャラの百兵衛と、血気盛んだが思い込みの激しい河岸の若い衆たちとの奇妙な遣り取りによって増している。話が食い違うその動機は、自分たちの弱みによって自己の都合の良いように解釈したいというところにある。そんな河岸の連中の気持ちは分かる。そこが笑いのツボにもなっている。
白酒師匠の可笑しさは、セリフのリズミカルさからも来ている。河岸の源ちゃんのいい加減な返事は、まさに笑いのツボだった。
もんすたぁずの皆さんから少しだけど先輩として、貫禄と余裕の一席を見せてくれた白酒師匠。ゲストの責任を充分に果たした一席だった。
 
仲入り
 
柳家小傳次「替り目」
さて、ここでもレギュラーメンバーの演目の履歴調査。なんと、小傳次師匠のこの演目は初見だった。喬之進の名前でも出てこなかった。若い落語家には、この噺は似合わないと思っているが、やっぱり、小傳次師匠も同意見だったのかも。
そして、実に酔っ払い亭主が似合う小傳次師匠なのだ。人が好くて本当は女房が大好きなのに、口が悪くて空威張りの亭主を、角が取れていて違和感なく見せてくれた。この一席を観て気付いたのが、年齢が演目を選ぶというということ。その好例を感じさせる一席だった。
 
古今亭志ん陽「火焔太鼓」
さて、この日の主任は志ん陽師匠。ゲスト選びは、その回で主任を務める人の役目とのこと。なので、この日のゲストの白酒師匠は、志ん陽セレクションなのだ。白酒師匠の高座の後なので、先ほどの会場を沸かせた一席に、志ん陽師匠も、してやったりの表情。
本編は、ザッツ古今亭という演目。古今亭一門が演らずに誰が演る、一門の演者からはそんな気概を感じる噺なのだ。そこで、例によって過去の日記検索してみると、意外にも志ん陽師匠では初見。今まで出会わなかったのが不思議なくらいの噺なので、ちょっとビックリ。
志ん陽師匠の最初の師匠である志ん朝師の火焔太鼓が、私は大好きなのだ。何度も聴いて耳に残っている。なので、この志ん陽師匠の一席も志ん朝師と比べてしまう。
面白いのが、クスグリやセリフはほぼ同じなのに、聴いた印象が違っている。特にニコヤカで穏やかで人の好さそうな表情の志ん陽師匠が演じる甚兵衛さんのノンビリとしているお人好しなところは、志ん朝師匠との違いを見せて個性的なところ。辛く当たる女房までも、どこかノンビリしているのだ。同じ噺を演者の違いで楽しめるという、落語という芸能の面白さを改めて感じた一席だった。

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